衆院本会議で7日、安倍総理の所信表明に対する各党の代表質問が行われ、立憲民主・国民・社保・無所属クラブ(立民社)を代表して枝野幸男を代表が質問に立ちました。

 同日の本会議開会に当たっては、大島衆院議長が5日、地元・青森でのパーティーで憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案をめぐり「臨時国会で合意を見つけてほしい」などと発言したことから、野党側は公正・中立であるべき議長としてふさわしくないと問題視、発言の撤回と謝罪を求めました。これを受け与野党の国会対策委員長らは対応を協議、本会議は当初の予定から約1時間半遅れで開かれました。

 質問の冒頭、枝野代表は「議会運営全体に責任を持つ議長が特定法案について、それも政治的に注目されている重要法案について時期を区切って合意を期待するなどという発言は議長として越権であり、議会運営全体に影響を与えかねない。議長におかれては、事態を真摯(しんし)に受け止め、いっそう中立公正な議会運営に当たられるよう強く求める」と述べました。

 また、同日朝、石川県の能登半島沖のわが国の排他的経済水域内で水産庁の取締船と北朝鮮大型漁船が衝突し20名前後の乗組員が漂流、救助中であるとの報道に言及。現場付近では北朝鮮漁船による違法操業など容認しがたい案件が多発しているとして、政府に対し<万全な対応の上事実関係の究明を求めました。

2019年10月7日

総理所信に対する代表質問

立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム 枝野幸男

はじめに

 会派を代表し、所信表明演説に関して質問します。

 今年も大きな自然災害が相次いでいます。
 一連の災害で被害にあった皆さんに、改めてお見舞い申し上げます。
 私たちも、被災者の皆さんに寄り添い、一日も早い復旧と復興に向けて、できることは最大限進めていきます。政府にも全力をあげるよう強く求めます。

台風15号災害への対応

【初動の遅れと検証】

 台風15号災害への対応について、政府は「適正、迅速、問題はない」と繰り返してきました。しかし、被災地からは、対応の遅れを指摘する声が上がっています。
 遅れの原因が政府自身にあるのか否かを、今の段階で断定するつもりはありません。しかし、内閣改造のタイミングなど、具体的指摘があるのも事実です。
 全体について責任を持っている政府の立場として、まずは結果的に対応が遅れたことを率直にお詫びし、今後の災害に備えるためにも、第三者による客観的な検証を急ぐべきです。政府も検証チームを立ち上げたようですが、政府首脳がはじめから「問題ない」を繰り返す中での内部的な検証では、客観的で厳しい検証は困難です。総理の見解を求めます。

【東京電力からの報告と政府の対応】

 大規模停電への対応について、政府は、東京電力のからの報告を問題視し、経済産業大臣は、東京電力に猛省を促したいと述べました。
 東京電力福島第一原発事故の対応にあたった者として、私は、あの時の教訓がまったく生かされていないのではないかと危惧します。
 あの時も、東京電力からの報告が決定的に不足していた上に、発災直後は著しく楽観的な報告が繰り返されました。迅速かつ正確な報告がなされないことに苦慮し、最終的には東京電力本社に政府関係者が常駐する必要まで生じました。
 この経緯を、現在の東京電力の幹部も、当時野党であった現政権の皆さんも、知らなかったはずありません。原発事故を教訓としているならば、東京電力は、何よりも正確かつ迅速な報告に心がけたはずです。政府の側も、受け身でいたのでは、正しい情報が迅速に得られない恐れがあることを警戒して当然です。
 あの時と同様、今回も、現場の東京電力職員や関連会社の皆さんは、不眠不休で対応にあたっています。それだけに、政府が受け身でなく情報を取りに行っていたのか、東京電力上層部に危機意識が不足していなかったのか、経緯や問題点を明らかにする必要があります。経済産業大臣に説明を求めます。

【分散型エネルギーの導入拡大】

 台風15号による停電は、多くの皆さんに著しい影響を与えましたが、太陽光パネルや蓄電池が備え付けられていたために独立して電気を使うことが可能となり、影響を最小限に抑えることができた場所もありました。分散型電源は、災害に備えるという意味でも、極めて有用です。
 分散型エネルギー社会推進4法案が提出されていますが、与党は審議しようとしません。災害に強い暮らしを作り、地域再生にもつながる重要課題として、再生可能エネルギーを中心とした分散型エネルギーを推進すべきです。今回の教訓を踏まえ、政府として本気で取り組むつもりはないか、総理の認識をお尋ねします。

