衆院本会議で16日、「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案」の採決が行われ、与党などの賛成多数で可決、参院に送付されました。採決に先立ち、共同会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」を代表して亀井亜紀子議員が反対の立場で討論に立ちました。
本改正案は、(1)人工知能(AI)やビッグデータなどの最先端の技術を活用した「スーパーシティ」構想の実現に向けた制度の整備、(2)地域限定型規制のサンドボックス制度の創設(3)特区民泊における欠格事由(暴力団排除規定等)等の整備――を行うものです。
冒頭、亀井議員は、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方への哀悼の意を示すとともに、療養中の方々にお見舞いの言葉を述べました。
反対の理由として、次の3点を挙げました。
(1)国家戦略特区の選定過程が不透明
事業の公募とは形だけではないか、一部の人々の利権に結びついているのではないか、という疑いがある。例えば「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会の座長は竹中平蔵氏であり、同氏は株式会社パソナグループ取締役会長、オリックス株式会社社外取締役です。パソナは国家戦略特区の大阪、神奈川等で外国人家事代行サービスを展開し、同じく特区の兵庫県養父市にはオリックス農業が参入している。利害関係者が有識者懇談会の座長を務めることは、国家戦略特区の信頼性を大きく損なうもの。大臣には竹中氏の交代を強く求める。
(2)国、地方公共団体等が事業者からデータ提供を求められた場合、プライバシーが侵害されないか、住民の合意形成の過程が不透明
国家戦略特別区域会議のメンバーは、担当大臣、地方公共団体の長、特定事業を実施すると見込まれる者で組織され、計画段階に住民代表はいない。地方公共団体は家族構成、収入、納税、健康保険料等、幅広い個人情報を保有しており、どの段階で住民合意を得るのか、サービスを希望しない住民は個別に情報提供を拒否できるのか、知らぬ間に情報が提供されてしまわないか、法案審議では明らかにならなかった。
(3)国と地方との関係、地方自治の独立性を変えてしまう恐れがある
昨年国会に提出されたスーパーシティ法案は廃案になったが、提出前に条例による規制緩和は法律の範囲内で条例を制定するという憲法94条に抵触することから見直された。本法案でスーパーシティ/スマートシティの相互運用性の確保という形に変わり、スーパーシティと名付けた国家戦略特区で進める規制緩和を全国のスマートシティに横展開できるようになっているが、独自のサービスを提供する自治体にどんな影響があるのか、本来、国と地方の協議の場等で意見を聞くべき。
さらに亀井議員は、「未来都市をつくるというこの法案はわからないことが多く、まだまだ論点が残っている。米国では自動運転車両による死亡事故が発生し和解が成立したが、誰が法的責任を負うべきかというルールは未整備のまま。日本でも実証実験を進めるならルールが必要」と話し、「トヨタとNTTは静岡県裾野市でスマートシティ構想を進めているが、国家戦略特区への申請はなく、どんな未来都市をつくるのか、この法律がなくても実現できるのか、知りたいところだが、緊急事態宣言下では参考人招致もできない。そうした観点からも本日の採決は拙速であり、本法案は不要不急である」と指摘して討論を終えました。