衆院予算委員会で18日、「統計問題等」に関する集中審議が行われ、立憲民主党・無所属フォーラムから長妻昭、大串博志、小川淳也、逢坂誠二の各議員が質問に立ち、安倍総理らの見解をただしました(写真上は、質問する長妻議員)。
長妻議員は冒頭、トランプ米国大統領が安倍総理からノーベル平和賞に推薦されたと述べたことに関連し質問。トランプ大統領が記者からの質問に対し、日本が北朝鮮問題を巡り「現在、安全と感じられるのだろう、私のおかげだ」と発言したことや、平和賞推薦理由として「日本の領土を飛び越えるようなミサイルが発射されていたが、今は突如として日本人は安心を実感しているからだ」と述べたとする報道があることに言及。日本人が安心しているといった間違ったメッセージを米国大統領が発信したことについて、否定しないのかと質問。
安倍総理は、「既に安全になったなんていう認識はまったくないわけで、いわば北朝鮮の驚異については依然として存在するということは変わりがない」と明言しましたが、トランプ大統領のメッセージを訂正するまでの踏み込んだ答弁はなく、実際に推薦したかどうかも明らかにしませんでした。
長妻議員は、「日本人は安心を実感しているわけではないことを曖昧に、推薦したかしないか分からないみたいな話では、我が国の国益を損なう」と指摘しました。
毎月勤労統計調査についての議論では、労働者数の賃金指数や労働時間指数に影響を及ぼす補正(三角補正)を議論がされないまま昨年1月からやらなくなった理由について質問。
総務省統計委員会の西村清彦委員長は、「十分な資料がないという形で、まだ事実上ペンディング(保留)の状態」と答えました。一方、根本匠大臣は、「統計委員会で適当であると評価をされておりますから、過去にさかのぼっての三角補正はしておりません」と答弁、話が食い違いました。
さらに理由を求めましたが、根本大臣は見当違いな答弁に終始しました。
大串議員は、安倍総理が一連の統計不正の質疑のなかで、「あらゆる数値がいい方向を示している」と発言したことを取り上げ、実質賃金の上昇率がマイナスで推移しているとして「どこがいい数字なんですか、こうやって安倍政権にとって非常厳しい、都合の悪い数字が出続けている」と指摘。また、中江秘書官からの問い合わせを受けた厚生労働省の関係者が「国会でも賃金の話が出ており、なんとかしなけりゃいけないと思った」と毎月勤労統計の調査対象の入れ替え方法変更を検討した経緯について証言した報道を取り上げました。さらに森友学園と同様の構造だとも指摘。
安倍総理は、「今の論理は相当苦しいと思う。正しい統計と、正しい統計の見方が求められている」とした上で民主党政権時から女性の就業者数や正規雇用者数が増加したことをアピールしました。
大串議員は、「(質問をしたことではなく)実質賃金ではない数値を挙げてしゃべる、だからこの人なにかおかしいことを言ってるんじゃないかなと(有権者は)思っている」と述べていると、安倍総理は席についたまま「選挙に5回勝っている」と野次を飛ばしました。これに対し大串議員は「選挙に勝っていればどんな統計をしてもいいということなんですか。そういう野次が出るところが総理の品格を問う」と指摘しました。
小川議員は、大串議員が指摘した、毎月勤労統計での「ローテーションサンプリングの導入」「ベンチマーク更新」「常用労働者の定義変更」「抽出調査に対する3倍復元処理」と、4重に下駄を履かせたことにより、2017年から18年のわずか1年間で1.4%伸びているとして(安倍総理就任後2012年から17年の5年間での賃金伸び率は1.4%)、「この事実は不自然であり、説明責任は非常に大きい」と問題視。「統計は、触らないか、あるいは触ったのであればどこをどう触るか。その影響がどうなのかを説明する責任がある。ましてややってはならないのは、ルールを変えたにもかかわらず、まるでご自身の政策の効果であるかのごとく喧伝するのは政策的にも道徳的にも間違っている」と指摘しました。
その上で、GDPの嵩上げ疑惑に関し、政府が算出方法を国際基準に変更したと主張していることに、変更した29項目で試算が明確になっているものはすべてGDP押上要因であり、1次統計、基礎統計がないといった技術的に不可能なものは別として、政策的判断で国際基準の適合を見送ったものはGDPを0.4%押し下げることが予想される「私学の対応」の1つしかないと見解を明示。「結果において(政府が)金科玉条のごとく主張する国際基準は、政策的判断により取捨選択し、押上要因を採用し、押し下げ要因は見送っている」と述べました。
加えて、第2次安倍政権では53件の基幹統計の調査手法を変更、このうち38件がGDPに影響するものであり、さらにそのうち10件は統計委員会への申請もせずにトップダウンで未諮問審査事項として変更したことでGDPが嵩上げされた可能性が高いとも指摘しました。
逢坂議員はまず、安倍総理の「悪夢のような民主党政権」発言に対し、「今の悪夢は、日本の国において公文書の廃棄や改ざん、隠ぺい、ねつ造が起こっていること。森友学園問題ではいろいろな議論があったが、なぜあのような不透明な形で土地の値引きがされたかまだ分からない。加計学園問題で、なぜ獣医学部がああいう形で認可されたのかがまったく分からない」「今回、統計の不正によって政策の判断を誤るかもしれない。日本の統計の何が正しいのかが分からない。こんな状況になっていることも悪夢だ。国会のたびにこうした悪夢が生まれてくる」と指摘。「総理がこうしたことを悪夢でないとおっしゃるのなら、これらを議論するための資料を出してもらいたい」と求めました。
これに対し安倍総理は、「委員会から請求があれば提出するのは当然のことだ」と答弁。逢坂議員は「このままいけば、例えば統計の問題についても与党が反対しているから参考人を出せないということになる」と述べ、与党に対し野党が求める資料の提出や参考人招致に応じるよう強く要請しました。
2015年3月31日に毎月勤労統計の公表を延期したことについては、長妻議員との質疑を受けて、「(延期の理由となる)システムのエラーの発生には誰がどの時点で発見したの、その後どのような意思決定を経て公表しない決定に至ったのか」「3月以前にもサンプルの入れ替えはあったにもかかわらず、なぜこのときだけ総理秘書官に説明に行ったのか」などと質問。厚労省からは明確な答弁がなかったため、理事会での説明を求めました。