立憲民主党は15日、厚生労働部会を国会内で開き「毎月勤労統計調査」の不正問題について厚労省よりヒアリングを行いました。
毎月勤労統計調査は、雇用保険の失業給付や労災に遭った場合の休業補償給付などの算定にも使われる、厚労省の基幹データです。「500人以上規模の事業所」については、調査計画と公表資料で全数調査することとしていましたが、2004年以降、東京都では全数ではなく、3分の1程度の抽出調査を行っていたことが明らかになりました。この結果、04年から17年までの調査分の「きまって支給する給与」等の金額が低めになっており、雇用保険や労災保険が本来より少なく支給されたなどの理由で支給の対象になる人はすでに延べ約2千万人に上り、金額は合わせて500億円を超える可能性があると言われています。
加えて、18年1月分以降の調査に関し全数調査に近づける補正処理を始めたにもかかわらず、これを明らかにしないまま、同年から勤労統計が統計処理され賃金上昇のデータを公表していました。
会議の冒頭、厚労部会長の石橋通宏参院議員は、昨年の通常国会で裁量労働制をめぐる厚労省の調査データに誤りがあった問題や、障害者雇用数の水増し問題にも触れ、「またしてもかと、残念でならない。『毎月勤労統計調査』は基幹統計であり、多くの働く者にとって給付のベースになっている重要な統計だ。あってはならない言語道断の事態であるにもかかわらず、厚労省のわれわれに対する、国民に対する説明があまりにも遅い。厚労省に問い合わせをしても『調査中』だと言って回答をいただけていない。一方でメディアからは連日断片的に報道される。これ自体が厚労省に対する信頼を失墜させる行為だ。これまで責任の所在も分からない、責任者も処罰されない事態が続いてきたが、今回は許されない。厚労省にはなぜこういう問題が起きたのか、誰に責任があるのかをしっかり対応してもらう。われわれもしっかり正していきたい」とあいさつしました。
会議ではまず、厚労省の屋敷大臣官房参事官(情報化担当)ら担当者が「毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて」謝罪をした上で、確認された事実や公表に至る経緯、今後の対応について説明。なぜこうした問題が起きたのかという抽出調査の動機については調査中、「抽出調査をしていたにもかかわらず必要な復元を2018年1月以降の調査分しか行っていなかったことは、組織全体で共有してはいなかった」と述べました。
出席議員からは、抽出調査に切り替えた動機や経緯、調査対象事業所の抽出方法の基準をはじめ、全数調査が前提であるべきところ抽出調査を実施したがために導入することになった統計処理のためのソフト導入の経緯、「組織全体で共有していなかった」と結論付ける理由などについて説明を求めました。厚労省は昨年6月、神奈川県、愛知県、大阪府に対し19年から調査方法を抽出調査に切り替える通知文を課長級の「政策統括官付参事官」名で発出(既に撤回)していたことも明らかになっていることから、この行政文書の作成の経緯、開示もあわせて要求。根本厚労大臣が、昨年12月20日にこの問題に関する報告を受けた翌21日に調査手法の不正は伏せたまま10月分の「確報値」を公表、2019年度予算案を閣議決定していることも会議では問題視し、「この件を総理や官房長官はいつ知ったのか」と尋ねましたが、厚労省は消極的な姿勢に終始しました。
厚労部会では17日にも会議を開きこの問題について議論。党として真相究明と再発防止に向けて取り組んでいきます。
【厚生労働省発表資料】毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて.pdf