参院予算委員会で11日午後、「現下の諸課題(新型コロナウイルス感染症への対処等)」に関する集中審議が開かれ、立憲民主党から福山哲郎、石橋通宏両議員が質問に立ちました。
福山議員は、「緊急事態宣言が延長され、ますます国民・事業主の生活は厳しく追い込まれている。政府の施策が後手後手に回り、かつ、非常に使い勝手の悪いものになっている。そのなかで、国民に分断が広がっていると感じている」と指摘。PCR検査を受診できた人とできなかった人、仕事を続けられている人と休業や失職に追い込まれている人、オンライン授業を受けられる生徒と受けられない生徒、大学で勉強を続けられる学生と今退学を考えている学生と、さまざまな状況が起きているとして、「政治はこういった分断を極力小さくするために最大の努力をしなければいけない」と力を込めました。
その上で、「安倍政権は先週の国会で分断を助長するようなことをされた」と述べ、8日の衆院内閣委員会で、内閣が検察幹部の役職定年を延長できるようにする検察庁法改正案を与党側の強行で実質審議入りし、野党側が求めた森法務大臣への質疑や法務委員会での審議を拒否したことに言及。これに対し、「 #検察庁法改正案に抗議します 」というハッシュタグ付きのツイートが約500万もあったことに、「国民の間で怒りの声が広がっている。今(自粛等の呼びかけに)協力していただき、厳しい状況にある国民が声を上げている。その国民の行為に対してどう答えるか」とただしましたが、安倍総理は「検察官も一般職の国家公務員であり国家公務員法の方向勤務延長に関する規定が適用される」「政府の対応について、さまざまな反応もあるんだろう」などと無責任な答弁に終始しました。
安倍内閣は1月31日、政権に近いとされる黒川・東京高検検事長の定年延長を閣議決定。「検察の政治的中立性や独立性を脅かす」などと、野党をはじめ多くの有識者らが批判してきましたが、安倍総理は「法解釈を変更し定年延長を可能にした」と後付けで主張。同法案は、検察官の定年を引き上げるとともに、内閣や法務大臣の判断で定年延長を最長で3年まで可能とし、変更後の解釈を法制化するものです。
福山議員は、奇しくも71年前の1949年5月11日、参院法務委員会で高橋一郎法務庁事務官は「検察官は、刑事訴訟法による唯一の控訴提起機関として規定されている。従って検察官の職務執行の公正なりや否やは直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすものである。このような職的な特殊性に鑑み、従来検察官については一般行政官と異なり、裁判官に準ずる身分の保証および待遇を与えられたのである。国家公務員法施行後も検察の特殊性は何ら変わることなく、一般公務員とはおのずからその取り扱いを異にすべきもの」との見解を述べたと紹介。「これが今年まで続いている。一般法である国家公務員が適用されるなどという無茶苦茶な解釈をすることは、71年の司法、検察官の中立性、司法の信頼を侵すものとして許すわけにはいかない」と指弾しました。コロナ対策に与野党が協力して取り組んでいるなか、無理な議会運営をしないよう自民、公明両党に指示を出すよう求めました。
福山議員はまた、国内で計1万5千人超の新型コロナウイルスの感染が確認されているなか、厚生労働省クラスター対策班の西浦北海道大学教授が「現在確認されている感染者数は氷山の一角。実際は10倍以上かもしれない」と発言していることにも触れ、無症状、軽症も含め実際の感染者数をどう捉えているのかを質問。専門家会議の尾身副座長は、「捕捉されているものより数が多いのは確か。10倍か、15倍か、20倍かというのは、今の段階で誰にも分からない」と答えました。
福山議員は、こうした捕捉されていない軽症感染者や無症状感染者が院内感染を拡大していると指摘。自身の地元・京都の事例を紹介しながら、分娩・手術・内視鏡検査・救急医療等の診療実施前に有症状者でなくてもPCR検査を実施することが、院内感染を防ぐ水際対策になると提案。「早く決め、早く支給して、早く安心させることだ」と訴えました。
石橋議員は、(1)緊急事態宣言の延長判断と解除条件(2)新型コロナの影響ですでに職を失うなど収入・生計手段を断たれている困窮者への支援を緊急的に強化する必要性(3)これ以上失業者を出さないための雇用調整助成金の一層の拡充・てこ入れ(4)個人事業主・フリーランス・学生アルバイトの方々への支援策――等について取り上げ、政府の見解をただしました。
冒頭、安倍総理が緊急事態宣言の延長を決めた5月4日の記者会見でお詫びしたことについて、「何にお詫びをしたのか。初動の対応が失敗であったことへのお詫びであるなら、それを今後どう変えていくか、何が失敗だったのかを簡潔にご説明を」と質問。安倍総理はこれに正面から答えなかったため、石橋議員はその対応を批判、何が問題だったのかを国民にしっかりと説明した上で、解除の要件を共有し、目標達成に向けて一緒にやっていくこと、命と雇用と暮らしを守るということを明確にすることが必要だと主張しました。
新型コロナ感染拡大防止に伴う経済活動の停滞により多くのの企業や個人事業主が倒産、また失業者や、数字に表れない雇止めに遭っている労働者、無給の休業状態に置かれている方などが多数いることを問題視。4月から6月期のGDPは、戦後最悪のマイナス約22%の落ち込みという数字も出てきているとして、「失業給付の緊急の拡充をしないと救える命が救えない。失業手当の給付額の引き替え、給付期間を延長してほしい。総理の決断、政治判断でやってもらいたい」と求めました。