エネルギー政策

【関西電力幹部への資金還流問題】

 関西電力の役員らが、原発立地自治体である福井県高浜町(ちょう)の元助役から、多額の金品を受け取っていました。
 関西電力は、昨年9月に事実を把握しながらこれを公表せず、その上、去る2日の会見でも、真摯な説明には程遠く、元助役に「死人に口なし」とばかり全責任を擦り付けるような見苦しい姿を示しました。
 金品を受領していた時期は、原発再稼働が問題になっていた時期、原発が動かないから電気料金を値上げすると言っていた時期とも重なります。受け取っていた金品の原資は、電力料金か税金に由来するいわゆる「原発マネー」そのもの。関西電力の隠蔽体質と、原発利権による資金環流は、原発政策の根幹にかかわる大問題です。
 政府は、この問題にどう対処するつもりですか。私は、背景を含め政府主導で徹底的に調査すべきと考えますが、総理の見解をお聞かせください。
 また、このような資金を受け取っていた関電幹部は、当然辞職すべきと考えますが、総理の認識はいかがでしょうか。
 2日に発表された関西電力による調査報告書は、昨年つくられたものです。政府は、その時点で報告を受けていなかったのか、経済産業大臣にお尋ねします。
 岩根茂樹関西電力社長など関係者には、ぜひ、参考人として国会の場で説明をいただきたいと思います。

【経済産業大臣の原発に関する認識】

 菅原経済産業大臣は、平成24年4月13日の経済産業委員会において、当時経産大臣であった私への質問で「基本的に私は、2030年をめどに原発をゼロにしていく、原発のない日本をつくっていく、こういう考え方に立っております。」と発言しました。一昨年の衆議院選挙における選挙公報には、「脱原発」を堂々と掲げています。
 ところが、大臣に就任すると、原発ゼロは「今この瞬間、将来的に考えても現実的ではない」と方針転換しています。
 いつ、なぜ、考えが変わったのですか。直近の選挙公報にはっきりと「脱原発」を掲げていたのですから、明確な公約違反になると思いますが、いかがですか。菅原大臣の詳細な説明を求めます。

【福島第一原発のトリチウム水】

 福島第一原発に保管されているトリチウム水について、9月10日、当時の原田環境大臣は、「私は、所管を外れるが、やっぱりそれを思い切って放出して希釈すると、それしか方法がないというのが私の印象だ」と述べました。一方、新任の小泉環境大臣は、9月12日、「原田前大臣の発言によって傷ついた県民の方々には大変、申し訳なく思う。『所管外』と断ったうえでの発言とはいえ、しっかり向き合うことをやらなければならないと思った。」と述べています。
 海洋放出に関する政府の見解は、結局、何なのですか。「しっかり向き合う」というのは、具体的にどのようなことを意味するのですか。総理にお尋ねします。

消費増税の混乱

 私たちの強い懸念と反対にもかかわらず、政府は、10月1日からの消費増税を強行しました。

【ポイント還元対応の遅れ】

 キャッシュレス決済のポイント還元事業について、対象となる中小事業者は約200万店なのに、10月1日時点で事業に参加していたのは約50万店。多くの中小事業者にとって、この事業に参加するのは負担が大きく、したくてもできないという私たちの危惧が現実となっています。
 全体の4分の1程度しか利用できていないということは、制度そのものに問題があったと言わざるを得ません。総理の認識をお尋ねします。

【逆進性緩和策】

 複数税率についても、レジ対応の遅れなど、混乱が指摘されています。
 そもそも、ポイント還元や複数税率は、消費税のもつ逆進性や痛税感の緩和という点での効果が限定的です。簡素で公平であるべきという税の基本原則から逸脱し、いたずらに混乱を引き起こすだけです。
 逆進性を緩和し、低所得者の皆さんの暮らしを守るには、『給付付き税額控除』こそが、圧倒的に効果的であり効率的です。健康で文化的な最低限の生活を営む上で必要な消費額、負担することになる消費税額を見積もり、所得税非課税所帯ではそれを給付する。所得税を納めている場合は税額控除と組み合わせる。これで、中低所得者の負担をきちんと軽減することができます。
 高所得者ほど多額の恩恵を受け、現場も混乱する複数税率ではなく、1日も早く『給付付き税額控除』を導入することを、引き続き粘り強く求めていきます。

