衆院予算委員会で20日、「外交・防衛・内外の諸情勢」に関する集中審議が開かれ、立憲民主党・無所属フォーラムから本多平直、山尾志桜里、長妻昭、江田憲司各議員が質問に立ちました(写真上は、質問する本多議員)。
本多議員は、(1)辺野古新基地建設問題、軟弱地盤、投入土砂の性質、活断層の存在、(2)自衛隊募集についての自治体の協力――などについて質問しました。
辺野古新基地の建設予定の海底に活断層がある可能性が指摘されていることについて、政府が行った平成25(2013)年のシュワブ地質調査でも疑いが指摘されているため、調査したほうが良いのではないかと質問。
岩屋毅防衛大臣は、「地震調査研究推進本部」の調査結果やデータベース、「活断層データベース」、「活断層詳細デジタルマップ」を挙げ「これら権威のある文献等において、辺野古沿岸域における活断層の存在を示す記載がないことを確認している」として調査に否定的な見解を示しました。
本多議員は、「そのことは踏まえてお聞き(質問)している。今(活断層であると)確定していないので、そういう図鑑やデータマップには載っていない。しかし政府の中で疑いがあるというので調べたほうがいい」と指摘しました。
また、安倍総理が憲法改正の理由として講演などで何度も話をしている「お父さんは憲法違反なの?」と涙を流した自衛官の子どもがいるという話が実話かどうかについて、14日の予算委員会で本多議員が質問したことを改めて取り上げました。本多議員は、「こうした話が憲法改正の理由になること自体がとんでもなくおかしい。何かあったら、その子に説明をしたり、その学校であったことを解決していくことが先。こうした子がいるから憲法改正が必要だなどという情緒論みたいな話は問題」と改めて指摘しました。
山尾議員は、ポイント業者やスマホゲーム運営事業者などに対する捜査のための情報提供について質問しました。
TUTAYA(ツタヤ)事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社のTカードやLINE株式会社に対する捜査機関からのユーザー情報開示などを取り上げ、海外と同様に個々の企業がプライバシーポリシーを顧客に公開し明確していく時期だと指摘。ビックデータで捜査に使いたいのであればルールをきちんと作る必要があり、そのルールの範囲内にある民間事業者のポリシーは尊重すべきと述べました。山本順三国家公安委員会委員長は一般的な手続きの説明をするだけで、山尾議員の指摘に対して明言を避けました。
またスマホゲーム運営事業者に対しての位置情報の提供についても同様だと指摘。東京新聞(1月14日)に掲載された捜査機関が令状なしにスマホゲーム会社から位置情報を取得しているのではないかとの記事に関連して、石田真敏総務大臣はスマホゲーム運営事業者は電気通信事業者にはあたらないと答弁。
山尾議員は、通信の秘密という憲法上の権利は重要だとして、提供者に対するルールではなく、情報の種類に着目して規定すべきだと提案。これに対して石田総務大臣は「個別の事案についてお答えする立場にはない」と答えました。山尾議員は、「個人情報を適切に保護するためにガイドラインを出している所管の大臣が放置しておくという立場に立つのは納得ができない」と語りました。
今回の一連の質問の意図について「個人情報、ガイドライン、憲法13条(個人の尊重[尊厳]、幸福追求権及び公共の福祉)との関係で問題が指摘されている捜査手法だから聞いている。具体的な手口を聞いて、犯罪者を利するかのような言い方をするのは不本意」だとして国民にとって意味のない答弁だと指摘しました。
長妻議員は、マイキン(毎月勤労統計)調査問題をめぐり調査手法の変更の経緯等について質問。マイキンの調査対象事業所の入れ替え方法については、2015年3月31日に当時の中江総理秘書官が厚労省の宮野総括審議官と姉崎統計情報部長に「問題意識」を伝えて以後、マイキンの改善に関する検討会が設置、8月7日の第5回会議では検討会の方向性として「総入れ替え方式で行うことが適当である」(阿部正浩検討会座長)としていたものが、9月16日の第6回会議では阿部座長が欠席のなか姉崎統計情報部長が「部分入れ替えを検討したい」と打ち出し、検討会は結論がまとまらないまま18年1月からの部分入れ替え方式に変更となったことを問題視。調査方式の変更の経緯については新たに、阿部座長が第6回会議の2日前の9月14日に「『委員ではない人から変更の示唆があった』と厚労省から当時連絡があった旨発言していることから、長妻議員は「委員ではない」中江総理秘書官ら官邸サイドと厚労省とでマイキン統計をめぐりどのようなやり取りがあったのかの資料およびこの連絡のメールの提出を求めました。
2018年からベンチマーク(ウエイト)更新で賃金指数にさかのぼり三角補正をしなくなった理由について、根本厚労大臣が「統計委員会の議論も踏まえながら、ローテーションサンプル方式を導入した」と説明していることから、長妻議員は導入後の2018年夏に議論をしているのは承知しているが、事前に議論した形跡がないと指摘。2016年11月28日の「諮問にある」とする根本厚労大臣の答弁に対し、石田総務大臣は「諮問には含まれていない」と見解が異なったため審議は一時中断、長妻議員は後日統一見解を示すよう求めました。
江田議員は、(1)辺野古移設と県民投票(2)日露北方領土交渉――等について取り上げ、政府の見解をただしました。
江田議員は「辺野古米軍基地建設の埋立ての賛否を問う県民投票」について、24日に投票が迫るなか、菅官房長官が記者会見で「どういう結果でも移設を進めるか」との問いに対し「基本的にはそういう考えだ」と発言したことに言及。「官房長官と同じ考え方ということで良いか」と尋ねたのに対し、安倍総理は「県民投票については地方自治体での独自の条例にかかわること。政府として見解を差し控える」と答弁を避けました。
江田議員は、普天間移設を決定したときの官邸の端っこにいた当事者の一人として苦しい立場にあるとした上で、1996年4月に橋本総理が米政府と米軍普天間基地の全面返還で合意したときから20年以上が経過したなかで「安全保障環境は5年、10年スパンで変わる。海兵隊の抑止力の捉え方も変わってくる。何よりも2000年代、普天間基地移設を進めた米国の国務省のキャンベルさんは『米軍は決して地元から歓迎されないところに基地を置くことはない』と言われている」などと指摘。「いろいろなことを勘案して判断されるのが総理大臣の役目だと思う」と求めました。
日露北方領土交渉をめぐっては、安倍総理とプーチン大統領の会談実績25回(第1次政権含め)のうち日本での開催がわずか1回であるのに対しロシアで10回、第三国で14回であることに触れ、「常識的に考えて首脳外交は相互訪問が原則だ。朝貢外交とは言わないが、交渉のテーブルにつく前に負けだ」と問題視。「大切なのは結果を出すこと」だと強弁する安倍総理に対し、「プーチン大統領は国際違反でクリミアを併合している。一方で法と正義を唱えて領土は返ってくるのか。日本での長門会談(山口県)では共同声明はおろかプレスリリース1枚で『領土』の二文字もないことが象徴している。どんどん後退している。二島返還すら危ぶまれているのが現状だ」「総理が在任中に解決したいという思いはあるかもしれないが、国益全体にかかわる話だ。押してダメなら引いてみるという勇気を。そのタイミングでないときは待ちの姿勢が求められている」と述べました。