2019年2月25日
【衆院予算委】集中審議で枝野代表、逢坂政調会長、小川、今井各議員が質問。
衆院予算委員会で25日、「社会保障政策・内外の諸情勢」に関する集中審議が行われ、立憲民主党・無所属フォーラムから枝野幸男代表、逢坂誠二政務調査会長、小川淳也、今井雅人各議員が質問に立ちました。
小川議員は冒頭、24日投開票された沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設計画に伴う名護市辺野古沖の埋め立てへの賛否を問う県民投票で「反対」の票が有権者の4分の1を超え、条例の規定により、玉城知事は総理大臣とアメリカの大統領に結果を通知することになったことを受け、「いったん工事を中断し、民意を体現する玉城デニー知事と真摯(しんし)に沖縄県民の気持ちに寄り添って話し合われることを求めていく」と述べました。
毎月勤労統計問題をめぐっては、厚生労働省の「毎月勤労統計の改善に関する検討会」が2015年9月の会合で、調査対象事業所は従来の総入れ替え方式が適当と結論付ける報告書をまとめる予定であったものが中江元総理秘書官と厚労省の姉崎統計情報部長と面談後に中間的整理にとどめるよう同省が検討会の阿部正浩座長に要請する等、2015年の勤労統計手法変更の経緯を確認。当時の課長補佐が阿部座長に宛てた15年9月の複数のメールの写しが22日に提出されたことで疑惑は深まっていると述べました。
中江元総理秘書官は、「サンプリングを一度にすべて入れ替えるか一部ずつ入れ替えるかは政策の話。どちらが統計として間違っているかではなく、どちらの方法がより適正か、どちらを選択するかという議論であり、私は問題意識を伝えた」などと答弁。小川議員は「なぜ私たちが官邸の関与を問題視しているか。政府の担当官はすべて法律に基づく職務権限を行使している。これには表裏一体のものとして説明責任、結果責任を負うことが決まっている。これにより手続きの透明性を確保し、結果の妥当を期す。これが民主主義、法治国家が前提としている価値。ところが安倍政権になって、特に2015年頃から国有地の処分、学校法人の認可、統計制度の変更と、すべてにおいて本来職務権限がないはずの総理秘書官が暗躍しているケースが目立つようになった。しかも事実上の影響力を持っているにもかかわらず関与を否定し、嘘をつき、ごまかし、その事実をないものにしようとしているかのような答弁が多い」などと指摘しました。
枝野代表は、(1)毎月勤労統計調査、(2)沖縄県民投票と辺野古基地建設工事(3)原発事故の損害賠償に関する東京電力の和解拒否(4)中長期的な経済状況に対する認識と消費性向、保育料無償化の効果(5)消費税対策予算――などについて質問しました。
毎月勤労統計調査について、手法変更にあたり2015年3月15日に秘書官個人として中江秘書官が姉崎氏などに問題意識を伝達したとした件について、官房長官の経験から、秘書官から話があれば、基本的には特段、総理の意向とは関係ない、個人の意見だと特に示した上でなければ、総理なり大臣の意向を反映したものだと受け止めるのが普通だと指摘しました。
沖縄県民投票に関連し沖縄県民こそが普天間の危険性を誰よりも分かっているとして、「普天間の危険性を理解し危険性を除去しなければならない緊急性・重要性を感じている皆さんが辺野古の基地建設にこれだけの明確なノーを突きつけた」と語り、そのことについて見解をただしました。
安倍総理は、「普天間基地の全面返還を米国と合意し、同時に県内に代替施設を作るという合意に達した」と従来の答弁に終始しました。枝野代表は、「本当に辺野古に基地を移設することが唯一の解決策なのかを、時代状況、安全保障環境の変化に応じて模索するという意志が全く感じられない。これでは昨日示された県民の意思に寄り添うことにはならない。強く危惧をする」と述べました。
辺野古基地建設工事に関連し埋め立て予定地が軟弱地盤であることについては、今国会の代表質問で質問し従来の工法でできると答弁があったにも関わらず、岩屋防衛大臣は「ボーリング調査の結果を実績のあるコンサルタント等に見てもらった結果、実績のある工法をもって地盤改良工事は可能だという確認をしている。実際どういう設計でどのくらいの深さの地盤改良の杭打ちが必要かということは、然るべき時期にしっかりと説明をさせていただきたい」と述べ、詳細については説明を避けました。
原発事故の損害賠償について、東京電力福島第一原発事故を受け、東京電力は2014年1月15日に「損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策」(3つの誓い)を決定・発表。(1)最後の一人までの賠償貫徹(2)迅速かつきめ細やかな賠償の徹底(3)和解仲介案の尊重――を挙げており、和解仲介案の尊重として紛争審査会の指針の考え方を踏まえ、紛争審査会の下で和解仲介手続きを実施する機関である原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)から提示された和解仲介案を尊重するとともに、手続きの迅速化に引き続き取り組むとしていることから現在の状況を質問しました。
