新型コロナウイルス感染症の広がりを防ぐ一斉休校で、子育て中のお父さん・お母さんたちの負担は日に日に増しています。急な休校要請で慌ただしく準備をしたり、仕事を休まざるを得ないのに有給休暇を使うことになってしまったり。
それに、子育てで直面する課題は、新型コロナウイルス感染症関連のものだけではありません。待機児童問題に病児保育、学童保育、大学を出るまでにかかる教育費など、日ごろの悩みは政治と強くつながっています。
立憲民主党は、子育て当事者のお父さん・お母さん一人ひとりとダイレクトにつながり、日々の悩みを議員と気軽に話し合える場を、立憲民主党つながる本部の市井紗耶香さんをコーディネーターとして、各地で開いています。
3月14日には千葉県船橋市のつまがり俊明市議が、テレビ会議システムZoomを使って、「新型コロナ問題が子育て世代に与える影響」についてお父さん・お母さんと緊急意見交換。市井さんも参加しました。
ほかにも1月には「幼保無償化」をテーマに東京都内で、都内の区議2人とお母さんたちとの座談会を開催。自身も4人のお子さんの子育てに奮闘している市井さんが、まずはこの様子をリポートします。
政治と市民の距離を、もっと近く
こんにちは、市井紗耶香です。現在4人の子育てに奮闘している母親です。先の参院選で子育ての大変さを理解してほしい!と声をあげてから、半年が過ぎました。
つまがり議員の呼びかけから始まったZoom会議や、わたしたちが始めた座談会のきっかけは、「政治と市民の距離がかけ離れていませんか?」「わたしたちの声、きちんと届いていますか?」という思いです。
選挙に挑戦するまでは、正直わたし一人の投票では何も変わらないと思っていました。ですが、政治と普段の生活がこんなにも密接に関係しているのかと気づき、政治に対する価値観がガラッと変わりました。
世の中のお父さん・お母さん方も、普段子育てをしていく中で、「こうしたらもっと子ども達にとって楽しい学校生活が送れるのにな」「ここの道路は道幅が狭い上に、車の通行も激しい。信号機の設置を考えてもらえないかな」など、さまざまな想いを抱えながら生活を送っていると思います。
ただ、そうした声が議員に届くまでには、少し時間がかかります。もっと議員と市民の距離を近く、市民に寄り添う政治にしたい。今まで政治に堅苦しいイメージを持っていた子育て当事者のみなさんに、政治に興味を持ってほしい。座談会を、みなさんの抱える問題を一緒に解決できる場に育てていければうれしいです。
では、以下で座談会の様子をお知らせします。
どうしてこんなに制度が複雑で難しく、きちんと教えてくれないの?
さて、今回の座談会のテーマは「幼保無償化(※)」です。今回参加した議員さんはこちらの2人。
※幼保無償化:2019年10月から始まった、幼児教育・保育の無償化のこと。無償となったのは、幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳児クラスの子どもたちと、住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスまでの子どもたちの利用料。
中央区議の高橋まきこさん。中学生、小学生、保育園の3児の子育て中です。保活座談会を5年間続けています。
中野区議の河合りなさん。6歳、3歳の2児のお母さんです。
参加者は、1~16歳の子どもを持つ7人のお母さんたちです。議員というと堅いイメージから緊張されてしまうので、座談会ではママのランチ会のように、子どもと一緒に行くおすすめスポットなども交えながらカジュアルに話しました。
はじめにわたし自身の話をすると、「幼保無償化」という単語を耳にした時、全ての子ども、家庭が対象になるのかと思ったんです。でも、実際はそうではありませんでした。
それにさまざまな条件があり、調べれば調べるほどわかりづらく、役所に聞いても電話口ではなんとも頭に入ってこない…。
我が家の場合、今年4月に3歳になる三女は、3歳でも2歳児クラス。来年(2021年)4月にならなければ無償化対象にならないので、毎月保育料は発生していますそして、「無償」と一言で言っても、主食や年間行事など諸々かかる細かな費用は、基本的に無償化の対象外です。
地域の方々が子どもを預かってくれるファミリー・サポート・センター事業(※)も調べてみたけれど、こちらの希望する日時と先方の都合が合わず、なかなかマッチングできない。月に数回の説明会へ仕事の合間を縫って電車に乗ってわざわざ行くのも本当にひと苦労。泣く泣く利用は諦めました。
