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ニュース

2020年8月17日

共感広がる「社会を守るためのストライキ」 今野晴貴さん×山内康一衆院議員

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新型コロナウイルスの影響で経済・雇用環境が悪化するなか、雇用不安が広がっています。政治がすべきこと、働く者の立場でできることは何か。休業補償の問題や急増する解雇・雇い止めなど、多くの労働相談を受けているNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんと党政務調査会長代理の山内康一衆院議員が対談しました。

山内)リーマンショックや東日本大震災の危機でも雇用や貧困といった問題が起こりましたが、最前線にいらっしゃる今野さんから見て今の状況はどうでしょうか。

今野)新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの人が職を失ったり、勤務先の休業により給料が大幅に減るなど大きな影響を受けています。通常(自身が代表の)NPOと、連携している組合で年間3000件ほどの相談を受けていますが、6月末時点でコロナ関連だけで3000件以上とかなりハイペースの状況です。そのうち7、8割が非正規雇用で、当初から休業補償に関する相談が主ですが、最近では派遣切りや雇い止め、あるいは在宅勤務が認められず出勤を命じられ、職場で三密(密閉、密集、密接)対策がとられていない、時差通勤を認めてもらえないといった内容が多くなっています。緊急事態宣言が解除され経済活動が再開されるなか、営業時間の短縮やシフトの減少などの影響で収入が減っている。コロナによる業績悪化を理由に、一方的な賃金引き下げなどが行われるケースもあり、企業側からの不利益変更に関する相談が増えつつあります。

 今回の特徴としては、雇用の一番の受け皿になっているサービス業が集中的に打撃を受けたため、その次に行く場所がなかなか見つからない。非正規で働く女性労働者は特に厳しい状況で、かつての「家計補助」的な主婦パート中心から、今では「家計自立型」の割合が増えていますから、シフトが半減となればそれだけで生活が行き詰まってしまうケースも十分あり得ます。労働市場のなかで対応できず、貧困問題がかつてなく深刻になっています。

山内)マーケット自体が小さくなり求人も減っているということですか。

今野)求人も減っていますが、感染拡大の抑止と経済・社会活動の段階的な再開を一体に進めるという「部分的な回復」によって、休業ではない状況のなかでどうやって貧困にならないように底上げをするのかが問われている。ここは新しい対策を考えていかないといけないと思います。

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共同会派などは賃金が2割以上減少したすべての労働者に対する支援給付金の支給などを求める議員立法を提出


会社が一方的に、従業員にとって不利益になる労働条件などの変更をすること。

新たな雇用創出に向けたAI人材の育成を

山内)飲食店では席を半分にするなど、今後「新しい生活様式」に対応する労働のあり方、サービスの提供を考えることが求められています。新しい雇用を創る、あるいは次の仕事に就くまでの期間の職業訓練と給付をセットにした支援策が必要ですが、積極的な労働政策として政府が今やるべきことは何でしょうか。

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今野)多分一番やらなければいけないのは、AI人材の育成ではないでしょうか。若い人を中心に徹底的にスキルを磨く職業訓練を、この間進めている利益追求型の民間主導ではなく、しっかり予算を付けてかつてのように政府が相当程度関与している法人が担うべきだと思います。

山内)わが党では、枝野代表がポストコロナの社会あり方として、今の「小さすぎる政府」からもう少し教育や職業訓練、科学技術といったところに対し公的な関与を増やすべきとの方向性を示しています。そういう意味でも、ハローワークの職員、あるいは図書館の司書がほとんど非正規だという政府のあり方、市場と行政の関わり方を変えていかないといけないのかなと思います。

今野)日本は公務員の数がもともと少ないですから、災害が頻発しているなか、行政機能の拡充は急務だと思います。

今の最低賃金がでは生活できない人がいる

山内)これから不況期に突入すると賃金の引き上げが難しくなると予想されますが、最低賃金の引上げを実現するにはどのようなことが必要と考えられますか。

今野)今の最低賃金では生活できない人たちがいるわけですから、それ自体賃金制度としてすでに破綻しています。いろいろ事情はあるかもしれませんが、原則として最低限の生活ができるところに設けないと意味がない。世界的に見ても日本は低すぎるので上げてもらうしかないですよね。私としては全国一律化し、1500円まで引き上げるべきだと考えています。なぜ全国一律かというと、1つは、この間の調査でも明らかなように、都市と地方での生活費に対して違いがないということ。地方では交通の不便さや、インフラの脆弱さを私費で手当てしなければならないため、実は最低生活費はそんなに下がらないことが証明されてきています。もう1つは、都市に人口が集中し、地域格差がさらに深刻になるということ。地方の人口減少に歯止めをかけるためにも全国一律化が必要です。

