2018年12月21日
年内最後の記者会見で「選挙を経て国民の皆さんの期待と草の根の声をさらに国会、地方議会に届ける存在になりたい」と枝野代表
枝野幸男代表は21日午後、国会内で年内最後となる定例の記者会見を開催。冒頭、(1)立憲民主党女性候補者公募「パリテ・ナウ」のスタート(2)2019年度予算案閣議決定(3)今年一年を振り返って――の3点について発言しました。パリテは、フランス語で「同等」の意で、選挙の候補者を男女同数とすることを定めたフランスの法律の略称です。
女性候補者公募については、世界経済フォーラム(WEF)が18日に発表した、男女格差の度合いを示す「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」2018年版で、政治分野では調査対象となった149カ国のうち日本は125位だったことにも触れ、「情けない状況だといえる」と指摘。立憲民主党は男女半々の議会、パリテを目指して来年の統一地方選挙と参院選挙の比例代表で40%を超える候補者の擁立を目指しているとして、現時点で参院選挙の女性候補予定者は比例代表で50%、選挙区では57%、全体で52.9%を擁立、女性の候補者の方が多い状況だと説明、「選挙までこの比率でいくのはなかなか難しいとは思うが、われわれの努力の姿勢の一端と感じていただけるのではないか」と述べました。統一地方選挙でも地域によってはパリテに向けた取り組みが進んでいると述べ、自身の地元の衆院選挙区の埼玉5区内での県議会と市議会の選挙の候補者についてはパリテで候補者を擁立できると思うとの見通しを示しました。「草の根で、できるところから一歩ずつ進めていくと同時に、門戸を広く開け、政治を志してくださる方にハードル低く声をかけていただけるようにということで『パリテ・ナウ』をスタートする」と表明しました。
2019年度政府予算案については、「いくつもの問題点がある」とした上で特に、「消費税率引き上げに、まったく分かりにくい、低所得者対策にならない軽減税率が導入されると同時に、その対策だと称して多額の財源が使われる。何のためになぜ消費税を上げるのかがまったく意味不明な予算になっている」「経済産業省が小型原子炉の研究開発に向けた予算を計上しているのは、まったく時代に逆行するもので無駄な予算だと言わざるを得ない」と、2点について指摘。「予算審議に向けて党内で精査をしていく」と述べました。
今年一年を振り返り、41都道府県で地方組織を設立したこと、パートナーズ制度をスタートしたことに言及。「まだまだ、われわれがパートナーズ制度を通じて目指していることに向けては小さな一歩かもしれないが、すでに私たちの期待を超えてパートナーズの皆さん相互がつながって、さまざまな形での政治参加を進めていただくという状況が生まれ始めている。今後こうした先行事例、意欲的な取り組みを進めていただいている皆さんの声、状況をさらに多く受け止めるなかで、より幅広い皆さんがハードル低く、身近に、気軽に政治参加していただける政治風土をつくっていく。そういったなかから私たちも草の根の声に寄り添った政策を作り上げていきたい。そのための一歩を踏み出せたことは小さな一歩かもしれないが意義のあった一歩ではないか。来年は否応なく、少なくとも統一選挙と参院選挙が行われる。今年一年、本来の意味での民主主義、しっかりと正しい情報データが公開され、説明責任が果たされ、熟議がなされ、特に多数派が少数派に理解を求めて説得するというプロセスを経て初めて民主主義は正当化される。そうしたプロセスがまったく蔑ろにされてきた一年で、私も悔しい思いをしているし、国民の皆さんのなかにも多くの苛立ちをお持ちの方がたくさんいらっしゃると思う。選挙があるということは、それを1票という形で表現できる大きなチャンスだ。立憲民主党はそうした皆さんの思いをしっかりと受け止めていく。来年は元号も変わるが、お互いさまに支え合い、支え合うことによって誰か人のためにしたことがめぐりめぐって自分に返ってくる、「情けは人のためならず」という格言が実感できる社会を取り戻していく。それが平成の次の時代の私達の役割であり、日本の進む道だと思っている。こうした、これからの社会像を明確に示し、来年の選挙を経て国民の皆さんの期待と草の根の声をさらに国会あるいは地方議会に届ける存在になっていきたい」と力を込めました。
会見では、女性候補公募について党ジェンダー平等推進本部の神本美恵子参院議員も発言。「立憲民主党は、女性が一人でも二人でも入っていればという『男女共同参画』ではなく、ジェンダーに平等な社会を作っていくためのジェンダー平等の推進という心だ。本当に平等にしていくためには『パリテ』、男女同数、あらゆる分野に(女性が)いることが当たり前の社会をつくっていきたい」と表明。今回の公募は、統一地方選挙や参院選挙に限らず通年的に募集する恒常的な取り組みだと説明し、「法律で推進法ができたが、各政党の努力目標であって割り当ててクオータにしていくものではない。私たち政党や国民に大きな宿題を投げかけられたと考え、精力的に取り組んでいる」と述べました。
