参院本会議で10日、「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案」の採決が行われ、与党と国民民主党などの賛成多数で可決、成立しました。
採決に先立ち、会派を代表して反対の立場から討論に立った牧山ひろえ議員は、「子育てや教育にかかる費用負担の軽減という観点からは、私たちも幼児教育・保育の無償化には一定の意義がある」との考えを示した上で、「しかし、幼児教育・保育の無償化の前に、何より全ての子どもが安全で質の高い幼児教育・保育を受けられる環境を整えなければならない。その環境整備をすることなく、ただ単に幼児教育・保育の無償化を推し進めれば、待機児童問題はますます悪化し、安全性を欠く、質の悪い幼児教育・保育が横行する。そして、保育士・幼稚園教諭のなり手不足で現場が疲弊して、より一層人手不足に拍車がかかり、結果として無償化どころか幼児教育・保育を受けられない子どもが沢山生じることになりかねない」と断じました。
無償化に伴う問題点としては、(1)幼保無償化は待機児童対策にはならないばかりか、待機児童問題をより悪化させるリスクがあること(2)現在の制度設計のままでは質の悪い、劣悪な施設も無償化の対象となり、保育の質をさらに低下させる懸念が拭いきれないこと(3)保育の量的拡充、そして質の向上に不可欠な、保育士・幼稚園教諭の処遇改善への取組が極めて不十分なこと(4)給付額をみると高所得者層に手厚い配分となっているため、子育て世代に格差の拡大と著しい分断をもたらす懸念があること(5)地方自治体の自主性、団体自治を踏みにじる政策決定が行われたこと(6)指定都市、中核市を除く市町村は、認可外保育施設等に対する指導監督権限を持たないため、市民への説明責任を果たすことが困難なこと――等を列挙。「日本は子どものためにもっとお金を使うべきだが、今回の無償化案は、不平等・不公正・不合理としか言いようがない。国民を分断し、子どもの格差を広げるものでもある。保育の量的拡充、言い換えると待機児童問題の解消、そして保育の質の改善を実現した上で、全ての子どもたちを対象に全面無償化を行うべきだ。手順を誤った今回の無償化法案は、将来にまで禍根を残し兼ねない」と指摘しました。