税制全体の見直し

【消費不況と消費税】

 そもそも、日本経済低迷の本質的な問題は、長期にわたる消費の低迷にあります。
 バブル崩壊後の1992年(平成4年)から昨年までの27年間、民間最終消費支出の年平均成長率は名目0.8%、実質で1.0%にすぎません。今年に入ってからの四半期ごとにみても、1%に満たない低水準。同じ27年間に、輸出の年平均成長率は名目で2.9%、実質で4.1%であることからも、日本経済の半分以上を占める消費こそが、経済低迷の圧倒的要因です。
 第二次安倍政権が発足して間もなく7年。株価は上がっても、また、大企業の収益は拡大しても、GDP成長率が1%台に低迷しているのは、その主要因である消費がまったく回復していないから。その中で消費増税を断行したことは、経済政策の観点からも著しく問題です。

【消費税と直接税】

 加えて、みずからの反省も込め、税制への信頼について申し上げます。
 消費税は、高齢化等に対応する社会保障の充実、社会保障財源の確保を大義名分として導入され、段階的に税率が引き上げられてきました。
 しかし、結果的に、消費税による増収分に概ね相当する規模で、法人税などの直接税収が少なくなっています。
 導入以降の消費税収入累積額はいくらですか。直接税収入について、消費税導入時点の収入を基準として、それを下回った額、上回った額を加減した累積額はどうなりますか。改めて財務大臣に確認します。

 直接税には、景気動向などの影響が大きいこともわかっています。しかし、納税者の立場からは、結果的に大企業の法人税や富裕層の所得税が減った分を埋める役割を果たしてきたとしか見えません。
 法人税や富裕層の所得税など、この間に恩恵を受けてきた層に対する直接税について、抜本的な強化、見直しを図るべきです。

【直接税の課税強化】

 対象とすべきは、多額の収益をあげ、内部留保を積み重ねている大手企業です。経営状況の厳しい中小企業など、赤字であったり、利益をあげていなかったりする企業とは区別する必要があります。
 多大な利益を上げている資本金10憶円以上の大企業の方が、収益に対する実質的な法人税の比率が低いという実態もあります。高収益を上げている大企業には、少なくとも中小企業と同等以上の負担を求めるべきです。財務大臣の認識をお尋ねします。

 所得税については、金融所得課税が最大の問題です。スポーツや芸能関係など、限られた期間に集中的に高い収入を得る仕事もあり、所得税の累進強化には考慮すべき点が多々あります。
 金融所得は、他の所得から分離され原則20%という低率の課税がなされています。著しく高額の所得を得ている方ほど、金融所得の比率が高くなることから、年収が概ね1憶円を超えると、所得税全体の負担率は急激に下がっています。明らかに不公正、不適正です。
 株価等に一定の影響を与えるといわれているため、慎重な制度設計が必要ですが、金融所得を総合課税に組み込み、累進課税の仕組みが機能する方向に変更すべきです。財務大臣の見解を伺います。

経済総論

 消費不況から脱却し、安定的な成長を実現するためには、昭和の成功体験に引きずられた経済政策を大転換するしかありません。

 人口減少と高齢化に加え、貧困・格差の増大と固定化、老後や子育てなど将来不安の急激な拡大、減っていく実質賃金と非正規雇用の増大。これらはいずれも消費にとって重大なマイナス要因です。
 消費したくても消費できない貧困層を増やし、ある程度の貯えがある方でも、医療や介護の不安によって老後になっても貯えを使えず、希望しても子どもを産み育てることを諦めざるを得ない。ローンを組むこともできず、仕事と収入が不安定なために、家庭を持つことも、持つ意欲すら持てない。
 このような社会では、どんなに良いモノやサービスを売り出しても、消費が拡大するはずありません。

 規制は少なく、政府の関与を小さくして、自由な競争に委ねる。人件費をいかに低く抑えるかに奔走する。大規模な開発型の公共投資や大手企業への誘導策で民間投資を促す。極め付きは、輸入物価を上昇させ、国内由来の消費にはマイナスとなる事実上の円安誘導で輸出企業をうるおす。
 こうした経済政策は、高度成長期には一定の役割を果たしたかもしれません。しかし、現代の消費不況の時代には、効果がないばかりか、むしろマイナスです。

