2018年11月26日
【衆院予算委】入管法改正案に「無責任なこと立法府としてやれません」と山尾、逢坂両議員
衆院予算委員会で26日、集中審議(内外の諸情勢)が行われました。立憲民主党・市民クラブから山尾志桜里、逢坂誠二両議員が質問に立ち、入管法改正案や技能実習生制度など、外国人の受け入れ制度について取り上げ、安倍総理らの見解をただしました(写真上は、質問をする山尾議員)。
山尾議員は13日の衆院本会議において、新制度による特定技能労働者が永住者となる新たなルートが開かれたことになるのかと質問したのに対し、安倍総理は「永住許可の運用の問題であり、法務大臣において判断されるもの」と答弁。このことについて、法務大臣が決めるべき運用の問題ではなく、安倍政権として国民・立法府に問うべき政策判断だとして総理の認識をただしましたが、安倍総理ではなく山下法務大臣が入管法の構造に関わることだとして、所管大臣として「裁量の範囲内で判断する」と答弁しました。安倍総理に改めて質問すると、安倍総理は「所管する法務大臣から答弁させていただいた」として、同じ答弁を繰り返すにとどまりました。
これに対して山尾議員は、「新制度が新しい永住許可のルートを開くものかどうか、こういう本質すら、いまだに安倍政権は決めていない。そして決めるのは法案が通り世間の注目度が下がってから。法務省に丸投げするということがはっきりした。(安倍総理は)決断して国民と立法府の議論にしっかりと立ち向かうべき」と指摘しました。
また、受け入れの数の上限について、山下法務大臣は「分野別運用方針に定められた上限値を超える場合には、在留資格認定証明書を上限を超えて発行しないという運用になる」「数値として上限を定めることを義務付ける規定は設けていない」と答弁。山尾議員は、法律上ではなく運用上の上限であると指摘。また、この「分野別運用方針に定められた上限値」は法案の成立後に示される数字であることから、「この立法府の議論は何なのでしょうか」と必要なデータが出ていないままでの審議が進められていることについて疑問を呈しました。
逢坂議員は質疑の冒頭、山尾議員の質問に対する安倍総理や山下法務大臣の答弁について、「今回の入管法の改正、実は中身が何も決まっていない。スカスカ。新たな在留資格を作るということだけは明確だが、永住権の扱い、どれくらいの人数を受け入れるのか、単純労働とはいかなるものか、総理が言うところの移民政策というのは何か、ということをまったく決まらない中で議論させられている」と指摘しました。
続けて、「制度設計をあやふやなままでやってしまうと、将来に大きな禍根を残す。特に現在、国内で事実上の労働力になっている技能実習生、あるいは留学生として労働されている皆さん、こうした方々の実態・現状、これを把握し、それへの対応・対策もしっかりやる、その上で新たな制度設計も考えていくことでなければ、将来、大きな過ちを犯しかねない」と語りました。
逢坂議員は、日本人と同じような環境の中で同じ程度の賃金が保証されるのかと質問。安倍総理は日本人と同等以上の給与を払わなければならないとの認識を示しました。どうやってそのことを担保するのかとの質問に対して山下法務大臣は、「指導助言、あるいは命令であるとか立ち入り検査ができるようになっているので、しっかりと実効性を図っていきたい」と答弁しました。
逢坂議員は、失踪技能実習生から2017年に聞き取った個別の調査結果(個票)の中に「時給300円」「労働時間130時間」というものもあったとした上で、「現行でも指導や助言の役割を政府は担っている。うまく行っていないにもかかわらず、同じ制度を続けるのであれば、問題の解決にはならない」と指摘しました。
これに対し山下法務大臣は、個票は2017年の失踪技能実習生のことであり、同年11月から新たな技能実習法が施行されたので、この新法のなかでしっかりと担保していくと答弁。さらに今回の調査結果を受け法務省内に技能実習の運用に関するプロジェクトチームを設けて運用について検討していると説明しました。
逢坂議員は、新法においても半年で約4,000名が失踪し調査もしているとして、検証するためにこの調査結果を出すよう求めましたが、山下法務大臣は新たな制度に基づくものについては、集計・精査・作業中だとして応じませんでした。
逢坂議員は「今回の新たな在留資格は、技能実習制度の上に積み重ねるもの。技能実習制度を前提にしているので、技能実習の実態がどうなっているのか明らかにすることは、法案議論の大前提。今の技能実習の実態を明らかに出来ないというのは、法案審議の前提が壊れている」と厳しく指摘し、「調査結果をしっかり出した上で、法案の議論をしようじゃないですか。実態は後から教えます、法律だけ通してくれ、あとは白紙委任してくれなんて、こんな無責任なこと立法府としてやれません」と断言しました。