枝野幸男代表は29日、定例の記者会見を国会内で開きました。

 枝野代表は冒頭、入管法法改正案をはじめ、同日の衆院本会議で採決した漁業法等改正案、日欧EPA・SPA等の審議の在り方に触れ、「いずれも国会の審議はいらない、議会の役割を全く理解しない、議会の自殺行為を与党の国対が繰り返していることを大変危惧している」と表明。議会制民主主義、議院内閣制は、そもそも政府・与党が議会の過半数を持ち、多数決で決めれば何でもやりたいことができるという制度であるとして、「そうしたなかで議会の役割は、しっかりと野党の声を聞くことだ。われわれもほとんどの法案は問題がなければ委員会審議、例えば3時間で賛成し成立させている。ごく一部の大変問題な法案等につき、十分な審議時間を取って国民にも周知を図りながら丁寧な手続きでものを決めていくという、日本国憲法施行以来積み重ね上げられてきた慣習・慣行がある。それを全く無視して数を持っているのだから何でも押し切ればいいというのは、議院内閣制、議会制民主主義に対する無知と言わざるを得ない。こうした基本的な認識に欠ける政権が続いていることに対して強く危惧をする」と述べました。

 特に同日、衆院の憲法審査会が強行に開会されたことには、「憲法調査会設置以来、中山太郎調査会長、(その後の日本国憲法に関する調査)特別委員長のもとで与野党円満に議論を進めていくということの中心を担わせていただいてきた自負がある。実際に国民投票の制定、あるいはその前の衆院憲法調査会の調査報告書の取りまとめに当たってはいずれも与野党で円満に物事を進めていき、国民投票法については最後の一局面だけなかなか折り合えず残念な側面があったが、大方の部分については共通した認識のもとで法律を作ることができたという経験をしている」とこれまでの委員会運営を振り返り、「そうした観点からすれば、中山会長のもとであれば、あるいは当時からしっかりと憲法議論を理解されている中谷元さんや船田元さんのもとであればこの国会でも少なくとも2、3回、円満に審査会が開かれていただろうと思っている。なぜこんな状況になっているのか、現在の関係者の皆さんは中山先生や中谷さんや船田さんのところに行って教えを乞うて来るべきではないか」と指弾しました。

 入管法改正案の内容の問題について問われると、「どういう職種で、何人くらい、どういう基準で入れるのかが全く法律に書いていない」とあらためて指摘。その上で、衆院での審議では、「今回の法改正の土台になっている外国人の技能実習制度について、従来から闇の部分があると巷間言われてきたが、こんなに酷いのかという実態を世の中に周知することができたのは大きな成果だと思っている」と述べ、「多くの皆さんがこの現状の技能実習制度を適正に使われてはいるが、見過ごせない程度の規模で人権、労働基本権の観点から著しい問題が生じていることについては、継続してさらに深堀りして調査を進め実態をあぶり出し、問題業者を厳しく摘発し人権救済を図る行政監視の役割をしっかり果たしていきたい。そのためのチームを作るよう国会対策委員長と政務調査会長に要請した。参院の審議でもこれについてさらに深堀りするとともに、現在の法案がスカスカであることがより国民の皆さんにわかりやすく伝えられる審議をしていきたい」と力を込めました。

 対案を提出する考えについては、「ありません」と否定。「土台となるべき、現状の技能実習制度の実態が明確にならない限り、そしてこの弊害をどう取り除くかということがない限りその先の議論には進みようがない。労働力不足の問題はわれわれも十分認識しているので、技能実習制度の闇を明らかにすることを前提にした上で、どういう制度にするかという議論になる。まずは技能実習制度の闇の部分をさらに追及していかなければならない段階だ」と重ねて強調しました。

 水道法改正案については、「今でも民間が参入しようと思えば参入できる制度になっているが、新しい法案がもしこのまま成立するとより入ってきやすくなる状況だ。実際にヨーロッパ諸国で民営化した国はほとんど全てと言っていいくらい大失敗をしているという、周回遅れのことをやっている」と指弾しました。

 11月30日告示、12月9日投票の茨城県議会議員選挙で野口修元市議会議員(つくば市区)と玉造順一元市議会議員(水戸市・城里町区)の2人の公認を予定していることには、「都道府県議会議員の選挙に立憲民主党として候補者立てるのは今回が初めてになる。茨城県では、立憲民主党で一緒にやりたいという声はたくさんいただいているが、まだ正式に県連を立ち上げていない状況での選挙になる。そうした意味では、是非2人とも議席を取っていただき、現職の県会議員として正式に県連を立ち上げ、来年の参院選挙に公認候補者を立てていくというプロセスに乗せていきたいと考えている」と表明。「選挙戦を通じて訴えたい政策は」との問いには、「さまざまな課題があるが、東海第2原発を抱えているという地域であり、特に党本部の立場からはわが党の原発ゼロ政策が地域としても大きな課題だと思っている。ここに現実的な視点から明確に稼働を許すべきでないという立場を県民の皆さんに訴え、議席を獲得していただきたい」と期待を寄せました。

 韓国最高裁が元徴用工と主張する韓国人男性らの訴えを認め、三菱重工業に損害賠償を命じた確定判決については、「こうした判決が出るに至ったプロセスも含めて大変遺憾に思っている。国際公法と国際私法、韓国の司法制度との狭間の非常に難しい問題だ。一義的には日韓請求権協定に基づき韓国政府が中心となって解決に向けた努力をするべき。そのことを日本政府としても強く求め促していくべきだと思っている」とコメント。

 北方領土交渉をどのように進めるべきと考えるかと見解を求められると、「北方四島の問題については相手のある外交交渉にならざるを得ない側面があるのは否定できない。したがって、どういう手順で進めるべきなのかということについては相手があることなので一概に断定的に『これでないといけない』と言うつもりはない。大事なのは、四島とも歴史的にも法的にもわが国固有の領土であるということ。この線だけは絶対に譲ってはならない。いずれは四島すべて返していただくということが常に前提にありながらどういうプロセスを踏んでいくかという問題だと思っている」と答えました。