 社会保障の充実を図り、税制も大きく見直して所得再分配機能を強化し、貧困や格差を解消に向かわせる。特に、介護や保育に代表される老後や子育てなど暮らしの安心に関わる人件費を厚くして人手不足を解消し、将来不安を小さくする。希望する非正規労働者をできるだけ早く正規雇用に転換しつつ、実質賃金を引き上げる。
 これこそが、これからの時代の最も効果的な消費拡大策であり、経済対策です。

年金制度

 こうした観点からも、安倍政権の社会保障政策は、時代に逆行しています。

【非正規労働者への厚生年金拡大】

 非正規労働者への厚生年金の適用拡大について、政府は、必要性こそ認めているものの、その規模感がはっきりしません。このままでは、対象企業が若干の拡大するにとどまるのではないかと危惧しています。
 この間、急激に非正規労働者の比率が高まり、将来の低年金高齢者を少なくするためには、厚生年金の適用拡大を大胆に進める必要があります。具体的な拡大規模の見通しを含めて総理の見解を伺います。

【将来の年金給付水準】

 総理は、基礎年金について、マクロ経済調整が終わる30年後でも、物価上昇率で割り引けば微減か横ばいであると説明し、『年金は大丈夫』としています。
 しかし、年金の受給水準については、現役時代と比べた所得代替率で計るべきです。これによると約3割下がるのではないですか。微減又は横ばいという試算は、実質賃金が40%も上昇することを前提としており、実質賃金が下がっている現状を考えると、あまりにも非現実的です。
 マクロ経済調整が終わる30年後における所得代替率はどうなるのか。それによって想定される生活保護の大幅増加にどう対応するのかを合わせて、総理の認識を伺います。

【65歳以上の在職老齢年金の廃止】

 政府が検討している65才以上の在職老齢年金の廃止には、約4,000億円の財源が必要になります。その財源は厚生年金基金にならざるを得ず、厚生年金受給者全体の年金財源が約4,000億円カットされることになります。
 在職老齢年金の廃止で恩恵を受けるのは、月収47万円以上という高所得高齢者に限られます。そのために厚生年金受給者全体の財源を4,000億円カットすれば、格差が拡大します。国民の理解は得られないと考えますが、総理の認識をお伺いします。

【低年金高齢者に対する特別給付金】

 10月から、低年金者約1千万人に対し月約5千円の特別給付金を給付することになりました。このための法律は、非自民政権下の2012年11月に成立したものです。
 この給付は、実施が大幅に遅れたのに加えて、対象者が返信ハガキを返送しないと受け取れない仕組みになっています。この点、十分な周知がなされているとは思えません。どのような周知をしているのか、総理にお尋ねします。

介護保険制度

 要介護1、2のホームヘルプやデイサービスを保険給付から外して、自治体の地域支援事業とし、「生活援助」のサービスをカットすると言われています。また、自己負担が2割となる対象を、被保険者の上位20%から、上位25%に広げることが検討されています。
 これでは、当然のことながら家族の負担が増えます。認知症の家族会など介護者団体からは、『今でもギリギリなのに、介護で家庭崩壊する。介護離職が増える。』と強く反対する声が上がっています。
 医療同様、介護においても、軽度のうちに、早期に対応することで、一定程度、重度化を防いだり遅らせたりすることにつながります。目先の財政的なつじつま合わせのために、必要なサービスが提供されなくなれば、当事者のみならず、財政も含めた社会全体のコストも大きくなります。
 安易なサービスカットや、利用抑制につながる負担増は適切ではありません。総理の認識をお伺いします。

日米貿易交渉

【トウモロコシ輸入問題】

日米貿易交渉に関連して、突然、米国のトウモロコシ購入の話が出てきました。日本でのトウモロコシの病害虫被害が理由であるとされていますが、国内でのトウモロコシの病害虫被害の程度と、不足分の規模について、総理にお尋ねします。
 その上で、購入額を含めトウモロコシ輸入に関して米国に約束した具体的中身と、合意した理由について、総理の答弁を求めます。

【自動車関税協議の見通し】

 今回、自動車関税については継続協議となりました。
 今後の協議について、何らかの期限やメドは設けられているのでしょうか。方向性について一定の認識の共有はあるのでしょうか。総理にお尋ねします。

