党ジェンダー平等推進本部(本部長:神本美恵子参院議員)は30日、国会内で会議を開き、精神福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏から「性犯罪治療の現場から―いちばん身近な性犯罪、痴漢をなくすために―」をテーマに講演を聴きました。斉藤氏の専門は加害者臨床で、著書に「男が痴漢になる理由」「万引き依存症」等があります。
斉藤氏は、「加害者は4年制大学卒の妻子あり、サラリーマンの男性が多い」「被害者像としては、服装の露出が多い、派手な女性ではなく、泣き寝入りしそうな人が選ばれる」などと話し、日本では性犯罪の加害者、被害者双方に対するイメージが偏っていると指摘。「性犯罪は押さえがたい欲求による衝動的なものよりも、意図的に被害者と状況を選ぶ選択的行動が多い」「日本の性犯罪で最も多いのは痴漢、盗撮で、性犯罪は表面化しづらく暗数が多い」「逮捕されなければ行動を修正することは困難だ」などと性犯罪の実態を説明しました。その上で、長年にわたり取り組んでいる再犯防止のプログラム立ち上げの背景や内容を紹介、再犯防止に重要な視点として(1)加害者臨床にもEBP(エビデンスに基づく実践)のパラダイムの導入を(2)刑罰や監視によるアプローチの限界と、医療モデル・教育モデル・社会福祉モデルを統合的に加えたアプローチの普遍化(3)関わる援助者が性暴力に対する正しい知識と認識を持つこと(性暴力撲滅への啓発活動)――等を挙げました。
斉藤氏はまた、性犯罪者は、「目が合った女性は痴漢されたいと思っている人である(女性からの性的挑発)」「露出の多い女性は性欲が強いはずだ(偏った決めつけ)」「女性専用車両に乗っていない女性は、痴漢されたいと思っている(願望の投影)」といった認知の歪みがあるとして、事前に拒絶の意思を表す物を身につけること、公共交通機関内での痴漢犯罪を抑止するためのツール「痴漢抑止バッジデザイン」の効果も大きいと述べました。
質疑応答では、治療者が少ない理由や、性犯罪者の住所などの個人情報が公開されるよう定めたミーガン法や常習者に対してGPS端末を付けさせることへのリスク等、さまざまな観点から質問が上がりました。