参院決算委員会で25日、平成30年度(2018年度)決算等に関し准総括質疑が行われ、共同会派「立憲・国民.新緑風会・社民」から勝部賢志、小沼巧両議員らが質問に立ちました。

 勝部議員は、(1) 黒川東京高検検事長辞任問題(2)高齢者介護・障害者施設等における感染要望対策(3)「9月入学」問題――について質問。賭けマージャンで辞職した黒川検事長の処分をめぐっては、国家公務員法の懲戒処分より軽い「訓告」とした理由について、安倍総理は22日、「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」などと答弁しましたが、本日の一部報道によると「法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく『訓告』となった」とあることから、この齟齬(そご)についてただしました。

 勝部議員は、森法務大臣の「最終的には内閣で決定がなされたものを、私が検事総長にこういった処分が相当ではないかとお伝えした」との発言に言及。「内閣や、法務省で決めたものがこの処分、決定の内容だと受け取れるが、検事総長には何と伝えたのか」と尋ねたところ、森法務大臣は「監督者である検事総長に対し、調査結果とともに『法務省としては勧告が相当』と考える旨を伝えた」「総理の答弁とに矛盾はない。監督上の措置である訓告については、その処分の主体は検事総長であり、私、法務大臣からは調査結果と意見を申し上げた。私の調査結果、考え方、意見を受けた上で、検事総長から『検事総長としても訓告が相当であるの判断をする』との報告があり、私はそれを了承した」と答えました。勝部議員は「形式上は最終的に検事総長がそういう判断をしたとおっしゃったが、経過のなかで、安倍総理はその判断すべてを検事総長が行ったかのような答弁をされており、そこに多くの国民の皆さんも疑義を抱いている」と指摘。安倍総理の発言を問題視するとともに、今回の処分が適切であったかを判断するためにも同委員会として調査を行うよう要求しました。委員長は後刻理事会で協議するとしました。

 勝部議員は、高齢者介護・障害者施設等に対しては、重篤化やクラスター発生を防ぐためにも財政的支援が必要だと主張。平時から人材不足が課題であるなか、待遇改善やマンパワーを確保するための支援策等を求めました。

 「9月入学」問題については、文部科学省から主な懸念事項を確認した上で、現場等からさまざまな慎重論があることをどう受け止めるかを質問。これに対し萩生田文部科学大臣は、「秋季入学新学期制については、学校の臨時休業がさらに長期化をする事態を想定した際の対応案の選択肢の1つとしてさまざまな声が上がっていると承知している。文科省としては早期収束に向けて感染拡大防止の取り組みを徹底した上で、子どもの学習の保障のための取り組みを一層しっかり進めていくことが重要だと考える。秋季入学は文科省だけで完結する問題ではなく、さまざまな課題をかかえ、社会全体に影響を及ぼすものであり各方面との調整、検討が必要な案件だ」「いま一番心配しているのは最終学年の皆さんの学びを3月までにどうやって保障するかということ。私自身は最初から慎重な対応をしているつもり。子どもたちのために何が一番かをしっかり考えて対応していきたい」などと答えました。

 勝部議員は「9月入学そのものの検討をするのであれば、こうした緊急事態ではなく、時間をかけてしっかりとした体制であらためてやった方がいい」と要望。萩生田文科相は「例えば第2波が来ないとも限らないというなか、幅広く検討していかなければならない。どちらかというと報道先行で賛否が分かれて少し大きな騒ぎになっていることに戸惑いを感じている。子どもたちのために何が大事かを第一に考えて対応していきたい」と強調しました。

 小沼議員は、(1)検察庁法改正案(2)中心市街地活性化ソフト事業への特別交付金(3)予算総則に定める「移用」――について質問しました。

 小沼議員は、まず検察官の勤務延長規定について解釈変更を行ったことについてただすと、森法務大臣は法令の解釈や変更について、「必ずしも決まった手続や方式があるわけではない」とした上で、「立法当時はダイレクトに答弁したものはない」と述べ、「有権解釈の第一義的な解釈者である検察庁法を所管する法務省において解釈変更を行った」と答弁しました。