※ファミリー・サポート・センター事業:正式名称は子育て援助活動支援事業。各市町村にあるファミリー・サポート・センターが間に立ち、保育所への送迎や一時的な預かりなどの援助を受けたい人と、援助を行いたい人をつなぐ。料金は自治体によって異なる。
参加者のみなさんも、制度の複雑さに負担を感じていたようです。
幼保無償化の制度は、求職活動中も使えるのですがそれを知らなかったり、ベビーシッター代も一部対象となることを知らなかったりするママ友が多い。みんな子育てで精一杯の中、情報を得るのは大変。本当ならこの制度を利用して仕事に復帰できた人がいたはずなのに、活かしきれてないんじゃないかな。
保活でも同じことが言えると思う。わたしはどうしても復職したくてものすごく情報を集めたけど、「こんなに大変ならもう復職できない」というママ友もいました。わたし自身不安なことだらけで、「子どもも育てるし仕事も頑張ると言っているのに、なんで(行政がもっと)助けてくれないんだろう、わたしひとりで全部情報収集して解決しないといけないことなの?」と思っていました。
数人がこうした発言をしていて、全員が「うんうん」と強く頷いていました。24時間子どもから目が離せない中で、家事もして、その上で保育園の制度について調べないといけないとなると、せっかくの働きたいという意欲が削がれてしまいますよね。
保育士さんが健やかに働けないと、子どもに良質な保育が届けられない
そしてもうひとつ、みんなに共通していたのは、わかりにくい幼保無償化よりも、「待機児童問題の解決や、保育士さんの処遇改善、保育の質向上に取り組んでほしい」という意見です。
もともと認可保育園で保育料が低く、月3,000円くらいだったので、(保育料が無償になっても)さほど変わっていないという感覚です。周囲のママ友の間でも、無償化はほとんど話題になっていません。あまり恩恵を感じられない無償化よりも、もっとやるべきことがあったのでは?
保育園に預けられたら仕事に復帰しようと思って、昨年7月から入園希望を出しているけど、全く決まりません。待機児童も多く、入園は難しいかもと思っています。どうしたらいいんだろう。
中央区議の高橋さんによると、中央区の一時預かり保育の受付は、なんと朝の4時台から並ぶ親御さんもいるような状況。高橋さんはインターネット予約の実現を求めて活動しているそう。子育て当事者として政治を変えたい!という思いを語ってくれました。
(保育や保育士の)奪い合いのような現状を変えたい。まず解決しないといけないのが待機児童問題で、保育の必要性が高い人の入園を確保した後に無償化と、きちんと優先順位をつけて政策を展開できるようにしたい。
「保育の質」については、中野区議の河合さんから、中野区では保育の質を担保するためのガイドラインが、この3月にもできると紹介がありました。
ガイドラインには、施設側が努力する項目として、保育士などが安心して働ける環境や運営体制を構築することが入っています。お母さんたちからしてみれば、先生たちが十分な給与をもらって時間に余裕がある状態で子どもに接してもらった方が、それだけで保育の質が上がるって分かってるんですよね。
「お母さんたちは社会全体のことまで考えている」
今回の座談会を通して、幼保無償化は制度が難しく、一人の大人だけでは情報収集の負担が大きいこと、お母さんたちが本当に求めているものが制度に反映できていないことを改めて確認しました。お母さんたちは、自分の家族のことだけでなく、他の家庭の親子や保育士さんも含めた社会全体のことまで考えています。本当にリアルな声だと思いました。
参加してくださったお母さんからは「気軽に悩みを打ち明けられてよかった」「同じことを考えている人に会えて安心した」と感想をいただきました。日々の家事・育児、仕事をこなしながら頑張っているお母さんたちは、強い孤独を感じているのだろうと思います。今回の座談会のような場が求められている、とひしひしと感じました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、子育て中のお父さん・お母さん、さらに子どもたちへの影響が広がり、深刻化する可能性もあります。これからも子育て当事者の声に耳を傾けながら、交流を深めていきたいと思います。