衆院本会議で27日、同日昼に共同会派「立憲民主党・国民・社保・無所属フォーラム」(立国社)と共産党が提出した棚橋泰文予算委員長(自民党)の解任決議案、および森まさこ法務大臣の不信任決議案が審議され、棚橋予算委員長に対する解任決議案の趣旨弁明を本多平直議員、賛成討論を川内博史議員が、森法務大臣に対する不信任決議案の趣旨弁明を今井雅人議員、賛成討論を小川淳也議員がそれぞれ行いました。両決議案は採決の結果、反対多数で否決されました。
本多議員は冒頭、「新型コロナウイルス肺炎で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご家族の皆さまに心よりお悔みを申し上げる。また、感染、発症されている皆さまの一日も早いご回復をお祈り申し上げる」と述べ、「われわれ野党も、今後ともさらなる感染拡大防止などに向け、政府にも協力すべきは協力し、取り組んでいく」とあらためて表明しました。
その上で、棚橋予算委員長の解任決議案の理由について、(1)不公正、不公平な委員会運営(2)「公正に見せよう」という最低限の装いもない、不公正さがみえみえであること(3)審議を妨害する過剰介入があったこと(4)委員会の重要課題の審議、問題解決を妨害したこと(5)安倍政権による民主主義の破壊に加担したこと――の5点を列挙。そのなかで、国会おけるヤジについて、「『ヤジは議場な花』と言われるような、当意即妙で、多くの方が納得するようなヤジが多いとは言えないことは認めるが、私個人は、ヤジが必要な場面、ヤジが役立つ場面はやはりある」との考えを示し、「(閣僚などが)答弁できなかったり、質疑がかみ合わず、理事が協議を求めている場合などに、速記、時計を止めないなど委員会など運営が明らかにおかしい場合のヤジ」「審議打ち切り、強行採決への抗議の声」「本会議場で法案の問題点を端的に指摘するヤジ」「立法府にチェックされるべき行政府、閣僚の答弁が、論理的ではない、整合的ではない、事実ではないなどの場合のヤジ」は許されるべきヤジであり、一方で、単なる誹謗中傷などは慎むべきヤジだと持論を展開しました。なかでも安倍総理の閣僚席からのヤジは大問題だとして、棚橋委員長に対し、野党議員の発言に対しいちいち「ご静粛に」と反応するのではなく、総理や閣僚のヤジや不適切な発言こそ制止すべきだったと指摘しました。
共同会派「立国社」を代表して「断固」賛成の立場で討論に立った川内議員は、「全国で猛威を振るいつつある新型コロナウイルスによってお亡くなりになられた方々に、心より哀悼の意を表するとともに、現在も治療を受けておられる皆さまにお見舞いを申し上げ、一刻も早いご回復をお祈り申し上げる」と冒頭述べ、新型コロナウイルスの対応については、「政府の対応は後手後手に回っていると言わざるを得ない。国民の抱く大きな不安をよそに、多くの重要な判断を国民や自治体、民間に丸投げし、政府はいったい何を言いたいのか、国民は何をすればいいのか、あまりに分かりにくいと言わざるを得ない。『基本方針』なる仰々しい文書が、かえって国民の不安を増大させかねない」と批判。「何故安倍総理は、連日でも記者会見を開いて、国民の前でしっかりと説明し、国民のもつ様々な疑問・疑念に徹底的に答えようとしないのか。まずは国民に対して、問題に取り組んでいる姿勢をしっかり示し、自らの言葉で丁寧に説明することこそが必要だ」と、政府全体として万全の対応を取るよう求めました。
棚橋予算委員長の解任決議案に対しては、わずか約1カ月の短期間での20回近くの職権行使をはじめ、その不公正・不公平な委員会運営に言及。この国会は悪化する経済情勢、総理自らの政治姿勢が問われる桜を見る会と前夜祭の大問題、あまりに無理のある検察官の定年延長問題、白塗りを改ざんと認めようともしない公文書の取り扱いの問題、利権にまみれたカジノをめぐる現職国会議員の逮捕、相次ぐ閣僚の辞任、自衛隊の中東派遣問題、一向に進展しない北方領土問題、拉致問題など多くの重要な問題を抱えており、そうしたさまざまな課題に対し活発な議論が望まれるなか、その課題をあらゆる大臣に対して議論ができる重要な場が予算委員会だと説きました。
