衆院予算委員会で28日、令和2年(2020年)度補正予算の基本的質疑が行われ、立憲民主党から枝野幸男代表、大串博志幹事長代理が質問に立ちました。
枝野代表は冒頭、感染症によって亡くなられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、闘病中の皆さん、さまざまな影響を受けて困難な状況にある皆さんにお見舞いの意を、医療関係者の皆さんをはじめ、感染の不安を感じながら止めることのできない仕事のために働かれている方、自粛・営業停止などにご協力いただいている皆さんに感謝と敬意を表明。いま私たちの社会は、第2次世界大戦終結後、最も深刻な危機のなかにあるとの認識示し、「この難局を乗り切るために、必要なことについては与野党の違いを超えて協力を惜しまない。同時に、改めるべきところは厳しく指摘し、足らざるところを補い、遅れていることについては背中を押して命と暮らしを守るために全力を尽くしていく」と力を込めました。
枝野代表は、(1)新型コロナウイルス感染症対策の目的と基本姿勢(2)特に困難な状況にある方々への支援(3)手続きの迅速化――といった観点から質問。PCR検査数をめぐっては、2カ月前の同委員会での質問のときから、安倍総理が強弁する検査能力数と、実際の検査実施数とのギャップが大きすぎる状況が変わっていないと問題視しました。
2月24日に専門家会議が発表した基本方針の具体化に向けた見解では、「帰国者・接触者相談センター」に相談できる場合として、「風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている」「重症化リスクの高い方は4日を待たず、場合によってはすぐにでも相談する旨市民に周知すること」とあり、この見解がいまだに維持されることによって著名人も含め多くの方が亡くなられているのではないかと指摘。帰国者・接触者相談センターに電話がつながらない、あるいはつながっても検査を受けられないあいだに容体が悪化したケースが多々あるとして、どこかのタイミングで「37.5℃以上の発熱が4日以上続いている」との基準を見直すべきだったのではないかと政府の責任をただしました。
これに対し加藤厚生労働大臣は「必ず受診してほしいという目安として出した。逆の意味で使われていることには、柔軟な判断をしていくよう通知も出している」と開き直りましたが、枝野代表は、現場で誤解があるという状況が2カ月以上も続いているのであれば基準を見直すべきだと再度要請。「検査能力がなくて検査ができないのは能力の問題として増やさなければいけないが、現実に検査を受けられない状況のなかで余力があるのであれば検査をもっとできるようすればいい。なぜ基準を変えられなのか」と問いました。
あわせて、帰国者・接触者相談センターの名称についても、実態と合わせる形で名称変更するよう提案。総理のリーダーシップを発揮してほしいと呼びかけましたが、「大切なのは該当する方に限っているのではなく、罹患(りかん)の可能性があると思う方は相談してもらいたい」などと答えるにとどまりました。
総理のリーダーシップが明確に発揮されていない事例として、当初主張していた、収入が激減した個人に対する30万円の給付から、全ての人への一律10万円給付へと突如として方針を変更したことに言及。かねてから野党が主張してきた案であり、それ自体は評価する一方、安倍総理は4月7日の会見では「なるべくスピーディーに給付を行いたい。全員に給付するとなると手に届くまでにだいたい3カ月くらいかかってしまう」と一律給付を否定した理由を説明したが、高市総務大臣は20日、「補正予算案の提出が数日間遅れたとしても、結果的に現金が皆さまのお手元に届き始めるのは早いと考えた」と発言、この間の質疑等でも5月半ば頃には手元に届くとの話になっていることから、「総理の説明は虚偽だったのか。それとも、しっかり調べれば早くできるのにしっかり調べなかったのか」と迫りました。これには、安倍総理は明確な答弁を避けました。