【農業対策】

 昨年12月に発効のTPP11、今年2月に発効した日欧EPA、そして今回の日米貿易協定をあわせ、一次産業に与える影響は、極めて大きいものがあります。ただでさえ我が国の一次産業は、生産基盤が著しく弱まっており、この3協定による悪影響を放置すると、壊滅的な状況に陥ります。
 一次産業は、生きていく上で欠かせない食料をまかなうための、もっとも基本的な営み。国土や自然環境を守るとともに、農山漁村の人口が維持されるで、地域の経済・社会や文化を守っていく基礎となるなど、多面的な役割を担っています。
 国内一次産業をサステナブルなものとするためには、私たちが国会提出している『農業者戸別所得補償法案』を成立させることが不可欠です。総理の認識をお伺いします。

安全保障

【辺野古新基地建設問題】

 辺野古新基地問題について、一連の選挙を通じて、県民の民意は明らかすぎるほど明らかになっています。政府は、それを無視し、新基地建設を強行し続けています。
 今からでも工事を一旦停止し、沖縄県側と真摯に話し合う気はまったくないのですか。総理のご自身の口から、沖縄県民に対してお答えいただきたいと思います。

【イージス・アショアの配備】

 イージス・アショアに関する調査では、グーグルアースを用いていたことだけでも信じられないのに、縦横方向の縮尺の違いに気づかず、山との仰角9ヶ所すべてでデータを過大表記するなど、あまりに杜撰で、唖然とするばかりです。
 正確な地形の把握は、軍事における基本中の基本。どんなに正面装備を強化しても、地形の把握すらできないのでは、国を守ることなどできません。旧日本軍が兵站を軽視した過ちに通じるものです。
 防衛省の杜撰な対応をどう受け止め、どう改善するのか、総理の説明を求めます。
 また、このような杜撰な調査もあって、秋田をはじめ地元の反発、反対が強まっています。それでも配備を強行するのでしょうか。総理の見解をお尋ねします。

教員の長時間労働と教育再生

 教員の長時間労働がようやく問題視されるようになり、今年1月、中央教育審議会は、変形労働時間制の導入を答申しました。夏休みのような長期休業中などに休日の「まとめ取り」を促し、年単位でつじつまを合わせようとするものです。
 しかし、子どもたちには休暇となる期間には、教職員を対象とした研修などが集中しており、時間的余裕はありません。この実態で、中教審の答申レベルにとどまれば、根本的な改善につながらないどころか、逆に長時間労働固定化、拡大しかねません。大幅な業務縮減と定数改善を進め、教員の長時間労働を容認してきた給特法を抜本的に見直すべきです。
 教員が、子どもたちと向き合う時間的、精神的ゆとりを持てなければ、多様化する子どもたちを取り巻く環境に対応した、実のある指導が困難です。日本の未来を担う子どもたちの成長に寄り添う教員の多くが、過労死ラインに達してしまっている現状を、早急に解決すべきです。総理の認識をお伺いします。
 そもそも、教育予算や人員配置を比較すると、日本の子どもたちの学ぶ環境は、OECD諸国の中で最低水準です。子ども一人当たりの教育予算と教職員配置について、OECD諸国の中で日本が何か国中何位であるか、総理に確認します。

英語民間検定試験

 2020年度に始まる大学入試の英語民間検定試験について、混乱が続き、批判が高まっています。
 全国高校長協会は、「受験生の不安が解消できていない」として、現状のままなら実施見送りを求める方針を示しました。当事者である高校生へのアンケートなどでも、大方が不安を感じ延期などを求めています。
 離島など地方の受験生や、経済状況が厳しい家庭の受験生が不利になるなど、問題は明白です。運用実態を見ながら改善していく旨の発言に対して、高校生からは、「実験材料」にするのかという批判も出ています。
 一旦延期して、公平な機会を提供できる制度が整うまでは、現在のセンター試験を継続するべきです。総理の見解を求めます。