「これを差配する予算委員長たるもの、安倍総理・官邸の意向が何であろうが、より一層、公平・中立な委員会運営が求められる。何より、行政監視機能を果たすべき立法府の一員として棚橋委員長が、質疑の最中に何らか齟齬(そご)があれば、厳しく行政府の態度を正さなければならない立場である」と続け、「公平さの欠片もない、傍若無人極まる委員会運営で、聞かれたことには答えない『ご飯論法』の極致のようなふざけた答弁にも、ただひたすら時間が経つのを傍観する予算委員長など、この国会には要らない」と断じました。
安倍総理の「意味のない質問だ」という不規則発言を、最も近くにいながら何故か「聞えなかった」と言ったり答弁不能に陥ったり、同じ答弁を繰り返す大臣や政府参考人がたびたび現れるなか、時計も止めず、理事間の協議に応じず野党委員の貴重な質疑時間を奪うなどの問題行為を一例として挙げ、「議会制民主主義の理念に反する悪質な質疑妨害は、予算委員長の職務を完全に放棄したに等しく、公平性に欠けると言われても仕方がない」と指弾。「今こそ行政監視機能を担う立法府としての矜持を取り戻し、まっとうな政治を前進させるべき時だ」と述べ、解任決議案への賛成を呼びかけました。
今井議員は、本決議案を提出するに至った経緯について、安倍内閣が1月31日の閣議において、2月8日に63歳の定年を迎える東京高等検察庁の黒川弘務検事長の勤務を延長することを閣議決定した、法を無視した異例の黒川氏の定年延長問題に言及。「今回の黒川検事長の定年延長問題をめぐる森法務大臣の説明には、従来の法解釈を変えてまで定年延長を行わなければならないという必要性や合理性の一片の説明もなく、ただたんに、『検察庁法の条文をあらためてよく見たら、国家公務員法の定年延長制度を明確には適用除外していない』といったような趣旨の屁理屈を並べているだけだ。この問題は、まさにわが国の政治システムが法治主義なのか人治主義なのかを厳しく問うている。官邸の後押しを受けた検察官だけが出世できるという前例を作ってしまうことは、検察官の職務の公正さについての国民の信頼を地に落とすものと言わなければならない」と批判しました、「嘘は真実にはならない。法治主義の先頭に立つべき法務大臣としての資格は森まさこ君にはまったくないと断言せざるをえない」と述べました。
野党共同会派を代表して賛成の立場から討論を行った小川淳也議員は、森大臣に対して「法律家であるはずのあなたが、法の番人たるべき法務大臣の職責にありながら、わが国の法治国家と三権分立の原理に重大な挑戦を行い、その旨億面なく国会で答弁し、かつ旧来の解釈確認という、基礎的な手続きを怠り、国会での発言を二転三転、迷走し続ける姿はもはや見るに堪えない。本議案の審議を待つことなく、まずは即刻、自ら身を処すべきことを求める」と表明。本不信任案の直接の原因は内閣が違法・不当に介入した疑惑がある検察人事だとして、「従来の政府の公式見解の確認を怠ったまま結論に至らしめ、手続きに重大な瑕疵を生じさせた直接責任がある」と断じました。
安保法制や公文書管理、自衛隊派遣といった問題にも触れ、「全て政権のご都合次第。初めに結論ありき。後に法令、時には憲法までをも従わしめる。法秩序を破壊しながら、最長政権に至っている」と、法令より都合を上位に置いている安倍政権の姿勢そのものを問題視。「この超法規的政権の無謀、横暴を一体いつまで許すのか。今こそ私たち野党が問われている。この政権の無謀と横暴を正すその責任はわれわれ野党にある、われわれそがその重い責任を自覚し、国家国民のために自らを高めて行かなければならない」と訴えました。