参院本会議で23日、安倍総理の施政方針演説に対する代表質問が行われ、立憲・国民.新緑風会・社民を代表して福山哲郎幹事長が登壇。(1)2閣僚の辞任(2)「桜を見る会」をめぐる問題(3)カジノ問題(4)関電金品受領問題(5)税収・消費税(6)気候変動対策(7)原発ゼロ基本法案とエネルギー政策(8)自衛隊中東派遣や北方領土問題、北朝鮮問題など外交・安全保障(9)介護、子ども・子育て(10)外国人労働者問題(11)公立・公的病院の再編・統廃合、公共交通、地域の防災体制など地方自治関連――について取り上げ、安倍総理の見解をただしました。
質問の冒頭、福山幹事長は「子年は変化の多い年、新しい物事が始まる年などと言われ、政治では政変の年とも言われています」と語り、戦後6回の子年には総理辞任や内閣退陣があり、また日本で開催された3回のオリンピック・パラリンピックの年にも総理が後退したことを取り上げました。
質問では、施政方針演説で「桜を見る会」「カジノでの国会議員の逮捕」「河井前法務大臣夫妻の家宅捜索」などの疑惑・不祥事になぜ言及しなかったのか、さらに地方創生交付金を活用した移住者が既に県外に移住していた点などに触れ、その後、日本経済に関して「来年度予算の税収は過去最高となりました」と発言したことについて、「単なる見通しにすぎない」「昨年も見通しには届かず、下方修正している」と指摘、「国民をミスリードする表現」だと批判しました。
最後に「脱安倍政権を一つ一つ粘り強く実行する中で、令和の新しい社会のあり方を模索し、誰もが個人として尊重される多様性ある社会を創造し、未来に責任を果たす役割を担わせていただきたい」と述べ、質問を終えました。
福山幹事長の質問全文は以下のとおりです。
令和2年1月23日
施政方針演説に対する代表質問
立憲・国民.新緑風会・社民
福山 哲郎
立憲民主党の福山哲郎です。会派を代表して、安倍総理に質問いたします。
2020年、庚子(かのえね)の年が明けました。
子年は変化の多い年、新しい物事が始まる年などと言われ、政治では政変の年とも言われています。
戦後6回、子年がありました。1948年は片山、芦田両内閣が退陣。60年は岸総理が辞任。72年は佐藤総理が長期政権に終止符を打ちました。また、96年は村山総理が突然退陣を表明、2008年は福田総理が辞任されました。
また、オリンピックの年も同様でした。64年東京、72年札幌、98年長野、3回とも総理が交代しています。
昨年秋の内閣改造から、子年を迎えて安倍政権の潮目がそろそろ変わりつつあると感じているのは私だけではないような気がします。
昨日、衆議院本会議で、立憲民主党の枝野代表から、私たちが目指す社会、「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」「責任ある充実した政府」という、もう一つの政権の選択肢をお示ししました。
以下、質問に入ります。
<施政方針演説>
まずは冒頭、施政方針演説についてお尋ねします。
総理は施政方針演説で、自らに関係する桜を見る会、カジノでの国会議員の逮捕、河井前法務大臣夫妻の家宅捜索について、何も言及されませんでした。年が明ければ全てを国民が忘れるとでも思っていたのでしょうか。あまりにも不誠実で国民を馬鹿にしていると言わざるを得ません。なぜこれらの疑惑、不祥事に言及をされなかったのか、お答えください。
総理が高らかに読み上げた、地方創生交付金を活用した移住者は、何とすでに県外に移住していたということでした。驚きです。県外に出ていた事実を知っていて、演説されたのでしょうか。事実関係を伺います。
また、日本経済に関して「来年度予算の税収は過去最高となりました」と言い切られていますが、本当でしょうか。これは、単なる見通しにすぎないのではありませんか。現に、昨年も見通しには届かず、下方修正しているではありませんか。まさに国民をミスリードする表現です。
「5年連続の温室効果ガス削減の実現」と言う表現も極めて怪しいものです。基準年2013年というのは最も排出量が多い年であり、京都議定書の基準年である1990年度比では大きな削減にはなっていません。日本は2018年にやっと1990年当時の排出量をやや下回りました。英国では1990年比で2018年までになんと43.5%の排出削減を実現しています。決して現在の排出削減が国際的に胸をはれるようなものでは無いことは明らかです。