憲法と表現の自由

【『あいちトリエンナーレ』補助金取消問題】

 文化庁は、いわゆる『あいちトリエンナーレ』を国の補助事業として採択していましたが、今になって、約7,800万円の補助金を全額交付しないと発表しました。
 補助金事業への採択後に企画内容を変更した場合でも、せいぜい減額程度が一般的です。全額返還は、水増し請求など不正行為が認められたものに限られています。
 しかも、不交付は、議事録等の記録もなく、補助事業としての採択を決めた審査委員会の意見を聞くこともなく、密室の中で突然決められ発表されました。内容、手続き両面で、違法、不当です。文部科学大臣の説明を求めます。
 一部の展示中止にまつわる手続きが補助取り消しの理由であるなら、本末転倒です。脅迫という犯罪行為に対して、不本意ながら展示を中止したのですから、責められるべきは専ら脅迫者です。文化庁は、必要な情報が事前に申告されなかったことを問題視しているようですが、表現に対する抗議を事前に予想することは困難です。文化庁は、脅迫者に結果的に加担したと言われても仕方ありません。
 多くの人は、結局、展示の中身が気に食わないから金を出さないのだと受け止めています。これが前例とされるなら、今後は、議論を起こすような展示は公的補助を受けることが難しいとの委縮効果が働いて、お上に迎合した当たり障りのない表現だけに徹しようという、事実上の事前検閲につながります。
 不交付の決定を違法不当として撤回し、当初の決定どおり補助金を交付すべきです。総理の見解を伺います。

【「クローズアップ現代+」に対する不当圧力問題】

 かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK「クローズアップ現代+」に関し、経営委員会は、郵政グループ幹部からの抗議を受け、ガバナンス強化の名目で上田会長を厳重注意しました。
 放送法32条2項は、経営委員が個別番組の編集に干渉、規律することをわざわざ明文で禁止しています。番組内容に介入しても「ガバナンス強化」という名目さえ付ければ良いなら、放送法32条2項は空文化します。こんなことが許されないのは当然で、経営委員会の対応は明白な放送法違反です。
 また、厳重注意が行われたとされる昨年10月23日の議事録には、何の記載もありません。経営委員会に議事録の作成・公表を義務付けた放送法第41条に反する上、隠蔽の意図が疑われます。国民の受信料の上に成り立つNHKとして、適切な情報公開を怠るのであれば、存在意義すら失われます。
 内容面、手続き面、両面での放送法違反について、総理の見解を伺います。

 郵政グループは、総務事務次官経験者である鈴木副社長が、直接、NHKに圧力をかけました。
 事務次官を退官して8年以上経過しているとはいえ、11月7日付の鈴木副社長名の文書では、みずからについて、「かつて放送行政に携わり、NHKのガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場」と記しています。これで圧力を感じなかったら、逆に鈍感すぎで組織人としての資質が疑われます。
 忘れてならないのは、一連の問題が、ガバナンスの問題でもあるかんぽ生命の不正販売をめぐって発生していることです。不正販売問題では、現時点でも郵政グループ幹部の危機意識が希薄であると指摘されています。この流れの中で、報道機関に圧力をかけた鈴木副社長の責任は大きいと言わざるを得ません。総理の認識を伺います。
 なお、鈴木副社長についても、国会に参考人としてお招きし、説明を求めたいと考えています。

【報道・表現の自由に対する認識】

 これらの問題が、ほぼ同時に明らかになった状況は深刻です。
 昭和初期の言論・表現の自由に対する侵害状況も、ある日突然、明確な形で生じたのではありません。圧力や忖度、そして委縮等がじわじわと拡大し、多くの良識ある国民が気づいたときには、跳ね除けることが困難な状況に追い込まれていました。
 報道・表現の自由が機能しない社会は、もはや民主社会とは言えません。最大与党の皆さんも、党名に掲げる「自由」と「民主」を真に大切であると思うならば、この危機感を共有していただけるはずですが、総理の認識をお尋ねします。

同性婚に関する下村議員の発言

 最後に、自由民主党で憲法に関する責任者を務めてこられた下村議員が、同性婚を認める議論を、進めても良いと受け取られる発言をしました。
 自由民主党が、同性婚を認めることに賛同いただき、議論を進めていただけるなら大歓迎です。
 なお、現行憲法でも、同性婚を認める法律を禁じていないというのが圧倒的多数説ですから、議論の場は、憲法審査会でなく、法務委員会です。すでに同性婚を認める民法改正案を提出しています。与党は常々、反対なら対案を出せと言っておられますので、まさか対案も出さずにたなざらしにすることはないと信じます。
 ぜひ、この臨時国会で法務委員会における法案審査を進め、自民党を含む皆さんのご賛同を得て成立させていただくことをお願いし、質問を終わります。

【衆院本会議】総理所信に対する代表質問原稿案 枝野幸男代表.pdf