16日の衆院法務委員会の理事会で、これまで法務省が示していた失踪した技能実習生に対する調査結果に誤りがあったことが明らかになり、立憲、国民、無所属、共産の野党4党の衆院法務委員会の理事は14日午後、国会内で揃って記者団の取材に応じました。
同理事会で法務省から示された「原提出資料と今回の精査結果との数字の異動」(下記PDF参照)では、2017年(平成29年)度の(1)総調査人数(2)失踪動機(3)就労の有無――の3点が異なっていたと報告。総調査人数の計上ミスの理由については、「2,892名の聴取票のうち22名分の聴取票について、地方入国管理局から同一の聴取票の写しが重複して送られており、これが重ねて計上されていたことが判明したため、これを差し引いた結果、総調査人数が22名少なくなったもの」、「失踪動機」項目の数字の計上ミスの理由については「各地方入国管理局から集約した調査結果を本省入国管理局の担当者がエクセルファイルを利用して集計する際に、エクセルファイル上のデータの切り貼り作業中に必要作業を忘失し、集計誤りを招いたこと」、「聴取票の『原因・理由・目的等』欄の各項目については、複数選択が可能であるところ、同項目には『低賃金』『低賃金(契約賃金以下)』『低賃金(最低賃金以下)』という類似した3つのチェック欄が設けられ、対象者によっては、これにつき複数のチェックをしていた。本来、いずれも『低賃金』を理由とするものの、そもそも聴取票のこのような項目設定が必ずしも適切でなかったことや担当者の理解不足により、先の原提出資料の集計時においては、各項目の集計結果を単純に合算してしまい人数を計上してしまった」、(失踪後の)「就労の有無」の数字の計上ミスの理由については、「総調査人数が減ったことと、1件無回答であったものを誤って、就労『あり』として計上してしまっていた」と説明がされています。
野党筆頭理事の山尾志桜里議員は、「これは平成29年(2017年)の資料だが、平成27年(2015年)の上川法務大臣の答弁の議事録を見ても『より高い賃金を求めて』と同じ表現がされている。『より高い賃金を求めて失踪する者、意欲が低い方、そういう人が多いのが技能習だ』という答弁をしている。過失で済ませていいのかという話になる」と指摘。「法務省はこのデータの集計を不適切にやっていたことにより、法務省自体が大臣を含めて技能実習問題の根幹部分を間違っていた。平成26年(2014年)からそうだったかもしれない。そして、法務省の誤った問題意識で今まで技能実習制度がここまでひどい状況を作った。そして今回提案されている新制度は、技能実習制度からの移行が50~60%、場合によっては80%という業種もある。こうしたなかで、提案してきたということになり大変な問題だ」と断じました。
今回集計データの誤りが明らかになったのは、技能実習の制度改善に向けて実態把握が必要だとして衆参両院が付帯決議で求めた調査の個票を野党が求めたことによるものです。