10万円給付に加えて、自粛・休業と補償はセットであると減収に応じて補償をパッケージで打ち出していく必要があると主張。いつ収束するか分からないなか、もともと経営が厳しかった事業者等への支援策として、事業用不動産の家賃猶予・支援制度の創設や、中小・小規模事業者等への持続化給付金の倍増、自治体への臨時交付金を5倍増の5兆円に、経営環境が悪化している医療機関への支援給付金5000億円の創設――等を講じるべきだと求めました。地方の民間のバス会社や、ミニシアターや地方のオーケストラといった芸術関係の団体、地方や地域の持ち味を活かしていた小規模な飲食店や土産物店、旅館などの例を挙げ、「融資や家賃補助などを超えた支援がないと大量の失業者を生み、社会と地域のインフラを崩壊することになりかねない」と述べました。
その上で、「今回の新型コロナウイルス感染症対策目的は、1つ目に命を守ること、2つ目に暮らし(衣食住・仕事・学びの機会)を守ること。新型コロナウイルスによる災害関連死を防ぐこと。間違っても自粛や営業停止の結果として自死を選ぶ方を生まないことが、われわれがやらなければいけない究極の目的だ」と強調。こうした対策に実効性をもたせるためには、すべての人が同じように持っている感染症のリスクと違い、自粛や営業停止といった、みんなで命を守るためのリスクには極端に差があり、もともと弱い立場にあった人たち程、より多くの負担を受けることになると指摘し、「政治の役割はみんなのためにみんなで命を守る。その活動の結果として、一番大きなリスクと負担をかかえる人たち、その人たちをしっかり守る。そのコストを負担能力に応じてみんなで分かち合うことが、大事な基本哲学ではないか」と提起しました。
安倍総理は「困難な状況にある方々にとってはより状況は厳しくなる。そうした方々に対して政治は光を当てていくことが重要であり、生活を支援していくことは当然だ」と応じたものの具体的な話はなく、枝野代表は「社会全体で能力に応じて負担をし、リスクや負担の多いほど厚い支援をしていく。この哲学を明確に施策を進めてもらいたい」と注文をつけました。
また、災害対策基本法で今回の新型コロナウイルスを災害に位置付け災害救助法を適用することで、応急仮設住居の供与などさまざまな支援策を講じることができるとして、検討を求めました。
枝野代表は最後に、性善説に立った対応をしてほしいと発言。「1人の不正を恐れて100人の命を失ってはならない」と訴えました。
大串議員は(1)布マスクの支給(2)GoToキャンペーン――について質問しました。
妊婦用マスクの納入元の4社のうち非公開になっていた1社がユースビオ(本社・福島市)だと昨日の菅義偉官房長官の会見で明らかになったことを受け質問。ユースビオ社の定款が従来は再生可能エネルギー生産システムの研究開発及び販売などであったが、4月になり貿易及び輸出入代行業などの事業が盛り込まれたと指摘、競争入札ではなく任意に決定する随意契約であったことから、選定した経緯についてただしました。
加藤厚労大臣は、「他の布製マスクの供給をされてる方を含め、政府において広く声がけをさせていただいた」「経産省主体になりやっていて、それに応えていただいた事業者の1社」だと説明しました。
大串議員は、「(地元に縫製工場が多くあるが)声がかかったという話は一度も聞いていない」と指摘、あらためて随意契約であることから相当な説明責任が求められるとして、あらためてただすと、加藤大臣はマスクをはじめとしてさまざまなものが入手できないことから、異業種にもお願いをしており、納品の質や能力、時期を守るところであれば積極的に対応していく姿勢だと答え、ユースビオ社の選定について詳細な答弁はありませんでした。
こうしたことを受け大串議員は、安倍総理に対し4月1日に布マスクを1世帯あたり2枚配布しようとした背景について質問すると、安倍総理は、質疑の最中に政府が配布したマスクから、地元のマスクに付け替えた大串議員に対し次のように答弁しました。
最初はこの布マスクしていただいたんですが、途中から息苦しいってことで外されました。私ずっとしてるんですが、あの全然息苦しくはございません。あの意図的にですね、そうやって貶めるような発言は、やめたいただきたいと本当に思います。