女性の公募に当たっては、「女性はライフステージが変わるたびに壁にぶつかる。結婚の壁、あるいは妊娠や出産、子育て、家事、介護などさまざまなステージで女性を政治から遠ざける壁がある。そういう壁によって作られる心理的な壁もある」と指摘。都内で開いた集会で若い女性から聞いたという「政治は女性ではなく男性がするものだという周りの目がある」「あなたのような若い人がどうして政治を志すのかと、当たり前ではない受け止め方をされる」という声を紹介し、「政治にたどり着くまでのさまざまな壁を取り除いていくために、『パリテ・ナウ』のカフェや政治スクールを開くなどの取り組みを進めている。女性を画一的に捉えるのではなく、男性がさまざまなステージ、分野で活躍しているように、さまざまな分野に女性もいるので、そういう人たちの声が政治にしっかり反映されてこそ、『パリテ』な社会になるし、多様な意見を反映する政治になっていく。フランスでは2000年初頭にパリテ法を作り、それから女性の政治参画が進んできた。それから18年が経っており、すぐにパリテが実現するわけではないかもしれないが、一刻も早く男女半々の政治になるよう頑張っていきたい」と決意を述べました。
会見ではこのほか、消費税や参院選挙、辺野古新基地建設等について質問に答えました。
Q:政治分野に限らず社会のなかのパリテについて
A:社会のあらゆる分野で男女の隔てをなくせば、多くの場合はパリテあるいはそれに近い状況になる。そういう社会こそが望ましい社会であり、その障害になっているものをいかに取り除いていくかということがわれわれの大きなミッションの1つだと思っている。残念ながら日本は医科大学における女性に対する差別が、この21世紀になって顕在化するほど遅れている状況なので、いきなりあらゆる分野でパリテを実現することは簡単ではないが、医学部の入試問題に代表されるような女性の参加の障害を取り除いていく取り組みをどんどん進めていきたいし、いかなければならないと思っている。
Q:消費増税に過度に頼る税制のあり方について
A:日本はいつのまにか間接税比率がより大きくなっている。消費税導入のときには直間比率(直接税と間接税の比率)の見直しという言葉が使われ、日本は直接税の比率が大きすぎるので間接税を増やさなければならないという議論があった。しかし現在はむしろ、間接税に依存しすぎている。あるいは財政再建を間接税に依存しすぎていると言えるのではないかと受け止めている。特に消費税が導入され税率が上がっていくプロセスで、少なくても結果的に法人税、特に大企業の法人税の納税額が下がっている、あるいは金融所得課税など高額所得者に対する課税が十分に進んできていないという大きな弊害や問題が生じている。したがって当面、消費税による財政再建ではなく直接税分野での不公正やアンバランスを正していくことが税制改正の主たるテーマでなければならないと思っている。
Q:辺野古新基地建設とイージス・アショアの配備
A:時間はかかるだろうが辺野古の基地を作ることなく普天間を返還させる交渉は、米国と十分可能である。そのことによって東アジアにおける米国のプレゼンスやわが国の安全保障という観点からのマイナスは生じない。したがってそうした交渉を進めていく間、辺野古の工事は沖縄県民の大方の皆さんの声を踏まえて中断、中止していくべきだという姿勢は従来から申し上げている通りだ。
地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」については、ミサイル防衛の重要性は否定するものではないが、いまなぜイージス艦ではなくイージス・アショア、陸上でなければいけないのか。そして陸上配備に対する、特に配備候補予定地とされている皆さんの心配や危惧は十分理解できるので、拙速にしかも非常に多額な費用がかかるなかで、その費用対効果も含めて結論を出して導入を進めることは適切ではないということで賛成できない立場だ。
Q:辺野古新基地建設工事を、来年2月の県民投票まで停止するようトランプ米大統領に求めるホワイトハウスの請願ウェブサイト上の署名数が10万筆を超えたこと
A:こうした署名が広がっていることは、多くの国民の皆さんがこの埋め立てについて強い反対の思いを持っていることの表れだと思っている。本来であれば日本政府が判断をすることであり、日本政府がこうした声に真摯(しんし)に向き合わないがためにアメリカにご迷惑をかける形になっているのは、日本政府は署名をされている皆さん、そして署名の宛先であるアメリカ政府両方に対して無責任な姿勢だと受け止めている。
Q:辺野古移設計画の賛否を問う県民投票に関し、宜野湾市議会や沖縄市議会が「反対」意見書を可決したこと
A:地方自治法や沖縄県の条例に絡んでくる話の詳細まで承知していないが、県として全県下で行うことについて、それぞれの市町村が事実上拒否できる制度でいいのかは甚だ疑問だと思っている。
Q:衆院会派「無所属の会」の野田佳彦前総理が立憲民主党会派入りした場合と消費増税の考え方
A:2012年に消費増税を決めたときの、私も閣僚であり当事者だ。そのことを理由に一緒にやれないということはあり得ない。私も当時は適切な判断だと思っていたが、適切な判断がその後安倍政権の下でわれわれの想定通りに運用されない、その後の経済状況や社会状況、税以外の分野での税の使われ方、その他を考えた時、現状で上げることはできない。そして、消費税に依存した財政再建ではなく、直接税の公平・公正を優先して議論すべきだという私自身の考え方は変わらない。
私どもはそうした考え方を理解して、賛同していただけるのであればぜひ加わっていただきたいと考えている。
Q:今年一年を漢字1字で表すと
A:基本の「基」かなと思う。私どもにとって基礎作り、基本づくり、幹になる部分をしっかり作っていく一年だったと思っている。そして、翻ってみれば、残念ながら民主主義、立憲主義の基本がいまの政府によって崩された一年だったと思っている。