2020年3月12日
「今なお苦しんでいる方がいることを風化させない」「多くの皆さんの犠牲と苦労で得た教訓をしっかり活かしていく」枝野代表
枝野幸男代表は東日本大震災から9年を迎えた11日、岩手県陸前高田市を訪れ市長らと意見交換し、その後震災からの復興状況を視察しました(写真上は、高田松原津波復興祈念公園の枝野代表)。
津波で庁舎が全壊し現在はプレハブの庁舎で行われた意見交換では、戸羽太市長から要望書の手交があり、市側から重点要望の説明、その後、意見交換を行いました。
要望は4項目からなり、(1)土地区画整理事業等の事業完了までの支援の継続(2)持続可能な地域公共交通の構築(3)政府主催の東日本大震災追悼式の継続(4)急傾斜地崩壊対策事業及び河道掘削事業の推進――について
持続可能な地域公共交通の構築については、被災地だけの課題ではなく地方部の全国的な課題で、コミュニティを再生していく観点から、運転免許の返納の流れもあり高齢者が自由に移動できる環境作りが必要だとの説明がありました。
同市では、路線バス、乗り合いタクシー、デマンド交通(利用者の要求に対応して運行する形態のバス)の運行がありますが、バスについては被災地特例を適用し赤字部分の補助を受けていますが、今後適用されなくなった場合の懸念が示されました。
政府主催追悼式の継続について、政府は発災から10年となる2021年までとの方針が示されましたが、被災者の心の復興を鑑みると10年でひと区切りとすることは被災者の心情には合わないとの説明がありました。
また、同市には昨年9月、国営の追悼記念施設が整備されたこともあり、現地で追悼式を開催するなどの要望がありました。
土地区画整理事業等の事業完了までの支援の継続については、復興創生機関である令和2年度までに事業を完了するものの、事業の清算金処理等、次年度以降も実施が必要な事業が想定されるとの説明がありました。また、急傾斜地崩壊対策事業及び河道掘削事業の推進については、昨年の台風19号など大雨による洪水および土砂災害が多発する傾向にあり、避難所の確保の観点から、それらの整備に対応するための予算確保について要望がありました。
意見交換で枝野代表らから要望の内容や復興状況についての質問が行われ、区画整理事業の現状については、空き地が埋まらないというメディアからの批判もあるが、街の魅力や商売が成り立つといった環境作りが先だとの話がありました。道の駅はオープン4カ月で30万人が訪問したことや、来年夏には海水浴場も再オープンするなどの例を挙げ、人の流れを作り賑わいをうむことが必要との説明がありました。
また、高校卒業後の市外への流出については、学んだことが地域で活かすことができ、起業人としてプライドを持ちチャレンジできる環境をどう作っていくかが課題との説明がありました。
一方で就職氷河期世代対象の職員採用募集には多くの応募があったとの話があり、また復興に関連しさまざまな地域から来て定着した職員も多くいるといった説明がありました。
市長らとの意見交換後、高田松原津波復興祈念公園で献花を行い、東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」や被災市街地復興土地区画整理事業の今泉地区8号緑地(高台造成)などを視察しました。
枝野代表は献花後に記者団の取材に応じました。記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。
Q:震災当時、枝野代表は官房長官でした。そのことを踏まえ、9年目をどのような気持ちで迎えているか
そういった立場であったこともあり、ここ5、6年は3月11日を現地で迎えさせていただこうと、今回はコロナの問題があり配慮しなければならない中でしたが、来させていただきました。
改めて、亡くなられた皆さん、それから今なお復旧復興にご苦労されている皆さん、亡くなられた方にはご冥福をお祈りするとともに、お見舞い申し上げたいと思います。
コロナのこともあり、さまざまな慰霊、追悼の行事が縮小、中止をされたり、コロナがなければ報道も3.11関連がもっと多かったのではないかと思います。
政府が来年で政府主催の追悼式をやめる方針を出していますが、風化をさせてはいけない。私自身も直接被害にあわれた方々の次くらいには痛烈な記憶ですが、それでも今日こうして伝承館に来させていただくと、こんなこともあったと思い起こさせてくれる。
しっかりと次の世代にまで記憶・教訓として、今なお苦しんでいらっしゃる方がいることを風化させないために、強い意志を持って行動していかなければならない。
もう一点、あのときの教訓は活かされている部分ももちろんありますが、昨年一昨年に相次いだ風水害、それから今回の感染症。必ずしも十分に活かされていない部分がやはりある。多くの皆さんの犠牲とご苦労の中で得た経験に基づく教訓をしっかりと活かしていかなければならない。
Q:党の政策のなかで今後必要になるであろう、あるいは現在足りてないとお感じになる点は
地域差、地域事情もありますが、全体に言えるのは、人口減少と高齢化という現実のなかで、地域にどうしたら住み続けられるのか。そのためには高齢者の皆さんのアクセス、医療機関や介護サービスなどに対するアクセスをしっかりと確保していく。また、若い人たちが地域に残れる生業をどう作っていくのか。それと被害の大きかったところほど従来のコミュニティを同じ形では復元できませんので、どうやってコミュニティを立て直していくか、この3つが大きなことだと思います。
Q:昨年の3.11の際に枝野代表は福島に行かれ、原発ゼロの社会へと立憲民主党としての考えを述べられました。原発関連で今年立憲民主党はどういったことを考えていますか
原発ゼロ基本法案はぜひ審議をしていただきたいと、さらに強く求めていきたい。加えて、それに代わるエネルギーの道筋として再生可能エネルギーなどに関する法案も国会に出しました。原発をやめるだけではなく、それに代わるものもしっかりと示しています。国会でそうした本格的な議論をすることが、特に福島原発事故の被害にあわれている皆さんに対する国会全体の責任ではないか。
Q:陸前高田の街並みを見た印象、どういったことを思いましたか
陸前高田の被害自体は震災を象徴していますし、その被害の大きさ、そこから復旧復興のために大変大規模な工事等の努力をされてきた中で、一定の前進をしていると感じます。
ここにもう一度、賑わいと人の営みを取り戻すために、地域の皆さんもこの間、努力をしてこられた。それをさらに後押しできるように頑張っていく。震災直後とは違う、そういった意味では見違える姿を見ただけに、さらに強い責任を感じました。
今回の視察には、政務調査会長代理の阿久津幸彦衆院議員、岩手県連の高橋重幸代表、中村起子幹事長、及川修一幹事、菅野稔幹事、黄川田徹オブザーバーが同行しました。