コロナでバイトが減った学生の救済を

山内)新型コロナウイルス感染拡大に伴い勤務を大幅に減らされた学生アルバイトに休業手当が支払われない問題が深刻しています。学生アルバイトは雇用保険の対象でなく、企業から雇用調整助成金の支給を受けられず、「新型コロナウイルスの影響で退学を検討している学生が20.3%」(学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」のアンケート結果 4月29日)という衝撃的な数字が公表されました。

今野)今の学生のアルバイトは、実質的に労働者であると考えるべきだと思います。もちろん全員ではありませんが、少なくとも下宿生の25%は生活費や授業料を稼ぐため、必須の労働としてやっています。

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山内)大学もオンライン授業でも固定費がかかりますから、簡単に授業料を安くすることはできません。国で補てんして最低全員の授業料の半額を免除し、さらに必要性がある人は、所得制限を設けるなどプラスアルファで無償にする人も増やしてもいいのではないかと思います。

今野)それは絶対必要ですね。学校の責任にしては、今度は大学が経営破綻し、教育機関そのものが衰退してしまいます。一方で、退学して人生が変わってしまうとなると社会的な損失も大きい。そこを国が補償するのは合理的だと思います。

山内)生涯賃金で言えば大卒と中退とでは何千万単位、下手したら億単位で生涯賃金が変わってくる。仮に生涯賃金が1億円違えばその所得税は何千万円単位ですから、何十年の単位で考えたらわりに合うと思います。

今野)まったくその通りだと思います。所得制限の問題はあるでしょうが、少なくとも、一律半額免除プラスアルファという方向で考えていただけたらと思います。

山内)教育のリターンというのは、卒業したあと30年、40年間の社会的リターンが返ってくるので、ここで国費400、500万円を投入することは公共事業よりもよっぽど費用対効果が高いはずなのですが、残念ながらそういう発想がなかなかいまの政府にはありません。

教育を受ける権利を国が保障する意義

今野)これまで、休業を求められたにもかかわらず手当が支払われなかった中小企業の労働者を対象にした国の給付金制度がスタートし、非正規労働者や外国人、学生アルバイトも受給可能になりました。しかし、実際にどこまで対応してもらえるか分かりません。事業主の休業証明が必要となるため、「学生だから要らないだろう」と付けてもらえない可能性がある。生活を支えるために働いていた学生にはしっかり休業支援金が行き渡るように、対象者や給付内容が適切な水準となるように国会でしっかり議論していただきたいです。

山内)そうですね。そこはわれわれも国会でも指摘していて、野党はアルバイト収入が一定程度減収している学生を対象に給付金を出すこと、授業料の半額を免除し、国がその減額分を負担するよう求める議員立法も国会に提出しています。

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今野)優先順位で言うと、まずは授業料の減額、そして休業補償ですね。学生へのアナウンスとして、なぜ国が授業料を補助するのかという論理が大事だと思います。「大学で授業をやっていないのだから、大学が値下げすればいい」という声がありますが、大学は単なるビジネスの経営ではありません。そもそもの教育を受ける権利がきちんと議論されていない気がします。

山内)日本では教育は親が出すものという発想が根強くありますが、教育のリターンは当然個人にもありますが、社会全体へのリターンも非常に大きく、原則として教育は無償にしていくべきでしょうね。

今野)国家が教育を受ける権利を保障する意味をしっかりと打ち出してほしいと思います。

山内)日本は教育をサービス業のようにとらえているところがあり、政府は教育の社会的な意義を認めてこなかったように思います。高等教育の収益率は大概のコンクリートのインフラ投資より高いのは世界的には常識ですから、社会全体のためのソーシャルリターンを考えたら教育への投資がいかに重要かをあらためて認識する必要がありますね。

労働者の連帯が雇用者への抑止力を生む

山内)3月に出版された『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(集英社新書)では、本来の労使交渉の枠を超えて「社会を守るためのストライキ」が主流となり、特に社会的(消費者的)問題となるのがケア労働の領域だと指摘されています。コロナ禍でエッセンシャルワーカーの存在がクローズアップされるなか、日本でのストライキについてはどのような可能性があるとお考えですか。

