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2020年5月28日

いまリスクと向き合いながら介護・福祉現場で働く人の処遇改善を 山花議員✕尾辻議員

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 衆院厚生労働委員会で政府提出の「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」と並行して審議されていた立憲民主党など野党が提出した障がい福祉三法案(「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法津案」「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」)。議員立法筆頭提出者の山花郁夫議員と、衆院厚生労働委員の尾辻かな子議員に、法案提出に至った経緯と、政府案に対し「反対」した理由などについて話を聞きました。

障がい者の自立の道開く 障がい福祉3法案について

山花)「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」は、介護・障がいの従事者の方々の処遇改善。他の産業に比べて賃金が安いという指摘は前々からあったもので、ここを底上げしようというものです。

 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法津案」は、重度訪問介護については、当事者である方が国会に来られたことを一つの問題提起と受け止めて、今まで就労の際の手伝いを個人の経済活動だとされていたものを、日常生活の一環としてとらえ、法的に手当てするものです。

 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」は、食事提供加算と送迎加算について、法的に手当てをしようというものです。

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尾辻)介護・障がい福祉の処遇改善の法案については、これまでもずっと訴え続けています。

山花)ケアマネージャーさんや事務職も含めて、本当に現場は大変だということと、単に賃金が低いというだけでなく、低くても来年になれば、再来年になれば少しは上がるというのであれば、少しは心の張り合いがあるかもしれませんが、ずっと昇給がなかった人たちに対して応援できればとまとめたものです。賃金がすべてではありませんが、やはり心の支えというか、頑張ったから昇給があったというように、手当てをしたいと思います。

尾辻)私も介護現場にいた経験がありますが、現場で積み上げたキャリアがどう昇給につながるのかがなかなか見えません。

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山花)新型コロナウイルス感染者への対応は本来介護職ではなく、医療職の仕事です。それを今回は濃厚接触のリスクがありながら介護者が看ている。薬もないなか、命がけの仕事になっています。

尾辻)いまケアマネさんは処遇改善加算がなく、いまケアマネさんの賃金が相対的に下がっています。受験資格は厳格化し(※1)、ケアマネ試験の受験者数は減少傾向しています。今回の法案はそういう意味では、厚労省に先んじて現場が求める改善を提案できたのではないかと思っています。介護報酬を上げると、利用者さんの負担も一緒に上がってしまうという問題があるので、全額国費による助成金による処遇改善という形にして、利用者負担の変更がないようにしています。
 重度訪問介護を職場や通勤、通学で利用可能とする法案は、いま説明されたように、もともと障がい者団体の悲願でした。

山花)「自立支援」と言いながら、実際はこれがないと自立の道が閉ざされている状況でした。

尾辻)基本的に自立というのは、全てを自分でやることではない。誰かが支えることによってできることが増えるというものです。この法案が成立すると、かなり大きな効果があると思っています。
 食事加算廃止阻止の法案も、コロナの感染拡大で(障がい者の作業所に)通う方も減っている時期に加算が減ると経営も利用者双方にとって大打撃になります。特に食事加算がなくなると昼食がカップラーメンになるという話も聞くので、先手を打つ形で対応するのは重要だと思います。

山花)栄養バランスの取れた食事を摂れる機会を失う恐れがあります。作業所もコロナ対策で十分な作業ができずに作業効率がすごく落ちているとか、これまでのようにクッキーなど手作りのものを販売することもできなくなったという話も聞きますから、さまざまな面で介護の現場を支援していく必要があります。

尾辻)食事加算がなくなると、おそらく作業工賃より食事代が高くなる逆転現象が起こるかもしれないとも言われています。そうした意味でも、食事加算をなくさないことは非常に重要ですね。

※1 18年からは「社会福祉士や介護福祉士の資格を取得し、実務経験5年以上」等に限定され、受験資格を得ることが難しくなった。

国家資格としての介護福祉士とは何かを問う 政府案の問題点・反対した理由

尾辻)私自身は介護福祉士の立場でもあり、今回束ねられた5法案のなかで、社会福祉士及び介護福祉士法の改正のなかの「介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る現行5年間の経過措置を、さらに5年間延長する」、これが非常に問題でした。介護福祉士は、2007年の法改正により、試験を受けることが原則化されました。試験を受け合格し、介護福祉士を名乗ることになっています。その後、試験の義務付けが3回延長され、今回4回目の試験義務付け延長になりました。今回さらに5年延長されると、2031年まで試験を受けずに介護福祉士を名乗れる方がいることになり、原則化から24年続くことになり、これは経過措置の域を超えるでしょう。養成校の卒業生だけ、介護福祉士試験に落ちても5年間介護福祉士を名乗れるという、いびつな形になっています。
 福祉系高校の卒業生は、介護福祉士試験を受験し合格する必要があります。介護福祉士試験というのは、介護福祉士の知識を身につけているかどうかを問う試験であって、落とすための試験ではありません。その試験を受けないとなると、国家資格としての介護福祉士とは一体何によってその質が担保されるものなのか。介護福祉士は介護現場で指導的役割を担う、中核を担わなければならない人たちなのに、何でもってそれを担保するのかということになります。さらに准介護福祉士についても附則で検討するよう求めていたにもかかわらず、棚ざらしのままです。