一事が万事、安倍政権は真実を国民には語ろうとはしません。
一昨年は、森友学園の文書改ざん、国会での虚偽答弁、加計学園問題、働き方関連法のデータ不備、防衛省の日報隠しなどが続きました。
昨年も「桜を見る会」について、総理は予算委員会から逃げまくり、招待者名簿の公開を拒否し、何と昨年分の名簿は国会で資料請求された1時間後にシュレッダーにかけられました。電子データについて「調査も開示もしない」の一点張りです。
安倍総理、私は昨年も「否認」という言葉を使って、同じことをこの本会議で言いました。
自らに向けられた批判をひたすら否認するばかりで積極的に検証を進めるそぶりすら見せない、安倍内閣の姿勢は悪い意味で一貫をしています。否認とは、精神分析用語で、不快な事実に直面した際に、圧倒的な証拠があるにもかかわらず、それを真実だと認めず、拒否することを言います。安倍政権の姿勢は「否認」そのものです。
残念ながら反省の色もありません。相変わらず誰も責任を取らず、丁寧に説明するとうそぶくばかりです。
<2閣僚の辞任>
2閣僚の辞任について伺います。
菅原 前経産大臣や河井 前法務大臣夫妻は、10月下旬にメディアの前で説明責任を果たしていきたいとコメントしました。しかし、3人とも、その後の二ヶ月半、雲隠れです。総理は、国会で「今後とも自ら説明責任を果たしていかれるものと考えております」と答弁されていましたが、3人が説明責任を果たしてきたと、総理は考えておられますか。お答えください。
加えて、第二次安倍政権発足以降の大臣、副大臣、政務官の辞任若しくは暴言はとどまることを知りません。辞任したのは、大臣10人、副大臣4人、政務官5人にのぼります。
自民党は一体どうなっているのでしょうか。任命権者である総理として、自民党総裁として、この事態をどのように国民に説明されますか。お答えください。
また、本日の週刊誌報道によれば、公職選挙法違反の疑いで家宅捜査されている河井案里議員の総支部に、参院選前わずか3ヶ月間で約1億5000万円ものお金が自民党から入金されていたとのことです。考えられない金額です。自民党総裁として事実かどうかお答えください。安倍総理の秘書が少なくとも4人広島に入っていたという報道もあります。
<桜を見る会>
次に、桜を見る会について質問します。
野党は桜などのつまらない問題ばかりやるのはおかしいと指摘を受けることがあります。しかしながら、議院内閣制の我が国において、与党と内閣が一体化しているからこそ、国会の行政監視機能の中で野党の果たす役割がとても大きいと考えます。
特に、この桜の問題は予算が年々膨張しているにもかかわらずその事実を隠し、毎年の予算は同額を計上し、限定性の原則として不適切であったこと。
招待者名簿の扱いを含め、文書管理に違法な手続き、処理が行われ、不可解な保存期間の設定や、招待者名簿をシュレッダーにかけたこと等が顕在化しています。
また、安倍総理が大幅に招待客を増やしたことによる公的行事の私物化、前夜祭における公職選挙法違反や買収罪の懸念、政治資金規正法違反の疑いなど総理自身に違法行為の疑いがかけられています。
この構造は森友・加計学園問題と同様のものであり、決して小さい問題ではありません。野党が全容解明に全力を尽くさなければ、日本の議会制民主主義や文書管理、国会の行政監視機能の回復に役割を果たしたことにはならないと考えています。
以下、安倍総理には明確に答弁をいただきたいと考えます。
まず、前夜祭についてです。昨日の質疑において、ホテル側の見積書ならびに明細書の国会への提出について、「営業の秘密に関わる」との答弁がありましたが、国会の秘密会で事実を明らかにしてください。ホテルに迷惑をかけません。いかがでしょうか。お答えください。
安倍総理の説明では、5000円の領収証をホテル側から渡したと言うことですが、いまだにその領収書は現認されていません。この領収書の相当数を安倍事務所が後援会から回収をして国会に提出することを求めたいと思います。
