山花郁夫・衆院憲法審査会幹事は24日、国会内で会見し愛知県からあいちトリエンナーレに関するヒアリングを行った報告を行い、「やはりあの展示物の内容を審査して補助金の不交付をしたのではないか」との疑いを強くしたと語りました。
23日に憲法審査会の野党メンバーで愛知県庁を訪問し、あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」の展示をめぐる一連の件について聞き取りをおこないました。この問題をめぐっては8月1日に開幕したものの同月3日に同展示の中止がされており、憲法審でも通常国会最終日の5日、野党メンバーが一致して聞き取りに行ったほうがいいと申し入れ、更に補助金全額不交付の決定もあり、臨時国会開会後にも憲法審で話を持ちかけたものの与党は断ったため野党メンバー(山花幹事、国民民主の源馬謙太郎議員、共産の本村伸子議員)で結果的に行くことになったものです。
今回のヒアリングついて山花幹事は、「立法権といっても三権の一翼でございますので、中身については別にコメントする立場ではない」とした上で、どういう背景があり、県庁内部でどういったことが起こっていたかを、事務局、検証委員会、大村知事から聞き取りしたと説明しました。
ヒアリングでは、(1)会場での混乱はなかったが、県庁の電話が鳴りっぱなしで、県庁の機能が麻痺してしまった(2)当初は、特に時間的制限も設けていなかったので1件につき3、4時間かける人もいた。また当初、県職員は名前を名乗って電話に出ていが、個人宛に「今度を殺すぞ」といった電話がかかってきたりもした(4)脅迫があったから中止になるという前例を残すことは本当によくないということで県職員、事務局も懸命の努力をし、何とか再開にこぎつけた(5)同様の展示が東京で行われた時、抗議のようなものがあったので、4月時点で警察にも連絡済み(6)開会前日の7月31日に行われた内覧会に文化庁が来賓あいさつをする予定だったが当然キャンセルされ、理由も「都合により」と明確なものではなく、さらに祝電を読まないでくれとの話もあった(7)不交付に際しての文化庁からの質問では、何件抗議があったのかなどは聞かれたが、全額不交付とされた理由については聞かれなかった――といったことを聞くことができたと報告。
さらに、事務局から現代アートで政治色がないもののほうが難しいぐらいだという話もあり、もし展示物の内容について審査した上で補助金の不交付を決定していたのであれば、表現内容を補助金を出す出さないということを通じて政府がコントロールすることに繋がりかねないと指摘、「憲法で保障された表現の自由に対して脅威となるもの」だと語りました。また今回の決定で、それぞれの自治体で補助金を出してくれないのではないかという表現の自由に対する萎縮的効果が懸念されると指摘しました。
大村知事からは、グローバル化しており国内外の66組のアーティスト・団体のうち33組が海外からのものであり、海外アーティストが日本では圧力に屈して中止がされ検閲だと捉えられると、今後現代アートをどうしていくのかを考えていかなければならないとの話があったと報告されました。
また、(1)電凸のような新しい形式、ネットでのソフトテロなどへの対応をどうするのか、表現の自由、芸術の自由をどう守っていくのかを国会でも議論してほしい(2)補助金全額不交付の問題について、文化庁が手続き上の問題と主張していますが「愛知県としては不備はない」と改めて表明があった――と報告がありました。
このヒアリングを受け山花幹事は、文化庁が補助金の不交付を「来場者を含め展示会場の安全や、事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告するなく採択の決定通知を受領した」との理由で決定をしたが、(1)現場での混乱はなく「展示会場の安全(を脅かす)」という事実関係は存在しない(2)補助金申請を4月にしており、このような事態が起こることを認識できるはずがない――として、「やはりあの展示物の内容を審査して補助金の不交付をしたのではないか」という疑いを強く持ったと述べました。
記者から、憲法審では国民投票法など与党が提案しているものがあるが今回の件とのプライオリティを問われると、与党側が野党が拒否しているという言い方をしていることに触れ、CM規制について野党側からも話をしており、さらに昨年の漫画村の問題を契機としてサイトブロッキングに関連し通信の秘密や検閲について議論すべきとの指摘していることを紹介、その上で「嫌味に聞こえるかもしれないが」と前置きし、「9条について自衛隊と書いても書かなくても現状何も変わらないなんて話よりも、こんなに影響があり今後に影響するかもしれないということがいま目の前で起こっているわけですから、プライオリティでいうとこちらのほうが高いのではないか」と指摘しました。
その他の主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。
Q:先日、弊社(産経新聞)とFNNが実施した調査で不自由展の再開や、トリエンナーレの展示の件について、主要野党の支持層で賛否が拮抗するという結果がでました。表現の不自由展に否定的で、政府の対応に肯定的な人は一定程度いらっしゃる件についてどのようにお感じになるか
表現の自由というのは、基本的に反権力の自由を本質としています。つまり「権力が素晴らしい、今の政府は素敵だ」という言論が弾圧されたことは歴史的にはないわけで、だからこそ反権力の自由であります。ですから、民主主義の国においては、表現の自由といったときは、むしろ世論調査すれば少数だよねというほうが多いのは当然のことではないでしょうか。そういった少数意見が尊重される社会であってほしいと思うし、何か少数意見が封殺されるような日本の国であってほしくないというのは、愛国心であって反日ではないのではないかなと思っています。
Q:(続けて)一定程度、野党支持層の方でも野党の主張に異なる意見を持っている人がいらっしゃることについては
それは大いにあり得ることではないかと思います。つまり表現の自由といっても無制約ではないよねという言い方をされますが、例えば、展示物が特定の個人の名誉を侵害をしたり、プライバシーを侵害したり、あるいは何か犯罪を助長するような、まさに刑法犯にあたるようなケースであれば、それは展示しちゃだめよねと、いくら多数派じゃない少数派だといっても、という話になると思いますが、それは常に野党を支持する方であったとしても、愉快ではないという思いを持たれる方も、もちろんいらっしゃるのではないかと思いますし、あまりこれについてお話をしていると、どうも展示物の中身の話なりそうなのですが、中身については冒頭申し上げた通り、われわれも立法権を担うメンバーの一人ですから