衆参両院の議院運営委員会で7日、改正新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令する意向を表明し、各党会派の質疑が行われました。立憲民主党からは、衆院で枝野幸男代表、参院で福山哲郎幹事長が質問に立ちました。

 両院で冒頭、安倍総理は、改正特措法第32条第1項に基づき緊急事態宣言を発令することを表明し、(1)期間を1カ月(2)実施すべき区域を東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・兵庫県・福岡県の7都府県――と説明。「社会機能維持のための事業継続は引き続きお願いしつつ、可能な限りの外出自粛等に全面的にご協力をいただきたい」と協力要請をしました。

 枝野代表は冒頭、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方への哀悼の意を示すとともに、療養中の方々にお見舞いの言葉を述べました。さらに感染拡大防止や感染者治療のため日夜尽力されている医療従事者をはじめ対応にあたられている方々に感謝と敬意を表しました。

 質疑では、政府の対応は後手に回っていたとして(1)湖北省を除く中国からの入国制限の遅れ(2)専門家会議が2月16日まで開かれなかったこと――は、いずれ厳しい検証が必要だと指摘しました。

 その上で、緊急事態宣言の制度を含む、新型インフルエンザ特措法が適用可能であるとして2月から活用を提唱してきましたが、「総理がなぜか法改正にこだわり適用が遅れたことは大変残念」であるとしながらも、「緊急事態を宣言し感染拡大防止策を強化しようとする事は遅きに失したとはいえ、一定評価」すると述べ、「国家的危機にあたって引き続き協力できることは最大限協力」「同時に政府の誤りや遅れについては具体的提案とともに厳しく指摘をし国会としても監視機能を果たしていく」と表明しました。

 こうした観点から、

(1)検査と治療の体制について
 感染の疑いがあり、医師が必要性を指摘した場合であっても、重症化するまでPCR検査を受けられなかったという声がいまだに少なくない。検査を受けられず、隔離が遅れ、結果的に感染を拡大したケースも少なくないと思われる。医療関係者はもちろん、相談にあたる保健所職員なども疲弊しており、抜本的に体制を強化すべき。
 早期発見こそが感染拡大を防ぎ、医療崩壊を起こさず感染者の命を救うために最も重要であると考えるが、総理の認識は。
 検査体制強化の実現時期、検査機関や保険所の人員増強を含めた具体策とあわせて答弁を。

(2)自粛や営業停止と金銭的支援との関係について
 既に収入の道が閉ざされ、明日の暮らしにも困る人たちから悲鳴が上がっている。多くの小規模中小事業者が事態の収束前に倒産しかねない危機にある。時間との戦いである。
 個人に対する即時一律の給付、損失に対する減収補てん、緊急事態宣言が出されればさらに強く営業の停止や自粛が求められ、対応は待ったなし。自粛や営業停止は感染拡大を防ぐという公の目的のために一部の人々に大きな負担を強いている。しかもそのことにより明日の最低限度の暮らしすら成り立たなくなっている。
 必要な現金給付や減収補てん、経済的支援の性格は通常の景気経済対策とは全く異なる。憲法29条の財産権の保障や、健康で文化的な最低限度の生活を保障した憲法25条第1項に基づく政府の責務と考えるが、総理の認識は。

(3)想定している最悪の事態について
 過去に経験したことがない深刻な危機にあたっては、常に最悪の事態を想定して対処することが求められる。人は危機に際して正常性バイアスに陥りがちだが、為政者にそれは許されない。
 ところが、初動の遅れに始まり、感染がどこまで拡大するのか見通しが立たない現場で終息後の振興策が華々しく打ち上げられるなど、実態を軽く見ているのではないかと不安を抱かずにはいられない。
 想定している最悪の事態とはどのようなものか、緊急事態宣言の期間が本当に1カ月で収束に向かわせることができるのか、その根拠とあわせて総理の基本的認識は

――の3点を質問しました。

 安倍総理は、

 (1)PCR検査について、政府として引き続き医師が必要と判断した患者が確実に検査を受けられるように取り組む。緊急経済対策においてPCR検査体制の1日2万件への倍増、保険所の体制整備によりクラスター対策を抜本的に強化をしていく考え。