新宿御苑に安倍後援会は時間を早めてバスで入苑したと聞いていますが、参加者は手荷物検査を受けたのでしょうか。また、本当に開苑時間を早めたのでしょうか。事実関係をお答えください。
手荷物検査を受けず、早く入苑することは、誰の判断で、どのようなプロセスで決定されたのでしょうか。明確にお答えください。
続いて、桜を見る会の公文書管理について質問します。
桜を見る会の名簿には、推薦者名簿と招待者名簿がありますが、名簿の保存期間を1年未満にしているのは内閣官房と内閣府だけであり、各省庁はそれぞれ3年から10年としています。なぜ1年未満で廃棄することを決めたのでしょうか。明確な理由をお答えください。
昨年4月の、内閣府公文書監察室の行政文書の管理に係る取り組みの実態把握調査 調査報告書に「保存期間を1年未満とすることについて十分な検討が必要なもの」として式典の招待状が含まれています。招待者名簿は招待状のもとになるものであり、当然保存期間は1年以上と考えられます。
この報告書を無視して保存期間を1年未満とし、国会議員からの資料要求した直後にシュレッダーで廃棄をしたとすれば、公文書廃棄の最終同意権限を有する内閣総理大臣の責任は重たいと考えます。なぜこの報告書を無視したのでしょうか、総理の責任をどう考えるのでしょうか、明確にご答弁ください。
さらには、これらの公文書の違法な管理をめぐって歴代の人事課長が厳重注意の処分を受けました。なぜ官僚だけが処分を受けるのでしょうか。
安倍政権では、不祥事が起こると官邸ではなく、官僚に責任を擦り付けることが常態化しています。これでは官僚の士気にも影響します。なぜ責任者である菅官房長官や総理自身が責任を取られないのでしょうか。理由をお答えください。
次に、オーナー商法で2014年に行政指導を受けた、ジャパンライフの元会長が、桜を見る会に招待をされた件についてお伺いします。
なぜ招待をされたのでしょうか。誰が推薦者だったのか。お答えください。
いわゆる総理の招待区分としての「60」についてもお伺いします。
私も、少し古いものですが、平成4年の宮沢喜一内閣総理大臣からの招待状をわが党の水岡俊一参議院議員を通じて入手しました。この招待状の区分数字も間違いなく「60」となっています。総理、もうごまかしようがありません。「60」の招待区分は総理枠と認めるべきです。そしてジャパンライフの被害者に謝罪するとともに、反社会勢力の参加についても明確に認めるべきと考えます。総理、いかがでしょうか。
桜を見る会の問題は、総理が前夜祭の内容、招待者の状況を包み隠さず開示することによって、すぐにでも全容解明が可能になり、このような国会審議をする必要がなくなります。
すべての混乱の責任は安倍総理にあります。総理は、これ以上の隠し立てや虚偽の答弁を繰り返すことなく、総理として全容解明の責任を果たした上で、お辞めになることが潔い身の処し方と考えますが、いかがでしょうか。
<カジノ問題>
カジノを含むIRに関しては、その整備法の検討、国会審議、成立時のIR担当副大臣が秋元議員です。その秋元氏が本件で逮捕されていることに対する安倍総理の任命責任をどのように考えるのか、見解を伺います。
IRの整備については、少なくとも捜査の状況がはっきりするまで、一旦立ち止まって白紙にするべきです。特に、今月中の基本方針の策定などはありえません。「先送り」との報道が見受けられますが、総理の所見を伺います。
日本にカジノは必要ありません。野党は共同で、20日にカジノ推進法・整備法廃止法案を提出しました。速やかに審議し、成立させるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
<関電金品受領問題>
関西電力幹部が福井県高浜町の元助役から3億2千万円という多額の金品を受け取っていたことが明らかになりました。
ところが、政府は昨年9月に関西電力に対して電気事業法に基づく報告聴取命令を発したものの、その後は主体的な事実関係の解明を行うそぶりもなく、関西電力の調査をただ待つだけの状態が続いています。
政府が実態解明に取り組む決意は微塵も感じられません。時が過ぎ、ほとぼりが冷めるのをただ待つという、安倍政権の体質が如実に表れています。