今野)コロナとの関連でも、ストライキによって改善を促すことは有効だと思います。海外では、医療の現場を含めて安全な労働環境を求めたストライキが頻発しています。

 この数年、保育園における一斉退職が全国的に話題になってきましたが、コロナ禍での休園・登園自粛期間中の休業補償の未払い問題にも、すごく実用性がある。日本では海外ほどは増えていないのですが、現れ始めています。

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共同会派は保育所や学童保育で働く者にも「慰労金」をと申し入れ

山内)私は最近、地元の福岡県で一人でも加入できる「全国一般労働組合」の人たちから、北九州市内の製造業で20人くらいが派遣切りに遭い、労使間での交渉を求めたところ、そのこと自体が抑止力となり辞めずに済んだという話を聞きました。格差が拡大して労働分配率がどんどん下がっている要因の1つに、労働組合が弱くなって労働者の連帯が難しく、企業との交渉力がなくなり安い賃金で留め置かれているということがある。今回、あらためて効果があると感じました。「経済危機だから仕方ないよな」とあきらめて辞めていく前に、ちょっと立ち止まって不当なことに声を上げる。「新しいストライキ」が、そのきっかけになると面白いと思いました。

今野)コロナの話を中心にしてきましたが、平時から、保育や介護などケア労働の現場の相談では虐待の話が多いです。ケア労働では、介護保険による介護の市場化や保育の民営化が進むなか、働いている人数が少ない。無理な働かせ方で結果的に虐待を生み、事件にならないまでも手が回らず適切なケアができないと言います。組合に入って交渉しようという人たちの大半は、お金の問題もありますが、それ以上に「危険すぎてちょっと怖い」「子どもに何かあったら責任が取れない」「仕事の質を守りたい」という思いからです。実は、そういうときこそストライキが有効になる。今後はケア労働の内容改善と、離職の防止が特に重要になります。

 医療・福祉や卸売・小売など、感染のリスクを抱えながら社会を支えるために欠かせない仕事をする人たち。
企業が生み出した付加価値のうちのどれだけを人件費として分配したかを示す指標。人件費を付加価値で割って算出する。

優しい人の方がストライキをしている

山内)自分の給料の問題よりも、ケアする「子どもたちやお年寄りのため」の闘いということですね。悪辣な経営者に真面目さを逆手に取られ、「やりがいの搾取」というか、使い潰されることに対し、しっかり声を上げる。特に、ケアワーカーになる人はどちらかというと真面目な人、優しい人が多いですから、ちょっとしたノウハウや事例を示すだけでも変わっていくのかなと思います。

今野)今「優しい人」とおっしゃいましたが、すごくいいヒントですね。ストライキって、日本では怖いものとか、無理なことを要求しているイメージがあると思います。しかし、むしろ優しい人の方がストライキをしているというのは、発想の転換で面白いかもしれません。

山内)自分たちの子どもたちのケアの問題ですから親御さんたち、PTAなども協力するのではないでしょうか。私も娘をいま幼稚園に送ってきたのですが、その幼稚園の先生たちが明るく楽しく子どもと接しているのを見たいわけであって、ブラックな職場でうつろな目で子どものケアをされても困りますから。周りに共感されるストライキになるといいですね。

今野)最近は子どもたちも協力するんですよ。私立学校での教員たちのストライキで生徒たちが署名活動に乗り出すなど、生徒や保護者に連帯が広がっているケースもあります。

山内)高校生もバイト先で不当な扱いを受けた経験があったりすると先生たちと同じ目線に立てるのかもしれませんね。いまの高校生は、遊ぶためではなく生活費のためのアルバイトが増えていますから。こうした新しいストライキの可能性をもっと広く知ってもらいたいと思っています。

雇用主が従業員に「この仕事は給料以上のやりがいがある」と強く押し付け言葉や態度で支配し、不当に安い給料や劣悪な環境で働かせること。

議員立法「コロナ困窮学生支援法案」を衆院に提出
https://cdp-japan.jp/news/20200510_2939

議員立法「コロナ休業者・失業者支援法案」を衆院に提出
https://cdp-japan.jp/news/20200605_3055

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