参議院予算委員会で16日、「現下の諸課題(新型コロナウイルス対応等)」についての集中審議が行われ、蓮舫、水岡俊一、有田芳生各議員が質問に立ちました。

 蓮舫議員はまず、国会審議をストップさせ、安倍総理から厳重注意を受け、発言を撤回し謝罪した3月9日の参院予算委員会での森法務大臣の「個人的評価」とする答弁を取り上げ、「虚偽であったことを認めるか」と質問。森法務大臣は「私が述べた個人的な評価は、法務省の認定した事実と異なるものであった」と認め、この事実と異なる答弁によって検察官を愚弄したことに「検察の活動について誤解を招きかねないものであり、検察を所管する法務大臣として誠に不適切で真摯に反省し答弁を撤回した。あらためて深くお詫び申し上げる」と謝罪しました。蓮舫議員は「森大臣の発言が誤解を生んだ。そのことにもっと責任感を持つべきだ」と指摘しました。

 次に、13日に成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案」をめぐる、11日の衆院法務員会での宮下内閣府副大臣の答弁を取り上げ、内容についてあらためて確認。宮下副大臣の答弁は、特措法に基づき対策を実施する責務を負う「指定公共機関」に新たに民放を指定した場合、総理が報道内容に「指示」できるかをただしたのに対し「法の枠組みとしては、民放を指定して『今この情報を流してもらわないと困る』と指示を出し、放送内容について変更、差し替えをしてもらうことは本来の趣旨に合う、あり得る」とするものです。

 宮下副大臣は、「放送法(第3条〈放送番組編集の自由〉『放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない』)との整理ができていなかったため誤った答弁をした」と謝罪しましたが、蓮舫議員はこの答弁によって衆院での同法の採決に支障をきたしたと強く批判。安倍総理に対し、「森大臣は国会で虚偽を答弁し、宮下副大臣は過去の議事録さえ読まずにいい加減な答弁をし、衆院での国会議員の採決に大きな影響を与えた。罷免すべきではないか」と迫りましたが、安倍総理は「二度とそうしたことがないように緊張感をもって職責を果たしてもらいたい」と述べるにとどまり、蓮舫議員は「あまりにも国会軽視だ。誰も責任を取らずに詫びれば済むのか」と指弾しました。

 新型コロナウイルス感染対策をめぐっては、安倍総理が2月25日に大規模イベントの自粛、同月27日に全国の小中高校と特別支援学校に一斉休校を要請したことに法的根拠がないこと、14日の記者会見では一転して安全対策を取った上で、学校側に卒業式の開催を促すなど場当たり的な発言を繰り返していることを問題視。また、全国一斉休校要請によって子どもの世話で休まざるを得なくなった親らへの休業補償額について、正規雇用の人たちの日額8330円の上限に対し、フリーランスは日額4100円の上限と半額以下であることに「あまりにも差がある」、PCR検査をめぐっては、安倍総理が1日あたり4000件(2月29日)、8000件(3月14日)を超える検査能力があるとする一方で実施人数は平均1000人前後にとどまっていることに「あまりにも乖離がある」などと述べました。

 その上で、児童手当の仕組みを利用した子育て世帯支援の増額や、公共料金の減免、納税の猶予、社会保険料の減免等を提案。米国では感染症対策に5.4兆円、英国は4兆円規模の経済対策、イタリアは3兆円規模の経済支援策を打ち出すなか、政府は衆院の予算審議では野党提出の組み替え動議に応じず153億円の予備費で足りるとして採決を強行、参院の審議で3月10日にようやく緊急経済対策を打ち出したものの、予備費わずか2400億円程度の活用だとして「感染症対策、経済対策の危機感がまったく足りないといわざるを得ない」と断じました。

 水岡議員は、小中高校などの一斉休校を判断した根拠について質問。安倍総理は、専門家の「感染の拡大のスピードを抑制することは可能である、そしてここ1、2週間が感染が急速、感染の拡大が急速に進むのかあるいは終息するのかの瀬戸際である」との見解を元に政治的に判断したと答弁しました。これに対し水岡議員は、「法律ののりを越えて、越権行為をしてまで総理は全国の自治体に要請をしていいのか」と語り、総理には判断をする権限はないことを強調しました。

