衆院災害対策特別委員会で28日午前、閉会中審査が行われ、共同会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」から矢上雅義、森山浩行、小宮山泰子各議員が質問に立ち、「令和2年7月豪雨」による災害状況等について政府の見解をただしました。
矢上議員は冒頭、今回の災害で亡くなられた方への哀悼の意を示し、被災された方々にお見舞いの言葉を述べるとともに、行方不明の皆さまの早期発見を願いました。そして、ボランティアの方、国・自治体の職員・関係者、警察、消防、自衛隊等の救助にあたられた方、インフラの整備・復旧に取り組まれた方に「深くお礼を申し上げます」と述べました。
その上で、(1)国道219号の復旧工事を国の権限代行による早期実施(2)被災した中小・小規模の商工業者と農林水産業者への経営再建支援(3)令和2年7月豪雨災害の激甚災害指定(4)被災時の通信網の途絶(5)災害ごみ置き場とボランティアの人手不足問題(6)避難所の拡充強化――など武田良太防災対策大臣らにただしました。
国道219号の復旧工事については、国の権限代行を決定し災害復旧事業に着手し、年度ごとの予算を確保すること、経営再建支援については、総理から対策パッケージを今週中にまとめるよう指示があった旨の答弁がありました。激甚災害指定について武田大臣は、当初基準を満たす5市町村が対象だったが、対象地域を限定しない激甚災害(本激)に指定したと答弁、懸念されていた八千代市、津奈木町、球磨郡の町村も、中小企業の災害関係保証の特例が適用されることとなったとして「財政面に不安を抱くことなく、全力を挙げて復旧復興に取り組んでいただきたい」と語りました。
また矢上議員は、今回の水害で固定電話やインターネット回線が使えなくなり、自治体の災害対策本部、警察・消防、県や国にも電話がかけられず、インターネットがダウンしており国土交通省のライブカメラも見られなかったと振り返り、孤立集落の情報や身内の安否情報、避難後の所在確認などに一番有効だったのは、ツイッターやフェイスブックだったと指摘しました。そして全国の皆さんが孤立集落情報や救助要請情報などをリレーしながら国・県など行政機関に伝えられ、たくさんの方々が救出されることに繋がったと語りました。こうした経験から、被災自治体以外の自治体でも災害情報提供者のバックアップ体制を構築するとともに、地方自治体にはツイッターやフェイスブックを活用した連絡体制の整備を求めました。
武田大臣は、大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手続きを作成しており、通信に関しては、行政機能を確保するために災害時にも繋がりやすい多様な通信手段の確保や、通信事業者やアマチュア無線団体等との協定締結などを促してきたと答弁。「まずは被災自治体における手引きに基づく取り組みの対応状況等を確認」「必要な課題に対しては適切に対応してまいりたい」と述べるにとどまりました。
こうした通信手段の確保については、昨年の「令和元年房総半島台風」の災害でも指摘されていたことであり早急な対応が望まれます。
災害ごみ置き場とボランティアの人手不足の問題について武田大臣は、「大きな問題となっているのが絶対的なマンパワー不足」との見解を示す一方、「ボランティアの受け入れについては、まず一番重要なことは地元の意向」だと語り、「熊本県はまず県民の力でやっていく方向性を示している」として「PCR検査も含めた、よりきめ細かい対応が必要であるということになれば、厚労省等との関係省庁と連携して対応を検討してまいりたい」と後ろ向きとも受け取れる答弁をしました。
災害ごみについても、人吉市では、市やボランティア、建設業者等の地元企業などの関係者が一体となり土砂ゴミ出しを行う取り組みを進めるとの方針であることから、自治体からの要請があれば自衛隊も積極的な支援を行っていただけるものと承知しているとの認識を示し、「連携を促進しながら、被災者支援に努めてまいりたい」と語り、政府として従来の方針以上の答弁はありませんでした。
最後に矢上議員は避難所の拡充強化として、女性や子どもに対するプライバシー保護や性犯罪予防策などについて、また食物アレルギーの子どもたちの適切な配慮について国・県に要望したところ、パーティションの設置や、婦人警官などによる巡回強化、またアレルギーについては保健師の巡回相談の強化などの対策を立てられていることを挙げました。
その上で、同行避難してきた犬や猫などのペットの処遇について、改正動物愛護法(6月1日施行)も踏まえ、環境省のガイドラインで「ペットの同行避難」などが推奨されていることから、自治体向けのペット同行避難のガイドライン作成を求め質問を終えました。
森山議員も冒頭、今回の災害で亡くなられた方への哀悼の意を示し、被災された方々にお見舞いの言葉を述べました。そして立憲民主党としては、災害対策は与野党を超え、また現場に寄り添い、負担を最小にしながら、しっかり後押しをするという方針から、常設の組織として災害対策局を組織し活動していることを紹介。今回も災害対策局が事務局となり、枝野代表本部長とする令和2年7月豪雨災害対策本部で、熊本、福岡、岐阜の現地調査を行ったことを報告しました。
その上で、(1)PCR検査を国の負担で行い県外ボランティア・業者を受け入れられるように調整(2)グループ補助金の拡充(3)被災家屋の公費解体は、家財土砂が家の中に残っている状態、家の中から出さなくてもできるようにする(4)高速道路の無料期間の拡大(5)災害公営住宅の建設(6)自治体が自由に使える財政的な支援(7)風評被害に対する対応(下呂市は被災したものの下呂温泉は大丈夫であることなど)(8)被災生活再建支援法の市町村ごとの適用というルールの緩和――など現場視察などであがってきた声を紹介しました。
そして、(1)大牟田市ではポンプ場の排水量が国の基準を満たしておらず避難所の小学校が浸水被害により孤立。自衛隊により救出されたことから、ポンプ場の基準未達成状況の確認(2)山間部の幹線道路被災時の迂回路の確保(3)自衛隊の災害派遣は本務に支障をきたさない範囲であることが前提であるが、本務化など見直す議論――などを求めました。
さらに今回、内閣府と連携した初の日本赤十字社チームの活動状況、複合災害における避難所設置ガイドラインに沿った取り組み状況について確認し、「先進国最低の居住性と言われてきた日本の避難所のレベルアップにも繋げていただきたい」と述べ質問を終えました。
同日午後には参院災害特委が開かれ、「立憲・国民.新緑風会・社民」から、古賀之士、吉田忠智両議員が質問に立ちました。