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2020年6月22日

【後編】#KuToo 石川優実が語る。日常生活と政治の関係、そしてSNS社会運動の「負の側面」を乗り越えるには

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リアリティー・ショーに出演していたプロレスラーの木村花さんが亡くなったことをきっかけに、SNS上での誹謗中傷について、議論の気運が高まっている。SNSは女性をはじめ社会的に立場の弱い人たちが声を上げたりできる、エンパワーメントの場であると同時に、誹謗中傷や脅迫を受ける場ともなる。

#KuToo運動の先頭に立ってきた石川優実さんは、多くのいわれないデマ、誹謗中傷、脅迫にさらされてきた。木村さんの訃報に接し、「私は自分が死んだ気分です。他人事とは思えません。…なんで誰かが死んでからじゃないと国は動かないんですか。」と、苦しい胸の内をつづった。これから政治は、わたしたちは何ができるのか。岸真紀子参議院議員と、語り合ってもらった。

「この前流れたデマを、この人は信じているかもしれない」SNS上の出来事が、現実世界で与える恐怖

岸)木村花さんの訃報を受けて、本当はもっと早くから社会が関心を持ち、対策を打つべきことだった、と重く受け止めています。石川さんはこの件を、どう考えていますか?

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石川)わたしがジェンダー問題に関心を持ち、#KuTooの運動をしている原点は、芸能活動でグラビアの仕事をしていて、インターネット上で容姿のことをいろいろと書かれた経験です。18歳のころから、そういった攻撃を受けていました。

10年以上前でしたから、人前に出る仕事をしているのだから気にする方が悪い、という風潮が今よりずっと強かった。おかしいとは思いながらも、当たり前のように我慢をしてきました。でもそういった投稿は、批判や議論ではなく、人を傷つけたり、黙らせたりするための投稿でした。

#KuTooの運動を始めてから、特に性差別の問題だと言い始めてからは、誹謗中傷に加えてデマを流されるようになりました。反論しても、デマがたくさん拡散されると、それがあたかも真実のようになってしまう。そうすると、初めて会う人に対して「この間のデマを、この人は信じているかもしれない」と恐怖を感じるようになってしまいました。

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石川さんが昨年出版した「#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム」。石川さんがこれまでSNS上で受けてきた誹謗中傷をタイプ分けし、まとめて可視化する試みだ。

岸)恐怖を感じながら生活しないといけない人がいる、というのはとても深刻なことです。政治家は発言の一部だけを切り取られて、前後の文脈を無視して誹謗中傷をされてしまうこともあります。反論すると余計にひどくなって、もう次から次へといたちごっこになってしまう。

石川)これではだめだと思って、誹謗中傷を引用して可視化しようと、本も書きました。そうやって、社会に問題意識を持ってもらおうと活動してきましたが、そんな中で木村さんの件があった。こういう人が出る前になんとかしたかった、なんで国は動いてくれなかったんだ、ととても悔しいです。

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SNS誹謗中傷の問題は、女性差別の問題でもある

司会)インターネット上で、多くの女性がハラスメント、誹謗中傷を受けている背景は何だと思いますか?

石川)自分より立場が弱いと思っている人が、自分の意思を述べている、というのが納得いかないのだと思います。ヒールのあるパンプス着用強制を「やめてください」ではなく、女性差別の問題だと強く意見を言い始めたら、誹謗中傷がすごく増えました。

国会議員である岸さんは、自分の意思で意見を述べる、「もの言う女性」の代表のような存在だと思いますが、今までどんなことがありましたか?

岸)候補者になった時点から、SNS上で根も葉もない噂をたてられました。それから「痩せろ」とか「化粧しろ」とか、容姿に関することを書かれましたね。わたしは公務員の労働組合出身ですが、現実の世界でいかに組織がしっかりしていたとしても、SNS上ではわたし個人がターゲットになるんです。

他の女性議員では、昨年SNSや手紙などで脅迫され、さらに女性用下着が大量に送りつけられたという事件もありました。ハラスメントがだんだんエスカレートして、現実の世界での暴力につながる前に、誰かが止めないといけないけれど、今それができていない状況です。

