枝野幸男代表は7日、安倍総理が新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令する意向を表明したことを受け開催された委員会での質疑後に会見を開きました。
冒頭、緊急事態宣言にあたって国民の皆さんに呼びかけるメッセージを発信しました(談話 [https://cdp-japan.jp/news/20200407_2813] を参照)。
その上で、委員会での質疑について(1)検査体制を充実させ感染者を一日でも早く見つけることが重要だとして、体制強化の実現時期や人員増強を含めた具体策を求めたが、答えをいただけなかった(2)経済的な支援については、財産権の保障や最低限の生活を保障している憲法の趣旨を踏まえた政治の責務ではないかと申し上げたが、基本認識がまったく欠けていた(3)最悪の事態を想定して対応することが求められると申し上げたが、想定等についてまったく答えをいただけなかった――と振り返りました。
そして、「緊急事態により、行政の権限が相対的に大きくなっている時だからこそ、国会における監視機能はより強められなければならない」「その責任を担うのは野党の責任」「協力すべきことは協力する一方で、足らざること、誤っていること、遅れていることについては厳しくこれからも指摘をし、改めさせていくべく最大限努力をしていく」と決意を語りました。
記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。
Q:政府の緊急経済対策についての受け止め、特に1世帯30万円という政策についての所見を
今伝えられている支給対象者が、あまりにも低い水準すぎて、ほとんどの方が対象にならないと思われる。さらに元々の所得が少し違うだけで、片方は受け取れる、片方が受け取れないという矛盾も生じるとの指摘を受けている。
簡便な手続きと言っているが、現実に対応にあたるのはおそらく地方自治体の皆さん。本当にこの事務手続きや処理ができるのか、処理ができるとしていつできるのか。
30万円だけが踊り、多くの皆さんが支援を受けられるという誤ったメッセージを出していることを大変強く危惧している。
今日の委員会でのやり取りの中でも時間との戦いだと申し上げた。迅速に生活を支えるという観点から、一律給付をした上で、課税対象として税で所得の高い方については事後的に対応をしていく事しかないと思っている。
Q:緊急事態宣言により一部基本的人権が制限される内容もあるが、今後野党として、こうした大きい力をもつ宣言が適切に運用されるかどうか、どのようにチェックしていくか
主権の制限を皆さんおっしゃるのですが、平時においても私たち個人のそれぞれの人権は、人権のぶつかり合いの中で制約をされている。緊急時などにおいて、その制約の度合が大きくなるという違いでしかない。
特に今回の新型インフルエンザ特措法に基づく私権の制約については、医療施設を作るための土地などの収用などを除くと、平時において一般に行われている基本的人権のぶつかり合いの観点と比べて、ほとんど差異の無いものだと受け止めている。
したがって、そういう観点が問われているのではなく、この宣言がなされることの社会的効果として、営業停止をせざるを得ない、自粛せざるを得ない、そのことによって生活の糧を失う、事業の継続ができない方をどう支援していくのか、こちらこそが争点だと思っている。
Q:経済的支援について、自粛と補償はセットだという話だが、代表が考える補償の内容・規模感は
感染拡大を防ぐという公の利益のために特定の方々に無理をお願いするので、憲法の財産権保障の観点からも補償とセットでなければならない。
規模については、この状況がどれくらい続くのかによって変わっていく必要がある。したがって、単発でいくらということを考えるべきではない。今はとにかくできるだけ多くの金額をしっかりと支払うこと。
時々、混同されるが、定額を全員に支払うことで生活を最低限支えることと、事業継続が困難な事業を継続的に行うための補填の両面があるので、一概に規模の話をするべきではない。むしろ仕組みとスピードが問われるべき。
Q:経済対策の関連で、消費税減税、もしくは消費税をゼロにすることについての考えは
今、仕事を失って収入が断たれたという方がたくさん出ておられる。収入が断たれて、この状態が継続をすれば、従来は利益があがっていたのに事業を止めざるを得ないという方が山ほど出ている。
この人たちにキャッシュをどうやって流すのか、今政治はこのことに徹すべき。
Q:それは、併せてやればいいのでは
今、キャッシュが流れるということすらこの政権はやっていない。そのことに全力を上げたいと思う。
Q:政府が予定している緊急経済対策の中身について、108兆円という巨額な規模だが、緊急に必要ではないと思われる旅行に対する補助や、公共投資の早期執行等というものもかなり含まれている。お金が無くて困っている、今月の生活費も困っている人たちの生活苦に直接結びつくものではないと思うが所見を
まったくご指摘の通り。
コロナウイルス感染問題の収束後、一番影響を受けている観光業や飲食業をどうするか、それはそれで大事なことではあるが、そもそも、そうした生業に就いていた方々の仕事が失われる、あるいは倒産をして事業自体がなくなってしまうことが問われているのに、収束した後にどう消費を喚起するかを話しているのは、まったく順番が違う。
今、やらなければならないのは通常の景気経済対策ではないということを全然理解していない。
