参院本会議で29日、内閣提出の「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」(TPP11関連法案)の採決が行われ、与党などの賛成多数で可決・成立しました。

 採決に先立ち、会派を代表して反対の立場で討論に立った相原議員は、反対の1番の理由は「政府の説明不足」だと述べ、2013年の衆参両院の農林水産委員会での決議や、2016年の衆参両院に特別委員会を設置してのTPP12協定案と関連法案の審議の際の衆院での付帯決議にある、国会への速やかな報告や国民への十分な情報提供、丁寧な説明が果たされていないと指摘。政府が繰り返し主張する、「影響があるのは事実だが、総じて国民にとってプラスとなる」「攻めるべきは攻め、そして守るべきは守ることができた」が具体的に何を意味するのかの説明がないため、国民の不安や懸念が払しょくされないと批判しました。

 懸念事項として、(1)食の安全や医療等への影響や、今後のアメリカとの貿易交渉への影響などISDS条項による国家の主権侵害に対する懸念(2)大幅な市場開放を迫られる農林水産業への影響が不明なままであること――等を列挙。「農林水産分野における人手不足に拍車がかかれば、山里荒れ、農地が荒れ、水源が荒れる。結果として、この国で暮らす国民に大きな影響を与える。総理はTPPを『まさに国家百年の計』と言われるが、百年後のこの国を誰が保障するのか」と提起しました。

 TPP11は、多国籍企業や投資家のみを利することになるのではないかとの見方を示し、「政治は、すべての人々に『居場所』と『出番』のある社会と国民の安心生活を保証するのが役割だ」と表明。

 TPP協定では1998年にILOで採択された労働規定を置いており、政府はこれにより「TPP協定締約国における労働環境水準の向上」を図ると説明していますが、ILOが締結を求めている8本の条約の内、日本は「強制労働の廃止に関する条約(105号条約)」「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(111号条約)」が未批准のままだと指摘。日本が「TPP11協定を率先して実施する必要がある」のであれば、他国の労働に関する規律となるべく、率先して未批准のILO条約を批准し、国内法の整備を図るべきだと訴えました。

 相原議員は最後に、TPP11協定によるメリット、デメリット、対応策について政府から今一度丁寧な説明をいただき、「これなら大丈夫」「自分たちの暮らしもよくなる」「生産力アップのチャンスとなる」といった理解を得た上で、あらためて発効手続きのための関連法案の成立を図ることこそが国益につながると述べ、討論を締めくくりました。

【参院本会議】2018年6月29日相原久美子議員討論原稿案(TPP11関連法案).pdf