 次に、第1次安倍政権下の2006年に出された外務省職員による賭博に関する質問主意書(第165国会225号)の「賭け麻雀は賭博に該当するか」との質問に「刑法の賭博罪が成立し得る」との答弁があることを引用し、黒川氏を訓告処分とした理由について説明を求めました。森大臣は、「事案の内容等諸般の事情を総合的に考慮し処分した」と述べ、法務省における先例として、サッカー賭博、野球賭博で複数回の賭博で合計百数十万円の利益を得た者など挙げ、「こうした先例を考慮した上で決めた」と説明しました。

 さらに小沼議員は、(1)処分に至る調査が不十分であり、立場が高い者は処分を重くすべき(2)辞職届を受理せずに一旦保留とし検察庁法第23条第2項第2号の適格に関する検察官適格審査会の審査に基づき調査することができた(3)調査によって犯罪があると思料するに至ったときに退職金支払の差止め処分ができる――ことを挙げ、再調査を求めました。森大臣は、賭博罪については「検察、捜査機関において判断すべきもの」「法務大臣から答弁は差し控えさせていただきたい」などと述べ、「今回の処分を決するに必要な調査を行った」「先例として同様の地位に基づく者の処分等も踏まえて処分を決定した」と述べるにとどまりました。

 また、今回の一連の国会審議について森大臣の検察官の定年延長に対する基準の具体的なイメージがなく答弁できていなかったと指摘。本来であれば、大臣が必要性を示し、国会の場での「正々堂々として議論をすべき」であり、説明責任を果たすべき責務があったと強調しました。その上で「かかる覚悟すら感じられぬ法務大臣の今の答弁については、検察の信頼言うに及ばず、法案作成に必死になってあたって連日連夜働いてきた法務省の皆さんの働きもそれも無駄にするものであるかと、そのように感じる」と述べ、信頼を回復する決心を求めました。森大臣は「答弁に呼ばれた場合には参りまして、あらゆる機会を捉えて丁寧にご説明をしてきた」「国民に対して丁寧にご説明をし、法務行政を担ってまいりたい」と答弁書を読み上げるにとどまりました。

 中心市街地活性化については、小沼議員自身が2014年の法律改正時、法案作成担当責任者の総括補佐であり、「令和元年度会計検査年報」に中心市街地活性化の現状について厳しい指摘があることから、「政策をより良くしていくために積極的な議論をしていきたい」として取り上げました。中心市街地活性化について国の支援策の約6割が活用されていない現状についての認識を問うと、高市総務大臣は、地域の実情に応じて多様な取り組みがなされており、多くの自治体で活用されて、中心市街地の活性化に一定程度つながっていると述べました。小沼議員は、地方の声も伺いながら、地域の実情に合った形で事業が有効に活用されるように相談にも乗り、積極的な支援を行うと応えました。

 予算総則による「移用」について麻生財務大臣は、1955年に防衛省と大蔵省の間で、省庁間の移用(流用)が行われていたことがあると説明。国会の決議の範囲内で行えることから、小沼議員は第1次補正予算にある環境省とか国交省に計上されている1.6兆円のいわゆるGoToキャンペーン事業について、「必要であることは重々承知ですが、少なくとも今じゃないだろう」として、持続化給付金や補助金に移し替えることができるのではないかと指摘しました。

 麻生大臣は、今日で非常事態宣言が全面解除される段階であることから「目の付けどころとしては正しいとは思いますけれども、時期としてちょっと今からと言われると、その時期に関してはいろいろご異論が出てくるところ、通産省は特に反対するのではないか」と答弁しました。

 小沼議員はさらに、政府が全世帯に布マスクを配布する、いわゆるアベノマスクについて、予算計上額に対して執行が少なかったとして、消毒液、アルコール、医療用ガウンなどの不足に対して、経産省の補助事業とあわせて行うような議論をすべきではないかと提案。麻生大臣は、「柔軟に考えられる、非常事態ですから。そういったものは考えた方がいいのではないか」「これは経産省と厚労省の話で、財務省が間に立つつもりはありません」と答弁しました。