報告書はいつ出るのでしょうか。原発を巡る資金還流の問題を放置して、電気事業の在り方にもかかわる電気事業法・FIT法改正の問題を議論することは認められません。FIT法改正の議論の前に、関西電力に報告させ、国会にも示すことを約束するよう求めます。総理の見解をお答えください。
<令和元年度税収の下振れと当初税収見積りの妥当性>
昨年10月、私たちの強い反対を押し切って、消費税10%への引き上げを強行しました。実質可処分所得等が低迷する中で、消費を冷え込ませ、国民生活を追い込んでいます。
令和元年度の国税収入は、当初予算における見積りに対し、一般会計で約2.3兆円の減収見込みとなりました。
税収見積りは極めて楽観的であったと言わざるを得ません。この理由と責任をどう考えられていますか。お答えください。
<消費税の逆進性>
消費税増税対策として昨年10月に導入された、キャッシュレス・ポイント還元制度には、令和元年度補正予算で約1,500億円の予算が追加され、合計7,000億円もの税金が使われます。ポイント還元制度は、低所得者よりも中高所得者に還元額が多くもたらされることを指摘してきましたが、実際に決済の約6割はクレジットカードとの指摘もあるなど、懸念が現実となりました。
このように、ポイント還元制度に巨額の税金を投入することは、消費税の逆進性問題をさらに助長することになるのではないでしょうか。お答えください。
<気候変動対策>
(気候非常事態宣言)
昨年、我が国は記録的な台風や豪雨災害に見舞われました。世界各地でも、南米の広い範囲での大洪水、パリで観測史上最高の42.6度を記録するなどヨーロッパ各地での熱波の発生、今なお続くオーストラリアの森林火災等、「気候非常事態」や「気候危機」と言える状況が顕著になっています。
2018年には、気候災害被害の大きさで、日本が世界1位となりました。
気候変動問題と気候災害の関連性にもっと警鐘を鳴らさなければいけません。日本も「気候非常事態宣言」をするべきだと考えますが、総理の見解を伺います。
(NDC・2030年目標の引き上げ)
昨年初頭から、グテーレス国連事務総長は、気温上昇を1.5℃に抑制するために、2030年45~50%削減、2050年にネットゼロ、また、2020年には新規の石炭火力発電をゼロにするように各国に呼びかけています。
これを受け、目標の引き上げを決定した国は103カ国、2050年までにカーボンニュートラルを宣言した国・地域は120カ国とEUで、さらに11カ国が国内での検討プロセスを開始しました。
しかし、日本政府は、昨年9月の国連気候行動サミットでも、12月のCOP25でも、この要請にこたえませんでした。なぜでしょうか。認識を伺います。
今年11月のCOP26に向けて、いよいよ日本もNDCの提出が求められます。直ちに、目標引上げに向けた議論を開始すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
政府は、いつNDCを提出するつもりなのでしょうか。その際には、今年の地球温暖化対策計画の見直しとあわせて、2030年の目標の引き上げを含めて検討することが必要です。どのようにお考えでしょうか。
あわせて、施政方針演説で触れられた「Beyondゼロ」は具体的にどういうことで、どのような施策で達成しようとするのか、明確にお示しください。
(石炭火力発電)
次に、我が国の石炭火力発電に関する政策について伺います。
ドイツの2038年全廃目標に見られるように、先進国においては明確に脱炭素化への流れが強まっています。先進国の中で、我が国だけは石炭火力発電所の新設が続いています。現在もベトナムやインドネシアでの案件があり、国内でも15基が建設中、7基がアセス中・計画中で、既存の設備を減らす計画などはまったくつくられていません。まさに日本は「クールジャパン」ではなく「コールジャパン」です。
一方、ビジネスの世界は驚くべき速さで変化しています。
昨年9月には、500を超える世界の主要機関投資家が各国政府に対して、NDCの引き上げや石炭火力発電の段階的全廃等を要求。銀行融資の環境等への影響を自主的に公表する「国連責任銀行原則」が発足し、世界131の銀行が自主的に署名。
