立憲民主党は14日、政務調査会長主催の勉強会と党エネルギー調査会の共催でオープンフォーラムを開催。科学技術振興機構低炭素社会戦略センター(LCS)長・プラチナ構想ネットワーク会長・東京大学第28代総長の小宮山宏氏を招いて「2050年CO2ゼロ・原発ゼロ社会の設計―明るく豊か、コストも安い」をテーマにご講演いただきました。

 冒頭、逢坂誠二政務調査会長は「われわれがエネルギー問題に取り組むのは、単なるエネルギーの問題ではない。社会全体や国会のあり方を国民本位のものに変えていき、将来、100年後、500年後、1000年後を見据え、いい国を作るためにやっている」とあいさつ。近藤昭一エネルギー調査会長は、「エネルギーをどうしていくか、そのなかで一人ひとりの生活をどう豊かなものにしていくかということだ。これまでも議論されながら、地球温暖化の問題がより喫緊の課題となっている。オープンフォーラムを通じて情報を共有し、運動というに形につなげていきたい」と述べました。

 小宮山氏は、(1)エネルギーの現状(2)2050年CO2ゼロ・原発ゼロを前提とするシステム設計(3)提言――の3点について講演。「再生可能エネルギーは、世界平均ですでに最も安価なエネルギーであり、今後さらに安くなる。2030年には、日本でも例えば太陽光発電は5円/kWh(2018年は16円/kWh、世界平均は4円/kWh)と予測され、最も安い電源になる。すべてを賄う国内のポテンシャルもある」と明言する一方、日本は世界に比べてCO2削減の施策、技術、実績が由々しき状況にあるとして、「新型揚水発電、慣性力制限の緩和、電力会社に分断された送電システムの統合、林業連携による水素の低価格化など政策が強く関連する課題がある」と指摘しました。課題解決に向けた政治家の取り組みを呼びかけるとともに、政府に対しては発送電の分離や送電網強化への投資、許認可の迅速化などを要請。「国が一番すべきことは発送電の真の分離。電力会社のために電力システムを設計するのか、社会のために電力システムを設計するのか、そういう選択だと考えている」と話し、「日本は2050年CO2ゼロ・原発ゼロ社会を目指し、エネルギー自給国家を実現するべきである」と提言しました。

 小宮山氏は「現状ある技術の延長(改良)だけでも現実的な範囲に収まる。しかるべき施策や技術の導入によって現状より安価なシステムになりうる。そうするといまエネルギーだけでも20兆円以上を輸入しているものが内需に代わり、地域の資源になる。このほか木材などを総合するとだいたい50兆円、いまのGDPの10%が地域の産業を生む資源となり、今よりはるかにバランスの良い国になれる」と主張。「2050年再生可能エネルギーによる自給は日本のモデル」だと述べ、太陽光発電等の再エネや、省エネに係る技術開発や推進の方策などを具体的に示しながら、そうして進歩した技術を前提に緻密に作られた、2050年100%削減の計算例「日々の電力需要と供給」「月々の電力需要と供給」(LCS作成)について説明しました。

 講演後の質疑応答で「原発を止めるタイミングをどうシミュレーションしているか」との質問が上がると、小宮山氏は「国民が合意して決めること」とした上で、「実質的にはかなり止まっている。問題は、『ゼロにするんだ』ときちんと言わず、そこに向かってみんながいくんだということをやらないこと。いつ、どれだけ止めるかは、新設の原発を作らなければゼロになる」などとコメント。これを受け逢坂政調会長は「まずは『原発ゼロ』を決めること。政治の意思で決めれば社会がその方向に動いていく。そこが出発点で、その次のシナリオが描けない」と述べ、まずは「原発ゼロ」を政治の意思、国の意思として示すことの重要性をあらためて強調しました。