立憲民主党は26日、常任幹事会を開催し、元モーニング娘。のメンバーで、タレントの市井紗耶香(いちい・さやか)さんを次期参院選挙の比例代表の公認候補者として決定しました。同日、国会内で福山哲郎幹事長が同席し、記者会見を開きました。

 市井さんはまず、いままでの芸能活動を応援してくれていた皆さんに感謝の意を表明。その上で、「芸能活動をしていた立場から政治の世界に飛び込むことを不思議に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その理由を含め私の気持ちをお話させてください」と続け、以下のように述べました。

 私がいま、最も自らの気持ちを捧げ、自らの時間を注いでいるのは子育てです。私には4人の子どもがいます。上は14歳、12歳、下は6歳、一番下はようやく2歳になりました。一番上の子どもは私が20歳のときに出産しました。初めてわが子を抱いたとき、「この子を命がけで守る」、そんな気持ちが芽生えたのを覚えています。

 4人の子育ては本当に大変ですが、お互いが助け合い、子ども一人ひとりが健やかに育ち、子どもたちの成長を日々見つめることができるのはとても幸せなことだと実感しています。ただ、自らが子育てを経験するなかで、いまの日本が本当に子育て世代に温かい社会になっているか疑問に思うことがたくさんあります。例えば、病児保育。子どもはちょっとしたことから急に発熱をしたり体調を崩すことがあります。そんなとき、フルタイムで働いているお母さん方は前日から病児保育を血眼になって探したり、ようやく一時保育先が見つかっても家から何駅も離れたエリアだったり、子どもも親も心身ともに疲労困憊になっているのが実情です。

 東京などの都会で病児保育を支援する団体の施設が増えてきたのは事実ですが、子育てをしている私たちの実感からするとまったく足りていないのが現状で、特に地方に行けば行くほどその環境は厳しいものになっていると思います。このような環境は、住んでいる場所にかかわらず、国全体で解決しなければならない問題だと思います。

 そして、子育てにはどんなに工夫をしてもお金がかかります。「最近の子どもはぜいたく」という声が時折聞こえてきますが、どんなに節約をしても毎月のおむつ代、ミルク代、着るものに食費など、どうしてもお金がかかってしまいます。現在子育て世代は児童手当で支援をいただいており、大変感謝しておりますが、その手当では十分ではないことは子育て家族では誰しもが知っています。

 やはり、日本社会全体で子育てを応援していくために、もっと児童手当を拡充して、経済的な面で子育て家庭を支援していくことが必要だと思います。そして、子育てを支えてくれている保育士さんや看護師さんの人数不足や、職場環境のことも大きな問題だと思います。

 また、子どもを授かりたくても授かれず、不妊治療に多額のお金をかけなければいけない夫婦もおり、そのような家庭も社会全体で支えていく仕組みが必要だと思います。

  子育てにかかわる問題点、改善点はきりがありません。最近はそのような問題点が多く議論されるようになりましたが、私たちのような子育て家族が望むようなスピードで解決されていないのがとても残念です。おそらく理由は、子育てを経験し、または子育てをしている当事者、特に現役のお母さんが政治の世界に少なすぎるからだと思います。

  今回、自分自身が新しい挑戦をすることがいいのかどうか、悩みに悩んだ結果、いまここでお話をしています。私も4人の子どもを育てている子育ての当事者です。自分自身の子どものみならず、これからの日本を支えていく多くの子どもたちのために頑張ってみよう、そう思って今回思い切って政治の世界に飛び込む決意をいたしました。全力で頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 質疑応答では、記者からなぜ立憲民主党から出馬を決めたのか、また出馬に至った経緯を問われ、市井さんは「多様性を大切にしているところ。人それぞれ違うので、違うことを認め合い、支え合い、尊重して共に助け合っていこうという気持ちにとても共感した」「私自身も4人の子育てをしているなかで、何かできることがあるのではないかという思いが強く芽生えていたのは事実。そうしたところに、党の方からお声がけいただき、引き合わせのようなことは感じている」とそれぞれ発言。政治に関心を持ったきっかけについては、「正直政治の世界は遠い存在だと思っていたが、子どもが生まれ、自分の命よりも守りたい命が生まれた瞬間に、子どもたちのために何を残していけるのかというところで政治に関心を持つようになった」と説明しました。

 子育て政策以外で取り組んでいきたいテーマについては、「東日本大震災のときに私は千葉に住んでいたが、それまで原発のこと知らなかった。原発に対する危機意識を持ち、子どもを育てる親として不安になっていることもあり、原発はゼロにすべきだと思っている」と主張。「モーニング娘。のメンバーには報告したのか」「メンバーのなかで誰に一番報告したいか」との質問には、「まだ正式な報告はできていないが、報道は目にしたり耳にしたりしていると思うので、同じ子育てをしているお母さんとして、どこかで支えてくれているのかなと思っている」「これから子どもが生まれてくる矢口真理ちゃん、保田圭ちゃんといった同期メンバー。3人ともお母さんになったというところで、『これからの未来をどのように子どもたちのために残していくか』という話をできたらしたい」と述べました。

 市井さんの印象を問われた福山幹事長は、「初めてお会いしたとき、丁寧な言葉づかいで姿勢が良く、一言ひとこと、慎重に言葉を選ばれながら丁寧に話をされる様子を拝見し、あれだけ芸能界で売れっ子だった方である上にと、いい意味でのギャップで驚いたとともに好印象を持ち、敬意をもって接しさせていただいた」と第一印象を語り、「明確な問題意識があり、立憲民主党の政策もよく理解され、そのことをもって立憲でやりたいと言っていただいた。非常にまじめで聡明な方だと感じた」と期待を寄せました。