2020年7月2日
【衆院厚労委】コロナ禍での労災、医療・検査体制の整備、テレワークの実態、ジェンダーの不平等について、阿部、西村両議員が質問
衆院厚生労働委員会で1日閉会中審査が開かれ、共同会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」から阿部知子、西村智奈美、岡本充功各議員が質問に立ち、新型コロナウイルス感染症対策について政府の見解をただしました(写真上は、質問する阿部議員)。
阿部議員は冒頭、「国民生活が非常にコロナの影響を受けて苦しい中にある。あわせて、医療機関の問題も、大変深刻な危機的な状況が、緊急事態宣言が終了したと言われてなおさらに広がっている」と指摘し、(1)新型コロナウイルス感染症に関係する労災・公務災害、(2)今後を見据えた医療提供体制の整備――などについて質問しました。
新型コロナ感染症に関する労災請求件数について、請求件数421のうち医療従事者は348だとして、1000人あまりが感染しているにも関わらず348という少なさを指摘。また医療機関でみると、集団感染が発生した85件(5月10日現在)のうち請求は37機関にとどまっている状況について、加藤厚労大臣は、医療関係の団体に対し「請求手続への協力、請求勧奨の要請を行った」「労災請求の勧奨に努めていきたい」、医療機関についても「クラスターが発生しているものに対しては全て勧奨しており、まだ出てきていない医療機関に関しては引き続き勧奨させていただきたい」と答弁。
阿部議員は、「まだ申請をされていないということは、何らかの問題がある」と指摘、「感染されればきちんと労働災害として補償されるというのは、あらゆる職種で重要。具体例を示して、今後の労災申請、もっとしっかりと労働者の権利が保障されるようにお願いしたい」と要請しました。
医療提供の体制については、2016年の感染症病床のありようについて総務省からの勧告への対応、公立病院改革の名のもとに49の感染症病院を含む公的・公立病院の統廃合についてただしました。加藤大臣は総務省からの勧告については7月中を目途に作業をしていること、地域医療構想については、今回の感染症への対応や、ここで得た知見を踏まえながら、それぞれの地域で議論いただき、それに対して支援をしていきたいと答弁しました。阿部議員は「受け入れた病院も赤字、受け入れなかった病院も赤字、診療所も赤字、医療基盤が揺らいでいる」と指摘。国に対しさらなる支援を求めました。
また阿部議員は、西村経済再生担当大臣が政府の専門家会議を廃止すると6月24日の会見で発言したことを取り上げ、専門家会議の尾身副座長に廃止についてあらかじめ知っていたかを確認しました。尾身副座長は「発展的に移行するということも十分知っておりました」と答え、「医療関係者だけではこれから経済の再開と感染防御の両立を図るということを提言するのは少し無理がある」「かなり前から政府に対して、経済、社会の専門家も入れた新しい会議体のようなものをつくっていただき、しかも、専門家会議の役割というのを今まで以上に明確にしていただきたい」と要望を出していたと説明しました。
会見に際し、専門家会議の廃止の表明を受け、驚いた様子だったことについては、「ほぼ同じ時期に会見をしたことについて驚いた」と述べました。
西村議員は、英国誌「エコノミスト」の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」が先進国のコロナ対策について調査・比較した資料では、日本は優(very good)・良(good)・可(fair)・不可(poor)のうち「可(fair)」とされていることについて、検査件数が非常に少ないことがこの評価につながっているのではないかと話しました。
その上で、1次・2次の補正予算でPCR検査の拡充のための予算はついたものの、機器の購入だけではなく、実際に導入する自治体に対し、どのように検査体制を整えるべきか国からの情報提供が重要だと指摘。そのためにも検査の司令塔を今からでもつくるべきだと提案、内閣府の見解をただしました。
神田大臣政務官は、政府の司令塔として、総理大事を本部長とする対策本部を設置したこと、本部会議がこれまで39回開催され、さまざまな対策の判断決定をしてきたこと、検査体制の強化・調整については厚労省が関係省庁や都道府県等と連携をして取り組みを進めていると、的外れな答弁をしました。
西村議員は改めて端的な答弁を求めましたが同じ答弁を繰り返したため、「厚労省に答弁してもらおうと思ったら、あえて内閣府が答弁するからといって、それで来てもらっている。全然答えになっていない。これだったら厚労大臣に答えてもらった方が全然いい」と訴えました。
改めて神田大臣政務官は、「政府全体の司令塔となる組織は既にある。ご指摘には当たらない」「(司令塔は)対策本部です」「(対策本部長は総理で間違いないかとの問いに)おっしゃるとおり」と噛み合わない答弁が繰り返されました。
西村議員は「このぐだぐだな時間を返してほしい」「こんなことだから、(先進国のコロナ対策の比較で)fair、OECD諸国の中で日本だけが検査が評価が一番悪い。こんな状況にいつまでも甘んじていることが大問題」と指摘しました。
西村議員はまた、コロナ禍でのテレワークの実態について質問。連合本部が行った調査では、「通常の勤務よりも長時間労働になることがあった」と約半数が回答、「時間外、休日労働をしたにもかかわらず申告していない」が6割を超えていると指摘。働き方の観点からテレワークについて調査等を行っているか確認をしました。加藤厚労大臣は、「実際どういう実態だったのかどうか、ご指摘の点も含めて、私どもとして調査をすべく今準備をしている」と答弁しました。これを受け、「テレワークがいいという幻想ではなく、きちんとした規制を施していかないと、万が一労災などということになったときに、なかなか認められにくくなる」「きちんと健康管理をするという労働行政の観点から、調査等はしっかりやり対策を検討していただきたい」と述べました。
さらに、学校が一斉休校で自宅で育児をしながら仕事をする家庭が多かったこと、特定定額給付金などの受給権者が世帯主であったことなどを挙げ、コロナ禍で男性と女性で受けた影響に圧倒的な違いがあるのではないかと指摘。「女性と男性と比べると賃金の差が歴然としてあり、仮に休業手当が出たとしても、休業手当も賃金に比例して差が出てしまう」として、ジェンダーの不平等に着目した調査を行うことを求めました。
今井大臣政務官は、「新型コロナウイルス感染症の影響を男女共同参画の観点から把握することは、ご指摘のとおり大変重要である」「さまざまな民間調査も参考にしつつ、効果的な調査分析にしていく」と答弁しました。