立憲民主党は22日、ジェンダー平等推進本部DV(ドメスティックバイオレンス)防止法改正検討ワーキングチーム(WT)の会議を開催。神奈川大学法学部教授の井上匡子さんが、DV防止対策への取り組みに関し「比較法の観点からみたDV防止法の課題」をテーマに講演しました。

 井上さんは、はじめに、DV施策に関し日本は制度的な整備が抜けており、改革が進まず世界のなかでも大きな後れを取っているとの認識を明示。その上で、日本が政策のモデルとした欧米諸国や、社会規範や家族規範の近い国、社会状況に類似性のあるアジアの国と比較しながら、その制度を直接取り上げるのではなく参照する形で、エッセンスとしてどういう形でできているかという視点で話をしました。

 比較法の観点からの日本のDV法・DV施策を検討する注意点としては、「具体的な法制度の問題点・改正に関わる点」「法律では対応できない問題」「DV施策支援全体/他の社会システムとの関係に関わる問題点」を区別することが重要だと指摘。特に支援全体として、画一的な被害者や加害者像の影響により多様なニーズになっていないとして、典型的なDVケース・DV対応と非典型ケース対応とを分け、アセスメントやプランニングをする必要だと強調しました。

 日本のDV施策の課題としては、個人ではなく、構造的に他の選択肢がない状況に置かれていることを理解せずに制度を強化している現状に対し、ジェンダーに基づく暴力だととらえ、構造としての問題と個人の意識や選択の問題とがあると説明。その上で、刑事分野の課題としては加害者へのアプローチと対応、再加害防止を挙げ、特にDVケースには、反復性・継続性や、単体の行為としては比較的軽微だが、複数の要素(身体的・心理的・社会的など)が複雑に組み合わされるなど「犯罪行為の態様としての特殊性」と、密室でのできごと、離脱の難しい家族という関係、発見の困難、社会規範の影響など「加害者と被害者が同じ家族の中にいるという特殊性」があるため、刑事処罰が難しく、立件しにくいと指摘しました。

 2016年には再犯の防止等の推進に関する法律が成立し、再犯罪防止推進計画(国)と地方再犯防止推進計画(都道府県・市町村)が努力義務となっており、この計画・法律を広げる形で地域の中で自治体の取り組みを含めて対応していくことが重要だと説きました。

 民事分野の課題としては、保護命令制度の問題点の改善、喫緊の改正点としては公的機関が出せる緊急保護命令の創設や、審尋(ヒアリング)なしの保護命令を実質化しガイドラインなどを制定することを列挙。ガイドラインの制定は法改正をしなくてもできるとして、ニーズに合っていない現行のDV法を動かし始めることが大事だと述べました。「本来被害者は逃げる必要ない」とも主張、所有権と切り離した居住(権)の確保がある英国の例を参考に、住宅支援や、子どもをめぐる問題への対応などソーシャルワーカーによる継続的な支援の必要性にも触れました。

 加えて、DV防止法の重要な柱として自治体の役割の重要性を強調。DV防止施策は、責任主体の不明確さや継ぎはぎの制度であることなどから、拠点施設である配偶者暴力センターでさえ他機関・他制度の補充的機能しか果たしていないと問題視。要保護児童等への適切な支援を図ることを目的とした要保護児童対策地域協議会をモデルにした制度の検討や、自治体間格差の広がりを是正するためのナショナルミニマムの設定などを提案しました。

 井上さんは最後に、「ジェンダー・メインストリーミング(ジェンダーの主流化)」の理念があらためて重要だと説き、「被害者支援ではなく施策全体をジェンダーの視点で見ない限りDVの被害者の対策は変わらない。DV被害者で、そのことを正面から掲げる人は少ないので全ての窓口での対策を可能とするためにもこの視点が重要」だと述べました。