日本マスコミ文化情報労組会議(MIC:新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演共闘、映演労連、広告労協、音楽ユニオン、電算労)主催の「緊急院内集会『報ステ』を問う」が13日国会内で開かれ、立憲民主党から機関紙・報道局長の杉尾秀哉参院議員、尾辻かな子衆院議員、石垣のりこ参院議員が参加しました。

 MICは今年1月、テレビ朝日が昨年末に番組リニューアルを理由に約10人のスタッフに契約終了を通知したことに対し、「真摯(しんし)に番組制作に取り組んできた労働者の権利と尊厳を踏みにじる行為」だとして、通知の撤回を求める声明を発表。テレビ朝日はこれを受け、契約終了を通知したことを認めた上で、「4月以降も当社の別の報道情報番組などの制作に携わっていただけないか提案をしている。あくまでも番組のリニューアルに伴う措置で、派遣切り、雇い止めなどの指摘は当たらない」などとするコメントを発表しています。

 冒頭、主催者を代表してMIC副議長・民放労連委員長の土屋義嗣さんが「日本を代表する番組の中核を担っていただいている、報道やジャーナリズムを支えている皆さんが、いとも簡単に『人心一新』という理由で契約を終了させられるという。聞いている限りでは次の番組が決まっている方はほとんどいない。彼らの職場を守る、報道ジャーナリズムを守る観点から、この問題を早期に片付けるために本日お集まりいただき、いろいろなご意見をいただきながら考えるきっかけにもしてもらいたい」とあいさつしました。

 党を代表してあいさつした杉尾議員は、元TBS記者、報道キャスターの立場から旧『ニュースステーション』、『報道ステーション』を「テレビ報道の現場で働くすべての人にとっては特別な番組。新たなテレビ報道の礎を切り拓いたと言ってもいい。コマ切れのニュースのコンテクスト(文脈)をつなげ、しっかりと物事の本質を伝える。それを中学生でも分かるように伝えるというのがモットーだったと聞いている」と評価。そうした番組を長年支えてきたスタッフが今回リストラ対象となっていることに、政権中枢、テレビ局の幹部らの意向が現場に下りてきて番組の変質を進めてきたのではないかと危機感を表し、「これはテレビ報道全体の問題だ。連帯の力強いご支援をお願いしたい」と呼びかけました。

 集会では、MIC議長で新聞労連中央執行委員長の南彰さんが、『報道ステーション』で昨年8月末に番組プロデューサーがセクハラ問題で解任されたことに端を発した、今回の問題の経過を報告。契約を打ち切られることになった当事者たちの「現場スタッフの姿勢を否定するものだと受け止めざるを得ない。ひいては、視聴者の方の知る機会を奪い、報道機関としての役割を果たすことができなくなるのではないかという危惧を覚える」「少しでも政治や社会や日本がよくなればとの思いで、番組のため10年以上尽くしてきたのにまるで使い捨てされたようで残念」「今回のことについて、番組幹部からいまだ説明がなされていないため、スタッフの間には不信感と同時に不安も蔓延している。今後は『番組の方向性が間違っているのでは』と思ったとしても、発言は控えてしまうかもしれない」といった声を紹介し、労組側への「誠意を持って丁寧に説明する」「次の職場を早めに確保する」「派遣料は同額を保証する」といった約束は宙に浮いているとも指摘しました。

 集会では、この問題への危機感を共有する弁護士・NPO派遣労働ネットワーク理事長の中野麻美さん、テレビ朝日コメンテーターとして『サンデープロジェクト』や『朝まで生テレビ』などで活躍したジャーナリストで元朝日新聞編集委員の山田厚史さん、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」(JILPT)副主任研究員の内藤忍さんがそれぞれの立場から発言。会場に来られなかった、ジャーナリストで元朝日新聞記者での竹信三恵子さん、TBS報道局記者・キャスター・ディレクターの金平茂紀さんからもメッセージが寄せられました。

 集会の最後には、「日本のジャーナリズムを担う報道スタッフを守ろう」という集会宣言が提案され採択。今後、この宣言はテレビ朝日と番組スポンサーに送付されるとのことです。

「メディアをめぐる状況は暗黒な時代だが沈黙していてはいけない」と金平茂紀さんがメッセージ
予算案審議めぐる『報ステ』での報道時間は激減しているという