衆院本会議で13日、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案(入管法改正案)の趣旨説明・質疑が行われ、会派を代表して山尾志桜里議員が質問に立ちました。

 この法案は、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れることを目的として、新たな在留資格を創設。基本方針や分野別運用方針を策定し、外国人、受け入れ機関に関する規定などを整備するほか、出入国及び在留の公正な管理を図るため、法務省の外局として出入国在留管理庁を新設することなどを盛り込んだものです。

 山尾議員は質問の冒頭、「我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは人間だった」という移民国家といわれるスイスの小説家マックス・フリッシュの言葉を引用し、「これまで日本社会は、日本で働く外国人の4割以上を『技能実習生』『留学生』と呼び『労働者』として受け止めることすら拒んできた。ましてや『生身の人間』『生活者』として尊重し共に生きる環境整備が本格化するのはこれから。この根本的な問題を放置したまま、『人材不足』を理由に、粗雑な新制度を提示し、日本社会としての議論も準備も成熟しない状況で受け入れ拡大に舵を切ることに大きな警鐘をならします」と述べました。

 その上で、「安易な新制度による受入れ拡大の前に、この技能実習制度の根本的な問題を解決すべき」と指摘。建前と実体の乖離、職場移動の自由の否定、中間搾取と人権侵害を許す受入れ制度、こうした問題をいかに解決するのかをただしました。

 また、今回の新資格の参入業種について「単純労働ではない」と繰り返す安倍総理に対して、これを前提とすれば、「特段の技術、技能、知識、経験を必要としない極めて限定的な労働は外国人に拡大せず、日本人にだけとっておくという政策となる」と指摘。「誰でもできる仕事は日本人枠にとっておき、そうでない仕事は外国人にも拡大する、こういった方向性を目指す法案なのか」とただしました。

 さらに、平成29(2017)年における失踪者のうち法務省が把握できた2,892人に対し失踪原因を把握するため事情聴取しており、その分析の結果、「より高い賃金を求めて失踪するものが多数。技能実習生に対する人権侵害行為等、受け入れ側の不適正な取り扱いによるものも少数存在」と結論づけたものについて、(1)最低賃金以下、契約賃金以下の支払いしか受けられなかったと訴えた人数は本当はそれぞれ何名なのか(2)失踪者が激増しているという異常な状況のなか、政府はいつ、この貴重な聴取結果を分析し公表する予定なのか――をただしました。また、失踪原因の分析と解決策の立案のため、プライバシーにかかる部分に配慮する作業した上で聴取票そのものの早期提出を求めました。

 そして(1)安倍総理が10月29日の本会議における枝野議員に対する答弁で本法案の説明において否定した「移民政策」とはなにか(2)安倍総理が例示として利用する定義は、米国、カナダ、国連、OECDで使われている定義とも異なる。総理独自の定義なのか、同様の定義を用いている組織や学説があればその具体を明示(3)現在特定技能について受入れを要望している業種として14業種を公表。再三法務省に対し、この要望把握プロセスを隠さず公表するよう要請しているが、いまだ回答がない。仮に手続きに偏向性があれば、軽減税率同様、業界団体と政治の癒着構造の温床たる制度の発足ともなりかねない。要望把握プロセスの透明性と公平性について、いかなる手続きで担保したのか(4)新制度で14業種4万人の受け入れ見込みという数字の報道がある。一方で法務大臣は「現在精査中であり、法案の審査に資するようにしっかりと出していきたい」と答弁。本法案の大前提だが、審査に資する質問が残念ながらできない。いつ出されるか(5)「見込み数」とは別に、段階的で丁寧な受け入れにより社会的包摂を進めていくためには、初年度含めて上限規制を検討すべきだと考えるが、検討の余地があるのか(6)安倍総理の「新たな外国人材の受入れに当たっては、日本人と同等の報酬をしっかりと確保いたします」との発言は、外国人の受入れ拡大が、その分野を担ってきた日本人の賃金水準を今より下げないということなのか、今の賃金水準は下がることはあるかもしれないが日本人と外国人に同等の賃金を確保するということなのか――などをただしました。

【衆院本会議】2018年11月13日_山尾志桜里議員質問原稿案(入管法改正案).pdf

質問する山尾議員と、山下法務大臣、安倍総理大臣