 (2)自粛要請により生ずる個別の損失に対する補償については、政府としてさまざまな事業活動の中で発生する民間事業者や個人の方々の個別の損失を直接補償することは現実的ではない。その上で45兆円を超える資金繰り支援、総額26兆円の税・社会保険料の猶予制度、事業者向けの現金給付などで、事業継続を後押しし雇用を守り抜いていく。

 (3)想定している最悪の事態について、今のところ諸外国のような医療崩壊といった最悪の事態は生じていないが、こうした事態を回避するために政府や国民が最善の努力を図っていくことが重要。緊急事態宣言の期間は、外出自粛の徹底等の取り組み効果を確認するために潜伏期間なども考慮し1カ月程度が必要、専門家の意見も聞いて定めた。この1カ月程度の間に、できれば約8割、最低でも7割は人との接触を減らす努力をしていただきたい。

――と話し、正面からの答弁はなく、特に3点目についてはまったく回答がありませんでした。

 参院では、福山哲郎幹事長は次のような質疑を行いました。

(福山)2月下旬の総理の自粛要請から3月いっぱいにかけて日本の被害額、損失額、各業種団体、総額でいくらぐらいか把握をしているか。

(西村大臣)個別の事業者の損失の累計は難しい。ただGDPは全体としては大幅な減少になることは、間違いない。そういったことも勘案しながら考えていきたい。

(福山)把握されていないことは非常に残念。東日本大震災の際には3月11日に発災し、3月22日に原発事故以外の震災の被害額を16兆から25兆と試算をし、それに合わせて補正の準備をした。
 緊急事態宣言を発令した場合、罰則規定がなくてもそれに基づき各都道府県知事が自粛要請等をする。このことの責任は国にもあるということでよろしいか。

(安倍総理)国が指定した。そして国が方針を決めており当然国も責任を持つ。

(福山)自粛の協力要請をするればするほど強制の意味合いが強くなる。だからこそ自粛要請と補償はセットだと申し上げている。
 原発の賠償では、事業の不能取引減少分について一定の減収分の指針をまとめた。給与等の減収分についても合理的な範囲での賠償をまとめました。観光についても予約の控えや解約等についての推認を行った。
 常に賠償のスキームを作るよう求めていたのはこうした前例があるから。被害総額も分からず、スキームもないことは、非常に残念。
 自粛要請と補償はセットだと考えるが、いかがか。さらにセットであることにより、自粛要請の効果が上がり、感染防止のために家に待機していただくことが可能になると思うがいががか。

(安倍)原発事項については、東電に大きな責任があり、またエネルギー政策を含めて推進してきた国としても当然責任があった。今回、コロナウイルス感染症に打ち勝つために、さまざまな自粛をお願いをしており、性格は少し違うと思う。
 この自粛要請により生じる個別の損失に対する補償については、直接補償することは現実的ではない。
 しかし無利子無担保融資など45兆円を超える資金繰り支援、総額26兆円の税・社会保険料の猶予制度、事業者向けの最大200万円の現金給付など、事業の継続を後押しして雇用を守り抜いていきたい(衆院と同様の答弁)。

(福山)事業の継続も雇用も守れず、悲鳴があがっているから申しあげた。
 現金給付30万円は、自治体が窓口で自己申告になっておりトラブルを起こす。
 それぞれの自治体に、国が責任をもって窓口を作りワンストップでさまざまな手続きが出来るようにすべき。自治体に任せるのは無責任。

(西村)30万円については、できるだけ分かりやすい基準で窓口の方が判断しやすいようにしていきたい。
 地方(自治体)には交付金1兆2000億近い交付金が行くので、こうしたものも活用しながら人材を確保し、窓口でしっかり対応してもらえれば

(福山)1兆円も1000以上の自治体に分ければ大した金額ではない。自治体から悲鳴があがっている。
 今の話も、分かりにくい判断基準だから申し上げている。緊急経済対策を見て、対象かどうかわからない人が窓口に押しかけたら二次感染の可能性も出てくる。
 そういったことについて、きめ細やかにやっていただきたい。検査は相変わらず増えない、アビガンについては備蓄はするが、投与の基準について厚労省から医療機関に出ていない。
 いろいろなことが問題になっているので、これからも野党として政府に言うべきことは言っていきたい。