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誹謗中傷を「見えるようにする」意味

司会)オンラインで暴力を受けた被害女性の6割は報復を恐れて告発しない、法執行機関に訴えたのは5%に過ぎない、という海外の調査結果もあります。でも石川さんは、誹謗中傷を引用リツイートする形で、応答していますよね。

石川)自分以外のTwitterアカウントのリプライ欄って、わざわざ見ない人が多いと思うんです。#KuTooを応援してくれる人でも、わたしのツイートにたくさんの誹謗中傷が集まっているなんて気づかなかった、ということもあります。

だから誹謗中傷のひどさ、数を明らかにわかるように見せることで、社会に問題提起をしたいと思っています。それに、侮辱的なコメントをつけられても受け流せ、無視しろとずっと言われてきたけれど、黙っていたところで問題は解決していないですよね。だったら可視化して、怒るというのも一つの手段なのだと皆に知ってもらいたい。ただ、批判や議論ではない誹謗中傷と対話するつもりはないので、しつこくまた来たらブロックします。

岸)わたしは今まで誹謗中傷を全部無視してきました。でも石川さんのように、被害を見えるようにしていくことは大事ですよね。同じようにつらい思いをしている人や、応援したいと思っている人を勇気づけられる。先日伊藤詩織さんが、SNSで誹謗中傷をした漫画家を訴える裁判を起こすと発表したのも、苦しんできた女性たちを元気づけたはずですね。

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見て見ぬふりをしないで──。政治がすべきこと、わたしたちがすべきこと

石川)わたしも、これまで準備してきたけれどコロナで止まっていた訴訟の手続きを再開しようと思っています。昨年、裁判にかかる費用のための寄付金も集めました。でも、誹謗中傷に対する訴訟をするための発信者情報開示請求は時間的にも経済的にもハードルが高いので、もっと簡単にできるようにしてほしいです。

以前SNSで誹謗中傷を受けたときに開示請求をしたのですが、発信者情報がすでに消えてしまっていて、訴訟まで行きつけませんでした。1アカウントを特定するために弁護士費用も何十万もかかり、経済的負担も大きいです。

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岸)かなり急いで準備しないといけないうえにお金がかかり、しかも自分への誹謗中傷を何度も見ないといけない訴訟は、相当ハードルが高いですよね。発信者情報開示請求は、政治の側が都合よく使ってしまうことがないよう、しっかりと設計する必要があります。

また訴訟をしやすくする一方で、そもそもSNSを安心して使える環境づくりも必要です。#KuTooがSNSを通じで広がっていったように、女性をエンパワーメントするものでもあります。

石川)そうですね。今のままだと、リプライ欄を見るのが怖くて応援コメントも拾えません。安心して使いたいです。だから皆さんへのお願いですが、誹謗中傷を見つけたら、見て見ぬふりをしないでほしい。以前、わたしへの誹謗中傷を「通報しました」と言ってくれた#KuToo賛同者の方がいて、とても感動しました。自分に対する暴力に怒るのってなかなか大変だけど、他人が怒ってくれると勇気づけられます。

岸)石川さんのような一部の人だけに、警鐘を鳴らす役割を担ってもらっていては、社会は変わりませんよね。政治の世界では、残念ながらSNSってそれほど重視されてこなかったと思います。でも、特に若者たちの生活はSNSなしでは成り立たなくなっていますし、仕事で使う人も多い。政治と、実際の社会の間の感覚の違いを、埋めていかないと。そのうえで、具体的に制度をどう直したら良いのか、もっともっと議論を積み上げていきたいと思います。石川さん、今日はありがとうございました。

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石川優実 YUMI ISHIKAWA
1987年、愛知県生まれ。俳優、ライター、アクティビスト。2005年に芸能界入り。2019年、#KuToo運動を始め、英国BBCによる「100人の女性」に選出。同年、「#KuToo」が「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入った。著書に「#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム」(2019年、現代書館)がある。

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岸真紀子 MAKIKO KISHI
1976年、北海道岩見沢市(旧栗沢町)生まれ。1994年北海道岩見沢緑陵高等学校商業科卒業後、旧栗沢町役場入職(現岩見沢市)、全日本自治団体労働組合(自治労)組合員となる。2008年から北海道の地方本部初の女性専従、2013年からは自治労本部中央執行委員を務める。2019年、参議院議員となる。

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