2018年末までの累計で手続きが終了した計23217件のうち121件が東京電力が拒否したことにより打ち切りになったとの答弁を受け、拒否した件について、その後どうなったか、フォローアップされているのかを聞きました。
柴山文科大臣は、「和解仲介手続きが不幸にして打ち切られた後も、再度申し立てを希望する被害者の方々もおられるわけですから、説明会などの広報活動を実施するとともに被害者からの再度の申し立てにかかる相談に丁寧に応じるなど、ADRセンターの目的に沿って被害者に寄り添った丁寧な対応を行わせていただいている」と答弁しました。
中長期的な経済状況に対する認識と消費性向、保育料無償化の効果については、「名目GDP構成比の推移」などから、輸出が伸びないから日本の経済が伸びないというのは勘違いであり、実際、輸出は伸びてると指摘。また民間最終消費支出(家計による消費)がGDPに占める割合が一貫して高いと説明。さらに公的固定資本形成(通常の公共事業)と政府最終消費支出(行政が行う行政サービス全体)が1958年には16%程度だったが、2018年には24.7%にも達しており、財政規模が大きくなっていると指摘。この比率を増やしていってもゼロに近い成長だと指摘しました。
さらに、「年間収入階級別の平均消費性向の推移」を示し所得が増えるほど消費しなくなると説明しました。
その上で、平成31(2019)年度予算に含まれる幼児教育無償化経費のうち、所得割課税額16万9000円超、平均年収640万円超の方の無償化に当てられる金額と全体無償化対象経費に対する比率、保育所職員の従業員数、保育士の平均年間賃金額、全産業との差額について質問。「(消費性向から見ても)所得の比較的高い皆さんにはちょっと待っていただいても、保育士の賃金を挙げ、保育士の確保を図るほうが、経済にも多くな影響をあたえる。(同じ予算を使うなら)こうしたところに使ったほうが合理的」と指摘しました。
※平成31(2019)年度予算に含まれる幼児教育無償化経費のうち、所得割課税額16万9000円超、平均年収640万円超の方の無償化に当てられる金額と全体無償化対象経費に対する比率は、保育所等で2315億円(全体では4656億円。占める割合は49.7%)、幼稚園等で958億円(全体では2486億円、占める割合は約38%)。
※保育所職員の従業員数、保育士の平均年間賃金額、全産業との差額は、2017年で総数約37万人、年額342.1万円、全産業は491.2万円、差は約149万円。保育士の約9割以上が女性あることから、女性の場合だと339.7万円、全産業は377.8万円、差は約38万円。
消費税に関連してプレミアム商品券に 1723億円、ポイント還元に2798億円、合計4500億円あまりの予算が使われているとして、その中の間接経費、直接消費者のメリットにならない額についてただすと、プレミアム商品券の場合、地方公共団体が事務を行う、その事務費として、498億円(1723億円に対し29%)、ポイント還元では2798億円が(1)消費者へのポイント付与として1786億円(2)中小・小規模事業者の端末導入や費用手数料の補助として329億円(3)広報・システム準備費として683億円(占める割合は24%)だと答弁が有りました。
これに対して枝野代表は、「本当にこれが合理的なお金の使い方なのか。こんなところにお金を掛けるのであれば、そもそも消費税を今、無理して上げる必要がないのではないかと」と指摘しました。
今井議員は、(1)桜田大臣の資質(2)女性への暴力根絶の姿勢(3)北方領土問題――について質問。自民党議員が女性への乱暴を準強制性交容疑として告訴された問題をめぐっては、「女性の人権を蹂躙(じゅうりん)する大きな事案だ。刑法犯の疑いがあり、警察は被害届を受理している。本人もある程度認めて示談に持ち込もうとしている。これを自民党は離党届を受理するという、考えられない甘い対応をしている」と厳しく非難し、「こうした事案に厳しい姿勢をすることが女性活躍を進める、女性の権利を守る政府の姿勢ではないのか」と政府の見解をただしました。これに対し安倍総理は「女性に対する暴力は重大な人権侵害であり決して許される行為ではない」と述べる一方、今回の事案に関しては「現在警察による捜査が行われていると承知している。政府として個別の事案に応えるのは差し控えたい」、片山大臣も「捜査を行っている事態であり、コメントは差し控えたい」と消極的な答弁にとどまりました。
逢坂議員は毎月勤労統計問題で、2015年3月31日に姉崎元総理秘書官が厚労省の姉崎統計情報部長を官邸に呼んで「毎月勤労統計について個人的問題意識」「(統計手法の見直しは)最終的には厚労省の問題だが、専門家の意見も聞いて考えられたらどうなのかと」と伝えたことに対し、姉崎統計部長が「個人的かどうかは分からないが秘書官のコメントだと受け止めた」「以前から(中江秘書と)同じような問題意識を持っていたので指示を受けたと認識はしなかった」などと発言していることに言及。「中江さんの話を受け、普段から私も考えていたのでそのことと合わせて検討会を立ち上げたというのが当たり前の答弁のように思うが、なぜ中江さんのところだけ遮断するのか。個人的問題意識だということも分からないで、『検討したらいかがですか』と言われたら、『検討します』とか『しません』とか、こういうことになったというが当たり前のこと。だからそこに不自然さがある」と指摘しました。