衆院国土交通委員会で29日午前、閉会中審査が行われ、共同会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」から矢上雅義、荒井聰両議員が質問に立ち、令和2年7月豪雨等について政府の見解をただしました。
矢上議員は冒頭、今回の豪雨災害で亡くなられた方への哀悼の意を示し、被災された方々にお見舞いの言葉を述べるとともに、行方不明の皆さまの早期発見を願いました。そして、ボランティアの方、救助隊を含む行政関係者、医療、電気、ガスなどインフラの整備の関係者に対し感謝の意を述べました。
その上で、(1)ペット同伴避難の自治体向けガイドライン作成(2)ダムの事前放流と水利権者との協議(3)公費解体の要件緩和と罹災証明の周知徹底(4)代行バスによる通学通勤支援への財政支援(5)在宅避難や車中泊の被災者にも支援物資や情報提供の徹底(6)地方交付税(復興資金)の前倒し支給――などについて政府をただしました。
ペット同伴避難について、動物愛護の観点からも環境省が作成する『災害時におけるペットの救護ガイドライン』で飼い主がペットと同行し安全な場所まで避難する「同行避難」が推奨されていますが、同行避難しても、避難所で一緒に過ごす「同伴避難」については、避難所にペットになじまない方やアレルギーの方、臭いなどを気にする方などもいることから、車中泊やテント泊などをする人が多いと説明。そういった方は、行方不明ではないものの、行政として所在が把握できない状況にあると指摘し、今後、避難所でペット同伴が可能となるような住み分けについて自治体向けのガイドラインを作成する考えがあるかただしました。
環境省は、平成30年7月豪雨の際にペット連れの被災者専用の避難所を設けた事例があることを紹介。一方で、ペット連れ被災者専用の避難場所は災害の状況や避難所の施設条件等によって左右されることから、まずは受け入れ対応が適切に行われるように、避難所運営の好事例等を収集し紹介することなどから進めていきたいと答えました。
公費解体については、前提として家屋内の家財道具等をあらかじめ処分しておく必要がありますが、コロナ禍でのボランティア不足をはじめ、高齢化や地域の人口減少などにより残ったままの家屋が多いと指摘。特例を認めるよう求めました。
環境省は、内閣府や国交省と連携し搬出支援のため、ボランティア参加を促す施策や地元企業に委託することなどの準備を進めていると説明。さらに指摘したニーズもあるとの認識を示した上で、市町村で廃棄する花材を搬出し、その後家屋の解体を行った場合も、災害等廃棄物処理事業費補助金の対象とする旨の答弁がありました。
また、ダムの事前放流については利水者とも調整の上、事前放流の抜本的な拡大に取り組んでいること、罹災証明については引き続き周知徹底を図ること、代行バスによる通学通勤支援への財政支援については検討してくこと、地域公共交通の持続可能性については重要な課題と認識し前向きに検討すること、在宅避難者などへの支援物資提供については、高齢者や障がい者といった配慮が必要な方から優先的に状況把握してく体制の構築をすすめていること、また、マンパワー不足を補うため他の自治体からの応援職員の派遣など支援強化に努めていること、)地方交付税についてはこれまでに8県内47市町村に対し繰り上げ交付を行い、今後も財政運営に支障が生じないように適切に対応していく――との答弁がありました。
荒井議員は、(1)GoToトラベルキャンペーン(2)2020年7月の九州豪雨被害・治水対策――等について質問。「GoToトラベルキャンペーン」をめぐっては、政府の方針が二転三転し、実施にあたってのさまざまな判断基準も不明確明確であり、各地で感染の蔓延度が上がっているなか非常にリスクを伴うものだとあらためて批判。国家行政組織法の規定により、国土行政の最終責任者は赤羽大臣であり総理大臣といえども命令、指示する権限はないとして、最終的な責任者だという自覚と、負って立つという本気度が大事だと述べました。
観光需要喚起策としては、自身の地元の北海道をはじめ、全国の約40の道府県で地域の事情を踏まえた割引やキャンペーンを実施していると紹介し、「それぞれの地域の事情を踏まえたやり方を活用するという発想がなぜなかったのか」と指摘。これに対し赤羽大臣は、「47都道府県それぞれ事務局を立てて、運営事務費を計上していただくよりも、国で一括した方が効率的」「観光だけを考えれば、ブロック単位だけで誘客力が限られるとして、できるだけ多くの都市からお招きしたいという声もあった。県民割引道民割引やブロック割引と併用していただくことも歓迎すべきもの。ウィズコロナの新しい時代の観光のあり方を確立、定着していきたい」などと答えました。
荒井議員は、2000億円という多額の事務費の問題にも触れ、「お金の使い方がずさんだ」と批判。また、人工知能(AI)や半導体、光触媒など多彩な技術を応用した、大学発の技術を感染対策に活用するという取り組みを紹介した同日の一部報道を受け、布マスク約8000万枚の追加配布に約247億円の経費を使うのであれば、こうした新たな産業づくりに充てるべきだと主張しました。
断続的に強い雨の降った山形県内で28日夜、一級河川の最上川で氾濫が発生したことに関連し、「東北で最大の利水ダム・水窪ダムが治水に貢献していればうまくいったのではないか。2月に国交省が打ち出した『流域治水』(貯水池の整備や避難体制の強化など、流域の自治体や住民らと連携した取り組み)という考え方は画期的な治水政策の転換だと思ったが、それがまだうまく使われていないのではないか。治水事業は上流でダムを作ってもメリットを享受するのは遠く離れた下流都市。(用地を提供する)上流でメリットを受けられる仕組みを作らない限り、本当の流域治水にならない」と指摘しました。