衆院総務委員会で26日、電話リレーサービスを法制化する「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案」の審議が行われ、立憲民主党からは、山花郁夫、高木錬太郎両議員が質問に立ちました。
電話リレーサービスとは、聴覚障害者などが電話をする際に、オペレーターが「手話や文字」と「音声」を通訳してサポートするもの。2013年より日本財団などによるモデルプロジェクトが行われていましたが、全日本ろうあ連盟、インフォメーション・ギャップ・バスターなどをはじめとする当事者の方々からの強い働きかけを受けて、公共インフラとしての法制化を実現するものです。電話リレーサービスのあり方については、党の障がい者・難病PTにおいても、団体や政府からのヒアリングを重ねてきました。
質問に立った山花郁夫議員(党障がい者・難病PT座長)は、2001年12月の国連総会で「障害者権利条約」が採択された際に、障害者団体が発言する機会が設けられ、日本からも延べ200名ほどの障がい者団体等の関係者が参加したことに触れ、障がい者をめぐる話し合いに障がい当事者が入る重要性を強調。「本日は電話リレーサービスの新法に関する審議で、多くの当事者が注視をしているので、インターネット中継用に手話通訳などをつけることができればよかった。今後機会があれば、ぜひ考えていただきたい」と述べ、本件については、今後議院運営委員会で議論されることになりました。さらに、24時間365日のサービス提供や緊急通報にも耐えられるオペレーターの質の確保、基礎的電気通信役務の中に電話リレーサービスを位置付けて国費を投入する可能性などについて質疑を行い、同システムがスムーズに機能するための政府の尽力を促したうえで、情報のバリアフリー化をさらに進めるために、野党が提出済みの手話言語法案・情報コミュニケーション法案の審議も要請しました。
続けて高木錬太郎議員は、モデルプロジェクトの終了期と政府の電話リレーサービス開始期との間に空白期間が生じないようにすること、電話リレーサービスを用いた通話に対応している金融機関が3.4%しかないという現状、社会における同サービスの周知徹底などについて質疑を行ったうえで、「電話リレーサービスの制度化に向けて、長年にわたって取り組んでこられた当事者の皆さんに、改めて敬意を表したい。全ての国民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する、あるいは障壁になっていることがあればそれを取り除くという仕事に、これからも邁進していきたい」と締めくくりました。
委員会では質疑終局後、採決が行われ、立憲民主党などが取りまとめた以下の修正案および7項目の附帯決議が、全会一致で可決されました。
(修正案) ※下線を追加
総務大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、聴覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、厚生労働大臣に協議しなければならない。(附帯決議)
1. 電話リレーサービス提供機関および支援機関の運営については、聴覚障害者等その他の関係者の意見を踏まえ、指導監督を行うこと。
2. 電話リレーサービスのオペレーターについては、専門的な技術や知識を要することを踏まえ、手話通訳士、手話言語通訳者又はこれらと同等の資格や技能を有する者を基本とすること。また、オペレーターの養成カリキュラムの策定に当たっては、手話通訳者及び要約筆記者養成にかかる現行制度及び聴覚障害者等その他の関係者の意見を踏まえて行うこと。
3. オペレーター人材を安定的に確保するため、その雇用条件が技能の特性に見合った適正なものとなるよう、電話リレーサービス提供機関に対して助言を行うこと。
4. 電話リレーサービスに対する国民の理解を深めるための、教育活動、広報活動等については、地方公共団体、聴覚障害者団体及び聴覚障害者情報提供施設と協力して行うこと。
5. 電話リレーサービスを用いた緊急通報については、警察、消防等の受理機関が確実に対応できるよう、地方公共団体等に対して周知徹底を図ること。
6. 電話リレーサービスの利用にかかる聴覚障害者等の経済的負担について検証を行うこと。
7. 本法の施行の状況について検討を加えるときは、聴覚障害者等その他の関係者の意見を踏まえること。