こういった動きに呼応するように、技術開発、イノベーションが世界中で起こっています。
未来に対して責任を果たすために、一日も早く脱石炭に舵を切るべきと考えますが、総理の見解を求めます。
<原発ゼロ>
(原発ゼロ基本法案)
エネルギー政策について伺います。
再生可能エネルギーの拡大による原発ゼロはまさに世界では「リアリズム」です。ドイツでは2018年には自然エネルギーの割合が40%を越えました。近い将来、原発も石炭火力発電所も座礁資産となり、日本の競争力を確実に低下させると考えます。
立憲民主党は一日も早い原発ゼロをめざして、「原発ゼロ基本法案」を衆議院に提出しておりますが、未だに審議がなされておりません。一刻も早い審議と速やかな成立を求めます。総理の見解を伺います。
<中東派遣>
自衛隊の中東派遣についてお伺いします。
今回の派遣区域から、ホルムズ海峡からペルシャ湾の地域が外れています。当該地域での「調査・研究」は不要であるとした理由は何でしょうか。お答えください。
今回の米・イラン関係緊張の直接のきっかけとなった、イラン革命防衛隊のスレイマニ司令官が殺害された件について、米国側から事前に何らかの通告はなされたのでしょうか。事後に、米国側からの報告や日米間の協議はあったのでしょうか。今回の米・イラン関係の緊張状態の緩和に向けて、イラン側とはこの間、如何なる協議を行ったのでしょうか。米国側にも自制を求める旨の協議を行った事実はあるのでしょうか。総理にお尋ねします。
<イージス・アショア>
来年度予算案には、設置場所も全く決定していないイージス・アショアに129億円が計上されています。
イージス・アショアの配備について、居眠りなど防衛省の杜撰きわまる対応もあり、秋田県では、佐竹知事が「新屋は無理という確信を持っている」と発言し、県内の与党議員も含め、地元の理解が得られているとは全く言えない状況です。山口県でも阿武町長の「配備計画に反対」との発言もありました。こうして地元の理解が得られていない中で配備を進めることは難しいと考えますが、総理の認識を伺います。
<普天間飛行場移設>
米海兵隊普天間飛行場の辺野古移転について、軟弱地盤の改良工事が必要となったことを踏まえ、基地の運用開始まで12年かかる見通しであることを明らかにしました。沖縄県から設計変更承認を得るためにさらに相当の時間を要することを考えれば、それ以上の工期は必要です。SACO合意から30年も経過してしまいます。
政府は、沖縄県の民意を無視した土砂投入を中止し、米国と辺野古見直しについて協議するべきではありませんか。お答えください。
<北方領土問題>
北方領土問題に関しては、安倍首相がロシアのプーチン大統領と27回もの首脳会談を重ねているにもかかわらず、進展が見られていません。残念です。
安倍内閣が、ロシア側に誤ったメッセージを伝えているのではないかと危惧しています。2019年版外交青書から「日本に帰属する」との記述が削除され、首相や外相が「日本固有の領土」との発言を控えています。特に、1956年の日ソ共同宣言を基礎に歯舞、色丹の「2島返還」を出発点としたことで、国後、択捉の2島を放棄したかのようなメッセージを与えている可能性は否定できません。昨年8月のメドベージェフ首相による領土訪問は極めて遺憾です。その際、外務省欧州局長から在京ロシア臨時代理大使へ抗議したと聞いていますが、事実ですか。
領土交渉が簡単でないことは百も承知ですが、「4島返還」を求めてきた先人達の戦後日本外交の成果が壊されているのではありませんか。総理の見解を求めます。
<北朝鮮問題>
北朝鮮問題についても伺います。
総理は、施政方針演説でまたも「私自身が金正恩委員長と向き合う決意」を述べられましたが、いつになったら首脳会談は実現するのですか。決意は結構ですので、日朝関係の現状について、国民に対して真摯にご説明下さい。
<介護>
(低所得者の負担増)
厚生労働省の社会保障審議会 介護保険部会においては、介護施設を利用する際の食費や居住費を軽減するいわゆる補足給付を減らし、一部の低所得高齢者の自己負担を月額2万2千円増やす方向でおおむね意見が一致しました。