 また、休校からの再開のめどについて萩生田光一文部科学大臣をただすと、「国として科学的な根拠も含めながら示していく必要がある」との認識を示しました。また新学期に向けて、「(今回の)休業期間中に1人も感染者が出ていない自治体はどうするべきか、隣接の自治体で出ている場合はどうするか、こういうことを少しきめ細かく指針を示して、各自治体、教育委員会の判断を仰いでいきたい」と説明しました。

 有田議員は北朝鮮による拉致問題について取り上げました。質問の冒頭、拉致被害者横田めぐみさんの母、早紀江さんが産経新聞に連載している『めぐみへの手紙』を紹介。2月4日付けの記事の一節「次の誕生日こそ、あなたと一緒に祝いたい。それを実現させるのは、日本国であり、政府です。政治のありようを見ると、『本当に解決するのか。被害者帰国の道筋を考えているのか』と不安や、むなしささえ、感じることがあります」を読み上げ、連載の中で(1)拉致被害者に時間がないのと同時に、拉致被害者家族にも時間がない(2)この問題を解決できないのは国家の恥だ――ということを何度も語っていると指摘しました。

 第2次安倍政権発足後の2012年12月28日に拉致被害者の家族会と面談し、拉致問題について「必ず安倍政権において解決をさせていただく決意」との趣旨の発言を引用。2002年年9月17日、当時の小泉純一郎総理が訪朝し日朝首脳会談を行い5名の拉致被害者が日本に戻ってきましたが、安倍政権でなぜそれができないのか、小泉政権との違いをただしました。安倍総理は、官房副長官だったことから当時の情勢を分析し説明しましたが、安倍政権との違いについては語りませんでした。

 重ねて有田議員は、小泉政権では1年前から非公式の交渉を25回以上重ね、交渉相手がトップと関係しているかを見極める外交があったと指摘した上で、改めてなぜ進めることができないのかただしました。

 安倍総理は、「金正恩委員長御自身にこの問題を解決をしなければいけないという決断をしていただく必要があります」と答弁。米朝首脳会談や中朝首脳会談の場で安倍総理自身の考えを伝えてもらうという努力をしていると説明しました。

 これを受け有田議員は「政治は、外交は結果なんですよ。総理がそれ一番よく御存じじゃないですか」「結果が出ていないんだから、だから頑張っていただきたいんですよ」と語りました。

 さらに、14年7月に日経新聞が、北朝鮮側から日本に対し拉致被害者が複数いると生存者リストを提示、そこに政府認定拉致被害者及び特定失踪者もいると報道したことについて、政府は事実と異なるものであるとして、外務省、内閣官房拉致問題対策本部事務局、警察庁の連名で抗議、速やかな訂正を求めたことを菅官房長官に確認。一方で、18年3月に共同通信が、14年に北朝鮮への入国について日本側に伝えた報道に、菅官房長官は「今後の対応に支障をきたすおそれがある」として明言を避けました。さらに19年12月26日の共同通信の「北朝鮮拉致情報、政府高官が封印 田中実さんら2人生存、首相了承」との記事について、安倍総理は「先ほど担当大臣(菅官房長官)から答弁をさせていただきましたように、北朝鮮による拉致被害者については、平素から情報収集に努めております。(略)今後の対応に支障を来すおそれがあることから報道の逐一についてお答えをすることは差し控えたい」と、こちらも明言を避けました。

 こうした答弁に終始する政府に対し有田議員は、「もう6年前ですよ、放置しているじゃないですか。この情報は、政府高官の情報源の話なんですよ。皆さんの周りですよ。生きている人を何で助けないんですか」と訴えました。そして、「日本政府は隠蔽と疑われるようなことはせず、交渉の中身を全て表に出すべきだ」との元家族会の事務局長の増元照明さんの言葉を紹介し質疑を終えました。