通常の経済対策は消費を拡大させるために何をするのかを考える。例えば公共事業などは直接お金を出して仕事や消費を作る。ただ今、そのことを議論したり、やる段階ではない。消費を増やせない、消費が減ることをむしろお願いしている状況の中で、経済をどう活かすのか。
リハビリをして健康体になりましょうという前に、今救急救命措置をしなければならない。救急救命措置をしているのに、リハビリしたら健康な体になりますということをやっている、それくらいの違和感を覚えざるを得ない。
とにかく今キャッシュを回すことで、倒産しなくてもいい事業者を収束まで事業継続させる。仕事を失って生活が成り立たない方の生活を支える。このことに徹するべき。
(108兆円は)相当水増しをされた規模だと受け止めざるを得ないし、規模の大小を言うのは通常の経済対策の感覚だと思っている。
Q:経済対策の話、今日の委員会で別の方の質疑で総理は自粛要請しているところにだけに補償するのは難しい、公平性の観点からも難しいとおっしゃっていましたが、どのように思われたか
例えば、直接自粛要請などにより収入が減った、イベント自粛で中止をしてチケットの払い戻しをしなければならなければならなくなった、これは具体的に直接の因果関係の損害額が分かりる。それについては何%補填をしますと言える。
ところが自粛要請と直接的な因果関係はないが、間接的に因果関係が明らかであることについては、例えば前年同月比で何%を補填するというやり方で、事業継続のための最低限の補填はいくらでもやりようがある。
従来からそういうやり方を提案しています。
Q:総理は憲法改正による緊急事態条項の導入も議論する必要があるとの認識を示したが、こうした状況において、憲法改正の議論を野党で活発にやるべきだという考えはないか
今現に感染拡大によって命の危機にさらされている方がいらっしゃる。こういった方を一人でも少なくするのが総理大臣としての唯一最大の役割といってもいい。また自粛や営業停止により生業や生活が成り立たない方をどう支えるのか総理は徹底していただかなければ、こうした状況を乗り越えることはできない。
Q:新型コロナの対策で代表の顔が見えないという指摘もあったが、昨日からツイッターで自身のメッセージを映像で発信されている。ツイッターの投稿の狙いやどのくらいの頻度でやっていくか
党の代表として、どういうタイミングで、どう発信するのかは、戦略的にいろいろ考えてやっている。
2月の予算委員会などの後、特にコロナウイルス感染症の影響が非常に大きくなってきているタイミングでは、あまり積極的な発信をすることは適切ではないという判断をしていたが、現下の状況においては、むしろ先頭に立って積極的な発信をするべきだと戦略的に変わった。
戦略の具体的なことは長い目では相手のあることなので語るのは控えさせていただく。
基本的には毎日やりたいと思っており、もちろん会議やその他が優先になるので、毎日やりますとお約束はできない。今日もこのあと映像を撮って発信しようと思っている。
ちなみに皆さんあまりご存知ないかもしれませんが、東日本大震災の直後は、特に避難所等におられる皆さんに向け、政府として毎日、さまざまな情報を発信した方がいいだろうということで、地元のラジオ局等にも協力いただき、官邸で一日5分程度、毎日録音し、それを被災地向けに放送するということをしておりました。状況が違う部分はありますが多くの皆さんが、いろいろな意味で不安の中におられる状況だと思いますので、安倍総理の今やってる事について不信や不安のある皆さんに、そうではない視点でも政治が動いているということをしっかりと伝えをしていく役割があるのではないかなと思っている。
Q:在日外国人、難民、入管行政について。立憲民主党は入管施設における長期収容の問題や、難民認定のあり方、在留特別許可の問題など、外国人の人権の問題に取り組んでいるが、こういう状況になり外国人労働者の人権の問題も重要になってきている。非常に入管収容施設の中が密な状況になっており、入管職員もゴーグルやマスクをしているが、一旦感染が広がると爆発的に感染者が増える可能性がある。このままでは、おそらく法務省も、まったく手つかずの状態になってしまう。こうした見えにくい入管収容施設の中や、外国人労働者の問題について、長期に渡るマイノリティの人権についてどう取り組んでいくか
2つの性質の話が一緒になってると思う。
入管での長期収容の問題は、一つには個別の行政運営・対応として長期収容が適切であったのか・あるのか、という問題。非常に疑問を持たせざるを得ない案件が少なからずあることを承知している。これについては政治も社会運動の一つだと思っており、仲間の議員がいろいろな役割を果たしてくれていることを心強く思っている。
ただ、個別の行政運営でどうするかという次元ではなく、制度そのものが矛盾をはらんでいることは明らかだと思っている。
むしろ長期収容で、それこそクラスタになりかねないなどさまざな問題は法務省こそ一番分かっているにも関わらず、改善を試みようとしていないことに非常に違和感を覚える。こうした状況であるならば、制度を改めていく提案をわれわれの側で組み立てていく必要がある。
感染症の問題については、こうした収容施設、入管だけではなくて、刑務所等を含め、相当万全な対応をしなければならない責任がある。強制的に収容しているということは、収容している人たちを感染させない責任は法務大臣にある。したがって入管等に感染が発生することがあれば、これは法務大臣の政治責任だと申し上げておきたい。