消費税率が引き上げられ、生活が更に苦しくなる中、一層の支援を要する低所得者にとっては負担増になります。これでは何のための消費増税だったのかという声があがっても仕方ありません。総理の見解を求めます。
(介護人材の確保)
産業界全体で人手不足となる中、とりわけ介護職員の人手不足が深刻です。介護施設を新設しても介護職員が確保できず空床となるケースもあるなど、介護人材の確保が難航しています。
更なる処遇改善に加えて介護人材の確保を更に進めていく方策が必要であると考えますが、総理の見解を求めます。
<子ども・子育て>
子ども・子育て支援施策について伺います。
昨年10月から幼児教育・保育の無償化がスタートしましたが、延長保育を利用する家庭が大幅に増加するなど、保育士が不足する中で保育の現場からは悲鳴が聞こえてきます。やはり私たちがこれまで主張してきたように、まずは待機児童の解消と保育の質の向上に取り組むべきです。総理の見解を伺います。
幼児教育・保育の無償化の実施に伴い、一部の幼稚園や認可外保育施設において、いわゆる便乗値上げが行われています。今後どのようにして便乗値上げに対処していくのか、見解を求めます。
立憲民主党は、保育士等処遇改善法案や介護人材確保法案など、子育てや介護支援体制の充実をはかる法案の成立を目指します。
<高等教育無償化の歪み>
高等教育無償化が始まる本年4月以降、授業料減免を受けてきた国立大の学部生のうち、約1万9千人への支援が減額またはゼロになる見通しであることが文科省の試算で明らかになりました。前通常国会で立憲民主党が再三指摘していた、各国公立大学の授業料減免措置が後退する問題が表面化しています。これも制度設計があまりにも杜撰すぎます。
12月23日、萩生田大臣は定例会見において、「これは制度の端境期なので是非ご理解いただいて、~と思っています。」と発言されました。身の丈発言の反省が全く感じられません。約1万9千人の学生を端境期と言って、切り捨てるのでしょうか。それぞれの学生、子ども達の生活に対する想像力がなさすぎます。
萩生田大臣は文科大臣の資質に欠けます。失礼ながら、辞任すべきです。やっとのことで止めることのできた英語民間試験の導入や共通テストの記述式も含めて、この大臣を代え、文科行政は一から出直すべきと考えますが総理の認識を求めます。
<外国人労働者>
(特定技能)
昨年4月、外国人の新たな在留資格である「特定技能」が創設されました。それから9か月あまり、特定技能外国人の受入れは、政府の想定に比べ、大幅に少なくなっています。昨年11月末時点で1019人であり、政府の想定のわずか2%にすぎません。
そもそも、一昨年の本制度を創設する入管法改正の際の検討が不十分であったことは認めますか。この法改正も強行採決でした。政府は、今後、特定技能制度に生じている様々な問題にどのように対処していくつもりなのでしょうか、総理の見解を伺います。
<地方自治関連>
(公立・公的病院の再編・統廃合)
公立・公的病院の再編・統廃合について伺います。
昨年9月、厚生労働省から424病院のリストが突然公表されました。さらに今月、7医療機関の除外と新たに20病院を追加した約440病院が通知されました。その中には、過疎地域など代替不可能な医療機関が多数含まれています。
今後出される医療機関データ等を用いて開催される会議については、確定するまで「非公開」とされています。安倍政権の得意技です。
「この病院は閉鎖されるのか」といった地域住民や医療従事者の不安は高まっています。そうした中での「非公開」は、さらに不安をあおるのみならず、不信感すら抱かせるものと考えます。
安易な医療機関の統廃合や病床削減ではなく、地域医療の確保と充実のため、オープンな議論を求めたいと考えますが、総理の認識を伺います。
(公共交通)
「公共交通」についても伺います。
公的交通機関のない「交通空白地域」は、全国各地に散見されます。もはや地域公共交通の衰退は、「地域に住み続けられるかどうか」という住民にとっての「究極の問題」といわれています。
自治体は今、路線バスに加えて、コミュニティバスや乗り合いタクシー、デマンド型交通など様々な工夫を凝らしています。そこに必要なのは、ライドシェアの導入、利便性や効率性の追求による安易な規制緩和ではありません。
