立憲民主党は10月28日、鹿児島県内の農園・果樹園などを視察、農山漁村タウンミーティングを開催しました(写真上は、橋口農園でのヒアリングの様子)。

 まず合鴨農法でコメ作りを行い、保育園での食農教育を行う橋口農園(鹿児島市川上町)を訪問しました。元々は教師をされていた橋口さんは、無農薬農業の実践だけでなく、農業体験を通して買い手になっていく、付き合いの中で農産物の価格は高いものではないとわかってもらえると話していました。また、生産者でグループを作り、地元のスーパーと提携し、無農薬野菜の出荷だけではなく、鹿児島の伝統野菜の種子の保存を進めていました。

 次に、新規就農で現在就農6年目の兼業農家さんを訪ねました(霧島市溝辺町竹子地区)。橋口農園が中心となる生産者グループを通して野菜を販売しているとのことで、出荷の計画は立てるが、多少のずれは理解してもらえていることや、新規就農支援について、一定の収入金額が例えば相続などで越えてしまうと支援金が受けられなくなるなど、使いにくい部分があるなど実体験に伴うお話を伺いました。

 続いて、観光農園でブドウと梨の栽培をしている二月田果樹園(霧島市溝辺町有川地区)を訪ねました。入場料を取らず、欲しい分だけを買ってもらっているそうです。昭和35年頃に政府から南九州はぶどうには不適地だといわれ、融資を受けられなかったがすでに栽培をしていたので、むしろその反発で頑張ってきたというお話をお聞きしました。また、無肥料での栽培はできているが、無農薬は難しい。種無し需要も多く、ホルモン剤も使わざるを得ない、本当は減らしていきたいという思いをお聞きしました。

 薩摩川内市祁答院町黒木地区では、さまざまな方法で空き家対策を行っている状況について伺いました。昔と比較すると3割くらい人口が減り、近所付き合いも減っていること、外をみても田んぼや畑で働いている人もいないことや農業後継者がいないことなど、この先どうなるのか心配している、地域の活性化をがんばらないといけないと考えていることなどを、お聞きしました。黒木地区のような農村であっても兼業農家が多く、約250戸、専業は10戸程度だそうです。農業で収入を上げるには面積を大きくしていくなどの必要があるが、難しいので兼業農家となっており、農地の貸し借り希望についてのアンケートも行っているが、拡大したいという人はほとんどいないとのことでした。

 地域の有機農業や農業グループの中心となっている萬田農園(霧島市溝辺町竹子地区)も尋ねました。鹿児島大学元教授の萬田さんからは、「集落づくりと考えても、農業には他にない難しさがある。他の業界では仲の良い人同士でグループを組むことができるが、農業は土地に縛られる」と、農村再生の難しさをお聞きしました。

 農山漁村タウンミーティングでは、「中山間地域がなぜ高齢化と人口減少が進んでいるのか」「産業としての農業を推進するだけでなく、中山間地の多面的な役割と、そこで暮らす人々が農に勤しみながらも家族を養い暮らしていける方向を明確にすべきではないのか」「全農家の7割を占める兼業農家を否定的にみるのではなく、これらの兼業農家をこれからの地域づくりの中でどのように位置づけていくのかが大切な視点ではないか」など、農村政策の重要性について、萬田さんから問題提起していただきました。

 会場からは、戸別所得補償制度が導入された時、コメ価格が下がってしまったり、農家が損をして米屋さんだけが儲かるといったことも起きていたという声もあり、制度自体が全国の生産調整であり、すべてが救われるわけではないので、小さな農家への支援策や新規就農・兼業農家への支援を考えていく必要性を改めて確認しました。また、一生懸命やったら報われる仕組みを考えて欲しいという声や、文化と農業生産、兼業農家も多様性、生活農業というキーワード、50年100年先を見据えた農政が必要だという声が出ました。鹿児島の農山漁村タウンミーティングでは、「みんなで地域を見ていくんだという気持ちが大事」という「地域」という言葉が何度も出ていたことが印象的でした。