2020年8月26日
共同会派厚労部会で保坂世田谷区長からヒアリング
共同会派の厚生労働部会は25日国会内で会議を開き、保坂展人世田谷区長から世田谷区におけるPCR検査体制について話を聞きました。ヒアリングでは、世田谷区の新たな対策として24日に発表した (1)感染症の疑いがある有症状の方や濃厚接触者のPCR検査の拡充(1日300件程度から600件程度へ)(2) 発熱など症状の有無にかかわらず社会的インフラを継続的に維持するためのPCR検査(社会的検査:1日1000人程度)――の実施体制等について説明を受けた後、質疑応答が行われました。
保坂区長はまず、世田谷区のPCR検査数(疑い例への対応)について、当初は保健所の電話回線も少ないなか健康不安の方などから電話が殺到、当時は「37.5度以上の発熱が4日以上続く方」という目安もあり、検査につながらないまま重症化し亡くなってしまった痛ましい事例もあったことから、コロナ治療にあたる現場の病院や区医師会、世田谷保健所運営のPCR検査センターを4月に作り、5月には保険診療(世田谷区医師会)やドライブスルー検査(玉川医師会)、CTスキャンを組み合わせた検査(世田谷区医師会)などを開始し、1日あたりの検査数は、第2波が来るまでは概ね最大100件程度で推移していたと解説。その後200から300件程度となり、直近の数字では8月3日の332件が最大だと述べました。
その上で、24日に発表した2つの取り組みについては、7月27日に開いた区の新型コロナウイルス対策本部での有識者との意見交換会の場で、東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授から提案があったものだと説明。特に、集団感染などが起きやすい介護事業所や保育園・幼稚園で働く職員ら約2万3千人を対象に行う社会的検査については、検査能力を向上させるため、複数人の検体を混ぜてまとめて検査し、陰性の場合は全員を陰性と判断する「プール方式」を導入する予定で、保健所や医師会の負担を軽減すべく、直接保健所が介在しない形でのフレームを作ったのが特徴だと話しました。
「日本も世界も、亡くなられた方の半数が院内感染と施設内感染によるもの。介護の現場で働く皆さんから『安心して継続して働ける検査体制を作ってほしい』との要望も受けてきた。人との接触を避けるのが難しい仕事は他にもあるが、まずは高齢者施設と保育施設から始めてみようということだ」と述べ、初回の検査費用約4億1400万円を盛り込んだ補正予算案を9月の区議会定例会に提出すると表明。同月中頃から検査の開始を目指し、プール方式については東大先端科学技術研究センターによる実証実験で効果を確認でき次第、10月をめどに導入していく考えを示しました。
「新型コロナウイルス感染症対策は、世界同時のセンター試験と言った人がいるが、世界中の成功例に学んでいく以外ない。世界を見渡せば社会的検査は当たり前」だと意義を強調。野党にはPCR検査の拡充に向けた後押しをとあらためて求めました。
その後の質疑応答では、「風穴を開けていただき嬉しく思う」など、発言した全ての議員が世田谷区の取り組みを評価。今後の方針や課題、こうした動きを各地に広げていくために必要なこと、あるいは妨げになっていることは何かなど、具体的な質問や意見、提起が多数上がりました。「感染症法の枠組みでは保健所を使う手法になる。感染症法の枠組みを外し、全面的にPCR検査を展開する枠組みをつくるべきではないか」との提起には、保坂区長は「コロナの特性はこれまでの感染症と違う。コロナの特性に合わせた効果的な検査が可能になる法体系が必要。現状の法体系にコロナを充てているが漏れている。コロナの実態にあった法体系に作り直すべき」だと同調。早急に国会を開会し、こうした議論を進めていくべきとの認識を共有しました。
会議の後半は、新型コロナウイルス対策(厚生労働分野)の状況について、厚労省、内閣官房等からヒアリングを行いました。