2018年10月24日
奥尻島で慰霊碑「時空翔」に献花、また島内の高校や病院、産業などを視察 枝野代表ら
枝野幸男代表と逢坂誠二衆院議員、福原賢孝元北海道議らは22、23日と北海道南西部に位置する島、北海道奥尻町を訪問しました(写真上は、慰霊碑「時空翔」で説明を受ける枝野代表ら)。
島に着いた枝野代表はまず、奥尻島最南端の青苗地区にある、北海道南西沖地震で犠牲になった方々の慰霊碑であり、未来の奥尻を想う大切な空間でもある「時空翔」に花を供えました。
1993年に発生した地震による津波で壊滅的な被害を受けた青苗地区は、徳洋記念緑地公園として生まれ変わり、中央の小高い丘に慰霊碑「時空翔」が建立されました。
次に奥尻町役場にて新村卓実町長、田中敦詞副町長と懇談。震災被害の話や現在の島の状況などの話をしました。
その後、新村町長、田中副町長、島内の観光協会や商工会の会長、特別養護老人ホームの施設長、病院の院長、漁業協同組合の理事、交通安全協会長、町議会議員らと意見交換をしました。
社会福祉士の方からは、維持したいが民間求人では集まりにくい。またスタッフを研修で島外に行かせたいが人手不足でその余裕もない。また道内全体で社会福祉士の資格を勉強している学生も少ないといった現状の説明がありました。
観光協会長からは、航空運賃の高さがボトルネックになっていることや、大型クルーズ船の就航や短期移住ができるようになると経済が活性化するといった話がありました。
枝野代表は懇談前に自動車整備工場が町営であると聞き驚いたと話し、逢坂議員からは、町営工場の話は官がやるべき仕事の話としていい例になっていると応えました。その上で枝野代表から、行政の役割や交付金のあり方について見直したいと発言がありました。
23日は、奥尻高等学校の視察から始まりました。公務で島外に出張中の俵谷俊彦校長に代わり、井上壮紀教頭と町教育委員会の石島孝司教育長から高校の概要と特徴について話を聞き、その後校内を見学しました。
奥尻高等学校は、1975年に道立江差高等学校の奥尻分校として開校。2016年に道立から町立に移管、その翌年には島内2つの中学校が統合し高校の敷地内に新設された奥尻中学校との連携型中高一貫教育も始まりました。
高校では、難関大学を目指す生徒への支援策としてインターネットを利用し現役大学生から受験勉強や進路相談のアドバイスを受けられるシステム「Wifiニーネー」や、地域活性化をテーマに最先端の研究をしている大学や上場企業との連携・共同事業の構築、海に囲まれた環境であることからダイビングの資格取得や国家資格「潜水士」の資格に挑戦することができるプログラムなど、島のメリットを活かしながら、デメリットを解消するための工夫をしています。
さらにクラウドファンディングを利用し部活動の遠征費を集めたり、さらにそれを発展させるため、部活動を支える部活動「オクシリイノベーション事業部」という部活では、新しいビジネスプランを成功させ生徒会活動補助費を得るための活動をしています。
次に訪問した奥尻町国民健康保険病院では、竹下知良院長から離島医療の現状と課題について話がありました。病院は築後43年が経過し施設が老朽化、建て替えを検討していますが、役場庁舎や高校寄宿舎、消防署等、他の公共施設の整備もあり財源確保が課題となっていると話がありました。また、医師や看護師の不足から医療スタッフの確保、人口減少の影響から患者数が減少することにより維持管理費が増加している問題、離島型遠隔診療制度についての提起などがありました。
その後、地熱発電所を視察。越森石油電器商会がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の試掘後、未活用の町所有の井戸を有償で借り受け活用。北海道電力に年間約149万キロワットを売電。年間6400万円の売電収入を見込んでおり、発電で排出される温水の2次利用も検討中とのこと。
さらに奥尻町あわび種苗育成センターを訪問。温泉水を利用し、冬期の水温低下時でもあわびの飼育適水温度を保持することで成長促進を可能としています。奥尻島は天然あわび種苗供給地として昭和30(1955)年代以降、種苗用アワビを漁獲、道内外に出荷していましたが、漁獲量の激減や南西沖地震もあり、母貝から採卵し育成する「種苗育成センター」を設置しました。
最後に奥尻ワイナリーを視察。地元の建設会社が公共事業が減る中、島内に新たな産業として遊休農地を活用し2001年頃からブドウを栽培し、2007年には栽培・醸造・販売を手掛ける「奥尻ワイナリー」を設立。ブドウ栽培から製造まで一貫して取り組むのは離島では初とのこと。日本海の潮風を受けて育ったブドウはミネラルが豊富で独特の味わいがあるということです。
視察を終えた枝野代表は記者団の取材に応じ、5月に訪問した沖縄県の宮古島に続き今回の奥尻島を訪問した狙いについて問われ、「人口減少地域であるとか、あるいはさまざまな意味で条件が悪いとされている地域は離島以外にもたくさんありますが、離島は海に囲まれているという特性もあり、厳しい側面が非常に見えやすく、顕著に現れるのではないかと思っています。そうした地域でしっかりと将来に希望を見て持てるような国作りをしていくことが、それ以外の条件の悪い地域にとっても底上げに繋がっていくのではないか」と話しました。
さらに、「実際に車検のできる自動車整備工場がないために町営でやらざるを得ないという実態や、看護師さんや介護職員が足りないということは全国的な問題でもありますが、特に島であるということで、さらにその難しさがより大きくなっているなど、我々がしっかりと認識をして速やかに対応するべきテーマ、あるいは政治や行政とは何なのか、何をしなければならないのかという本質を突きつけた、そういう視察だった」と語りました。