2018年9月14日
【訪問報告】トランプ政権の政策、沖縄の在米軍基地問題など、ジョージ・ワシントン大学で枝野代表が講演
訪米中の枝野幸男代表は現地時間の13日昼、ジョージ・ワシントン大学で講演し、(1)立憲民主党の基本理念(2)取り組むべき地球規模の課題(3)トランプ政権の政策(4)沖縄の在米軍基地問題――などについて語りました。
講演の冒頭、2011年3月11日の東日本大震災に触れ、当時官房長官として地震、津波、そして東京電力福島第一原子力発電所事故の対応にあたったことを振り返り、「トモダチ作戦」を展開した米軍、米国エネルギー省やNRC(米国原子力規制委員会)の方々をはじめ、多くの皆さんから支援いただいたことに感謝、日米同盟の絆を強く再認識し改めてお礼を述べました。
また、その時SNS上で「#枝野寝ろ」というハッシュタグが話題になったこと、そして2017年に今度は「#枝野立て」というハッシュタグが使われ、新党立ち上げの決断を促され現在の立憲民主党を結成したと話しました。
立憲民主党は、健全な日米同盟が日本外交の基軸であるとの立場を改めて強調。第二次世界大戦終結後、70年以上にわたる日米の連携・協力は、日本の平和と繁栄にとって、そして東アジアと太平洋地域の安定にとって、欠くことのできない前提であり、その重要性はますます高まっていると語りました。その上で、(1)立憲主義に基づく民主政治(2)多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会――の実現という2つの基本理念を掲げていることを紹介しました。
地球規模の課題として、(1)核の抑止力は認めざるを得ないが、同時に、目指すべき将来の姿として、そして唯一の戦争被爆国の責任として、「核なき世界」への道筋を追求すること(2)気候変動問題について、2009年の国連総会での鳩山総理(当時)の演説、コペンハーゲン合意からカンクン合意、パリ協定へと至る過程で米国と協働して交渉を進めてきたことに触れ、パリ協定の目標実現に向けて、省エネの徹底、再生可能エネルギーの最大限の導入、石炭をはじめとする化石燃料依存からの脱却を進めること。そして東日本大震災で東京電力福島第一原発事故と向き合った者の責任として「原発ゼロ」を一日も早く実現すること(3)2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標。Sustainable Development Goals)についても、各分野で活動されている市民団体やNGOと意見交換を重ねており、「誰一人として取り残さない(leave no one behind)」というSDGsの理念は、私たちの基本姿勢と一致していると述べ「人間の安全保障」を世界でさらに具現化するための貢献を果たしていきたいと語りました。
トランプ政権の北朝鮮政策について、「完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現するという共通目標」の確認合意に至ったことは歴史的な前進であり、信頼関係構築に向けた土台を作った、トランプ政権と文在寅政権の決断に敬意を表しました。その上で非核化のプロセスと並行し、北朝鮮が「体制保証」、アメリカとの平和協定の締結を強く望んでいることは間違いがないと述べ、体制保証にあたり、日本は朝鮮半島の体制保証に伴う平和構築について、米韓と協力して重要な役割を担わなくてはならないとの見解を示しました。
さらに、平和構築のプロセスにおいて朝鮮半島の緊張緩和が進むことになれば、在韓米軍と在日米軍の役割について再検討が不可避との指摘をすると共に、あらゆる機会を捉え拉致問題の解決を求め、アメリカに対し被害者の心情に理解を示し引き続きの協力をお願いしました。
また、トランプ政権の標榜する「自由で開かれたインド太平洋」という地域戦略は、オバマ時代のリバランス政策と基調において共有するものだとして、「自由」「法の支配」「市場経済」という理念のもと、中国と向き合いながらこの地域の安定を図っていく地域戦略について、トランプ政権と日本との間で連携して進めていくことができるとの考えを示しました。
一方で、トランプ大統領が公約に掲げ、実行しつつある、パリ協定や国連人権委員会からの離脱、イラン核合意の破棄などは、政権を担っていた時に日米で連携し進めてきた方向に逆行するものだと指摘。国際協調主義の下での外交政策の推進を重視するべきと考え、アメリカ国内でどのように議論がなされていくのか、強い関心があると語りました。
また米中の貿易摩擦の激化を懸念。世界経済に大きな悪影響を与えかねないと語り、保護主義は採るべきではなく、これらの姿勢を常に確認し続けるべきであり、世界全体の経済とそれぞれの国の国益とがwin-winの関係となる道を目指し、粘り強く交渉を続けることが重要だという考えを示しました。
沖縄の在米軍基地問題については、日米安全保障条約とこれに基づく同盟関係を重視することを改めて強調した上で、将来にわたる安定的な日米関係の維持・発展という観点から、この問題の現状を強く危惧していると語りました。
そして、辺野古基地を建設することなく、普天間基地の返還を実現する。同時に、日米関係や米国の安全保障戦略に悪影響を与えない。困難な3つの条件を同時に成り立たせる解決策の模索を、アメリカの皆さんとともに取り組んでいきたいと語りました。
さらに、政府間の交渉だけに委ねるのでなく、野党を含む議会人や民間有識者・専門家を含めて、より幅広く率直な意見交換を重ねることでこそ日米両国民が真に理解・納得する日米同盟関係の進化が可能になると話しました。
同時に、日本における米軍や米軍関係者の法的地位等について定めている日米地位協定についても、改定に向けた率直な意見交換を積み重ねたいとの考えを示し、極東アジアにおける日米安全保障条約と日米同盟を重視する立場から、特に基地の集中している沖縄県民の理解を得られる内容に日米地位協定を改定することが必要だと語りました。
最後に、米国の様々な立場の皆さんと意見交換し相互理解を深めたい。こうした努力を積み重ねることが、日米関係を重視する立場から政権交代を目指す政党としての責任ある姿勢だ話を結びました。