地域公共交通は「社会的インフラ」です。広く地域住民の参画を求め、さらに、自治体に交通施策を担当する部局を設置することを進めるべきであると考えますが、総理の見解を伺います。
(地域の防災体制)
次に、地域の防災体制のあり方について伺います。
昨年10月の予算委員会において、私は内閣府防災の体制強化を求めました。その際には総理から前向きな答弁をいただけませんでしたが、結果として、来年度において内閣府防災部門の定員増を決めていただきました。提案を受け入れていただいたことは率直に感謝を申し上げます。
一方で、総務省の地方公共団体定員管理調査によると、防災業務に専従する職員がいない自治体は、全国で約500にのぼります。職員不足にあえいでいます。実効性ある防災や避難計画を立て、実行していくための人手が絶対的に足りていません。
地域防災体制のあり方の検討も、国として展開していくべきと考えますが、総理の見解を伺います。
(インクルーシブ防災)
自然災害が相次ぐ中、最も困難を伴うのは高齢者や障がい者の皆さんです。
昨年の台風19号の際には、高齢者や障がい者を受け入れる「福祉避難所」が開設されましたが、開設そのものを広報しなかった避難所が半数に及びました。災害弱者のために自治体が定める個別支援計画は、昨年6月時点で12.1%しか作成されておらず、約4割では全く作成されていません。
こうした状況をどう改善しようとしているのか、総理にお尋ねします。
野党が共同提案している手話言語法案及び情報コミュニケーション法案について、一日も早く審議を求めたいと考えます。あわせて、LGBT差別解消法案についても、総理の見解を伺います。
(会計年度任用職員制度の導入)
会計年度任用職員の適切な任用等について、本年4月1日の法律施行に向け、実態の把握、任用根拠の明確化・適正化、制度の整備を実施する必要がありますが、地方公共団体における対応状況、特に条例等の制定状況はどうなっているのでしょうか。
また、会計年度任用職員に対する期末手当の支給等に係る経費 約1700億円が一般行政経費等に計上されていますが、この財源で支障なく制度の導入ができるのでしょうか。見解を求めます。
(農地面積)
農地面積の減少が農水省の想定を大きく上回って進んでいます。5年間での減少面積は12万1000ヘクタール、東京ドーム約2万6000個分の農地が減少していることになります。
現行の対策では全く不十分であることは明らかです。日本の農業が直面するこうした状況に適切に対応するためには、私たちが提出している「農業者戸別所得補償法案」を成立させることが不可欠です。総理の見解をうかがいます。
<おわりに>
結びに、安倍政権を長期政権たらしめた大きな要因はアベノミクスであったことは間違いありません。
しかし、政権が7年を経過し、アベノミクスの限界はもはや明らかです。アベノミクスは、実質賃金と実質家計支出の低下、少子高齢化の加速、所得格差や貧困問題の拡大、地方創生とは名ばかりの地域格差の拡大、銀行経営の圧迫、日本銀行の機能不全、国債・ETFによる株価維持等という深刻な副作用を生んできました。
これは、昭和、平成の自民党の政権運営スキームがもはや時代と合わなくなっている証左です。財政金融機能を回復し、正常化するには、相当の時間を要し、困難な道程が待っています。
また、立憲主義を回復し、公正で透明なルールを社会に取り戻すため、公文書管理の徹底、公文書記録管理院の設置、権力の濫用に結びつかない内閣人事局制度の改変、特定秘密保護法や共謀罪の見直し、税の再分配機能の強化、メディアへの政治介入を防ぐための放送法の改正、統計指標を適正に運用するための環境整備等、安倍政権が壊してきた数々の民主主義の装置を立て直していかなければなりません。
立憲民主党は、こういった脱安倍政権を一つ一つ粘り強く実行する中で、令和の新しい社会のあり方を模索し、誰もが個人として尊重される多様性ある社会を創造し、未来に責任を果たす役割を担わせていただきたいと考えています。
この国会こそ「まっとうな政治」を再創造する歴史的なスタートとなるよう、国民ならびに野党と連携して、全力を尽くすことをお誓いし、私の質問を終わらせていただきます。