立憲民主党は16日、文部科学部会を国会内で開き、(1)大学入試における民間英語試験の導入(2)給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)改正――について文部科学省、「全国過労死を考える家族の会」からヒアリングしました。
2021年度の大学入学共通テストで民間の英語資格・検定試験を活用することについては、大学教授らが利用中止と制度の見直しを求める請願書を提出、「公正性・公平性が確保されていない」と批判しているほか、高い受験料など受験機会の不平等や情報周知の遅れ、採点の質が担保されていないなど多くの課題が指摘され、高校生や保護者、学校関係者に不安が広がり、導入延期を求める声が上がっています。
同日のヒアリングでは、前回11日の会議で議員から質問のあった5項目について文科省が回答。カンニング等の不正防止を含めた採点の質の担保や、低所得世帯への支援などをめぐる懸念事項に対し、文科省は実施団体への要請のみで義務付けをしない、無責任な姿勢であることがあらためて浮き彫りになりました。
今臨時国会で政府が提出予定の給特法改正は、教員の働き方改革を進めるため、勤務時間を年単位で管理する「変形労働時間制」の導入や、残業時間を「月45時間、年360時間」とする指針の順守等を柱とするものです。年単位の変形労働時間制は労働基準法が定めており、原則として1日8時間以内と決まっている労働時間を、平均で週40時間を超えない範囲で繁忙期には延長できます。政府は、成立すれば繁忙期の勤務時間の上限を引き上げる代わりに、夏休み期間中などに休日をまとめて取ることができるようになると主張していますが、現場からは文部科学大臣に対し「変形労働制」の撤回と、もともとの給特法の改正を求め署名がそれぞれ3万1830筆、3万8760筆集まっています(10月4日現在)。
変形労働制の撤回を求める理由として(1)統計上の残業時間が減り改革が進まなくなる(2)延長した定時に合わせて仕事が増える(3)夏休み前に倒れてしまう(4)子育て・介護世帯が働き辛くなる(5)残業は結局「自発的」なので規制が働かない(6)部活顧問の強制が強まる(7)年休を使う機会が失われる(8)夏に休める保証はない――の8項目を列挙。給特法については「求める改正・求めない改正」としては、(1)せざるを得ない残業は残業と認めてください(2)残業には残業代等の対価を支払ってください(3)残業時間に絶対の上限を設けてください(4)部活顧問の選択権を保障してください(5)残業代ゼロの職場を管理職責任で実現してください(6)現状を追認するような改正は認めません(7)部活顧問を正式な職務とする改正は認めません――の7項目を挙げています。
給特法のもと、教員はいくら残業しても残業代がつかない仕組みになっており、残業代がつかないことから労働時間の管理もされず、長時間労働が野放しにされてきました。教員の業務内容が拡大、複雑化するなか、その給特法の問題点を改めることなく変形労働時間制が導入されると、これまで以上に労働環境は悪化するとともに、時間外の労働時間の認定が難しくなるなど多くの問題点が指摘されています。
同日の会議には、全国過労死を考える家族の会の代表の寺西笑子さんと、自身も教員であり、12年前に教員の夫を過労によるくも膜下出血で亡くした、同会の公務災害担当の工藤祥子さんが参加。工藤さんの夫は死の直前、中学校の学年主任に加え「生徒指導専任」、サッカー部の顧問、進路指導なども重任する激務だったといいます。「夏休みをまとめて取れると言うがそこまでもたない。夫も6月に亡くなったが6月に過労死が多い」「見かけの労働時間は減るが、定時が伸び仕事量は増える」「夫の過労死が認定されるまでに5年半かかったが、今後さらに認定されにくくなるのではないか」などと、変形労働制導入による弊害を訴えました。
参院文教科学委員会理事の水岡俊一議員は、過労死に至るまでがんばって働き、公務災害と認められない事例が多々あるなか給料不払い残業を法的に認めるものだなどと述べ、今後現場の声などを聞きながら教員の働き方改悪にならないよう取り組んでいく旨力を込めました。