山花)ふつうであれば、相場感として3年から5年くらいで決着つけるでしょうね。それでも少し長いですが。

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尾辻)もちろん、人材不足で困っている現場はたくさんありますが、人材確保の問題と、介護福祉士の質の問題は分けて考えてもらいたい。介護福祉士の質を上げていくには、試験を義務化し、試験に合格した人が介護福祉士だという、当たり前のことを実現してほしいと主張しています。あわせて、養成校の留学生の皆さんが介護福祉士試験の合格率が低い原因の一つになっている、借金を背負って留学し、在学中の週28時間のアルバイトをする必要があり、学習時間が担保できない構造的な問題も見直す必要があります。
 私たち野党共同会派は、介護福祉士の質と介護人材の不足をどう担保するのかという話は分けて考えるべきであるということです。現在新型コロナウイルス感染対策の中心的役割を担い、最も大変な状況にある厚労省で、なぜこの法案を審議する必要があるのか。法案の中身に加えて、この「なぜ今なのか」ということ。法案には評価する部分、評価できない部分もあるなかで、結論ありきの拙速な議論に「反対」することになりましたが、法案すべてを否定するものではありません。

安心して働ける環境を整える 介護福祉現場でのコロナ対策

山花)医療従事者に対する危険手当の話は報道でも出ていますが、同様に危険リスクを負って働いている介護・障がい福祉従事者に対する支給の話はこれまでなく、野党はこれを第2次補正予算に盛り込むよう、政府・与党に求めています。また、軽症者や無症状者についてはホテル等の民間宿泊施設等での療養が可能となっていますが、介護が必要な人は基本的に自宅や施設にとどまるよう求めていて、事実上トリアージ(※2)しているようなものですよね。

尾辻)2次補正予算の内容が決まっていない今の時点では、感染者が出た介護施設に対する支援はありますが、感染者が出ていない施設は対象外になっています。今まさに2次補正の議論の詰めの協議をしていて、何らかの支援をする方向になっています。
 私の知り合いの介護現場でも、ワーカーさんや入所者さんが熱を出しても誰もPCR検査までつながらないといいます。ワーカーであれば1週間自宅待機して、熱が下がったら出勤する。入所者さんも、入院され熱が下がると再入所される介護者は自分自身は重症化しなくても、自分が感染源となることで、利用者さん、入所者さんの命の危機につながる可能性があるという危機感を持ちながら仕事に当たっておられると思います。加えて、マスクがない、消毒液がない、防護服はもちろんないというなかでどうするのか。介護は濃厚接触しないとできない、フィジカル・ディスタンシングが困難な職種です。社会のなかで大事な仕事をしていただいている皆さんの重要な役割と働きに処遇や手当など制度を変えることで応えていく、長く安全に働ける環境を整えることが必要です。
 例えばヨーロッパでは、フランスやベルギーで、死者数のうち約半数が介護施設の入所者です。ポルトガルは33%、スペインは53%。日本でも今クラスターの約半分が医療機関や介護施設です。そうした意味でも、何らかの手当を出すことと、マスクや消毒液、グローブ、防護服等を優先的に提供すること。接触が避けられない職種において、いかに感染拡大防止とADL(日常生活動作)維持のバランスをとっていくのかは、「withコロナ」時代の大きな課題だと思います。

※2 大事故・災害などで同時に多数の患者が出た時に、手当ての緊急度に従って優先順位をつけること

今の介護や福祉の現場を変える法律の成立を

尾辻)今回、障がい福祉3法案は採決せずに継続審議となりました。今回のコロナ禍であらためて浮き彫りになった、エッセンシャルワーカーたちの処遇の問題と人手不足の解消をなんとか改善したい。

山花)繰り返しになりますが、お金がすべてではありませんが、何で評価するかというと、やはりお金をつけるということくらいしかできません。

尾辻)あとは、専門職としての地位。介護福祉士も名称独占(※3)ではなく、どこかで業務独占(※4)の専門職化も考えていきたいところです。国家資格を取っても何も変わらない状況が、さらに今の状況を生んでいる。国家資格として位置づけている以上、しっかりした処遇を保障するべきです。必要不可欠な仕事で、リモートワークにもできない。なんとか、今の介護や障がいの仕事の現場を変える法律として成立させたいですね。

山花)そう。与党の方にも応援していただいて、政府案よりむしろ議員立法を早く成立させてほしい。使命感だけでやっていて、ある時心が折れてしまうことがないように、希望する人は、結婚し、家庭を持ち、子どもを育てられる程度の収入を確保できる仕事にしなければいけません。

尾辻)ふつうに、当たり前に暮らせるだけの収入を確保したいですね。修正協議にも応じるのでぜひ成立させたいです。

※3 資格を持っている人だけが、その名称を名乗ることができる資格。
※4 資格を持っている人だけが、独占的にその仕事を行うことができる。

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「障がい福祉三法案」の成立を求める声明がでています!

〇障害者の生活保障を要求する連絡会議 
https://twitter.com/shogairen/status/1261175544021827586
〇全国「精神病」者集団
https://jngmdp.net/?name=01
〇DPI日本会議
https://dpi-japan.org/blog/demand/障がい福祉三法案の早期成立を求める声明/
〇きょうされん
http://www.kyousaren-osaka.com/wp/wp-content/uploads/2020/05/20200518seimei.pdf