そこでですね―(棚橋委員長:ちょっとお静かにお願いします)―マスクについてはですね2月以降、設備投資補助などによりですね、大幅増産に取り組んできましたが機械設備の輸入や原料確保などの制約もあり、急激な事業の拡大に追いついておらず、残念ながら店頭での品薄状況が長引いているというのが現状でもあろうと思います。
こうした中でマスクが手に入らず不安に感じておられる皆さんもおられると認識いたしまして、これまで医療機関へのサージカルマスクの優先的な配布に加えまして、介護施設や小中学校などに、ま、先ほど妊婦さんにということでございましたが、実態としてはですね、介護施設や小中学校などに感染防止、拡大防止の観点から布マスクの配布を行ってきました。
その上でマスクが手に入らず困っておる、おられる方々がいらっしゃるとの認識のもとですね。国民の皆様に幅広く布マスクの配布を行うことをしたところでございます。
先ほど申し上げましたように、小中学校あるいは介護施設等々に送らせていただきましたが、息苦しいとそういう苦情は今のところ聞いてはいないということは申し上げておきたいと思います。
布マスクはですね、咳などによる飛沫の飛散―(大串議員:経緯を)―いやこれは大切なところですから、飛沫の飛散を防ぐ観点から、感染拡大防止に…これも経緯の一つでありますから聞いていただきたいと思いますが…感染拡大防止に一定の効果があると考えておりまして、米国のCDC(=アメリカ疾病予防管理センター)もですね、利用を推奨する旨の発表を行った他ですね、シンガポール、フランスのパリ、タイ・バンコクなどで市民に配布する動きが広がっていると承知をしております。
また洗濯することでですね、繰り返し利用できるため皆さまに洗濯のご負担をおかけするが、急増しているマスク需要のー(発言不明)ーの観点からも有効と…ちょといま答弁中、答弁中でございますから、もうしばらくの辛抱、辛抱でございます。―(棚橋委員長:恐縮です。もう少し、まず聞いてから、委員長の方で判断しますから)(大串議員:区切ってください)(棚橋委員長:はいどうぞ総理、お続けください)ーはい、それでは委員長に従って答弁させていただきますが…また、急増しているマスク需要の抑制の観点からも有効と考えているわけでございまして、先日マスク増産に取り組んでおられるユニ・チャームの高原社長からもですね、今般配布される布マスクとの併用が進むことで全体として現在のマスク需要の拡大状況をしのげるのではないかとの話もあったところでございます。
こうした経緯からですね、今お話をさせていただいた中において、…すみません、ちょっと私が答弁している最中でございますから―(棚橋委員長:もう今、今結論が出てきますから、今結論が出ますから、ちょっと聞いてください)―ただ今経緯ということをおっしゃっているわけですから、どうしてそういう判断をしたかということであればですね、どういう需給の状況だったかということについて、あるいはその有効性について説明するのはこれは当然、当然のことではないでしょうか。―(大串議員:簡潔にお願いします)(棚橋委員長:恐縮ですが、まず皆さまご静粛に、経緯を聞かれたわけですから)ー当然のことを、ご説明しているなかにおいてですね、質問者の方から、立たれてその答弁を遮られては、これはやりとりにはならないのではないかということは、申し上げておきたいと思います。今申し上げましたように、そういう需給状況があるという中において、有効であろうと考えたわけでございます。(約4分の答弁)※4月1日に布マスクを配布しようとした背景についての質問で、安倍総理が挙げた、CDCが利用を推奨する旨の発表を行ったのは3日(米国時間)であり(着用を推奨するガイドラインを作成する可能性があるとの報道は3月31日)、ユニ・チャームの高原豪久社長とテレビ電話方式の会議を行ったのは16日。
また大串議員は、今回の補正予算に組み込まれている、終息後の観光需要を喚起する「GoToキャンペーン」(1.7兆円)について、観光業や運輸業は大切だとした上で、こうした予算は現段階では一日の生活費に変える政治決断をすべきだと指摘し、質問を終えました。