森法務大臣は12日、自らの国会での事実無根な答弁について撤回し、謝罪をしました。

 森大臣は、東京高検検事長の定年延長をめぐり、法解釈を変更した理由について9日の参院予算委員会で「社会情勢の変化」と説明。小西洋之議員が「どのような社会情勢の変化があって、日本中の検察官に勤務延長が必要になったのか」とただすと、森大臣は「例えば東日本大震災のとき、検察官は福島県いわき市から国民が、市民が避難していない中で、最初に逃げたわけです。そのときに身柄拘束をしている十数人の方を理由なく釈放して逃げたわけです」と事実無根な答弁をしました。

 この発言を問題視した山尾志桜里衆院議員が11日午前の衆院法務委員会の質疑で「『検察官が最初に逃げた』『理由なく釈放した』というのは事実か」と確認したところ、森大臣はいったん「事実だ」と発言した上で、さらに追及されると「個人の見解だった」と弁明。さらに山尾議員が「政権の見解か」と尋ねると、森大臣は「『逃げた』と『理由なく』というところは個人の見解」と答えました。そこで与野党問わず委員の皆が固まり、最終的には委員長の判断で休憩となり、そのまま散会となりました。その時の状況について山尾議員は「私自身としては法務大臣として今後、法務行政を引っ張っていくことは不可能だと思った」と記者団に語りました。

 森大臣は同日午後の参院予算委員会で自民党議員の質問に答える形で「不適切だった」と述べ、答弁を撤回。しかしながら、石橋通宏議員があらためてこの事実を確認すると、これには答えず、同委員会も審議が止まり、散会となりました。

 こうした事態に衆参の野党各党・会派は、大臣が自分の部下とも言える組織の、震災当時の事実無根な話を持ち出し、組織に対し誹謗中傷していることに、「単に『お詫びした』では済まない。政治責任をきちっと取るべきだ」との認識で一致。

 12日午前の与野党国会対策委員長会談で安住淳国対委員長は、「事実と違うことに基づいて発言するような人を法務大臣に置いたまま質疑をするのは無理である。与党側が、森大臣の政治的責任をきちんと明確にするなり、われわれが納得できる対応をするなりしない限り本会議に出席することはできない」旨を伝え、対応を与党に委ねました。

森法務大臣の答弁内容について法務省が事実関係を明示

 同日午後には、安住国対委員長と自民党の森山国対委員長は、大島衆院議長と赤松副議長と会談。議長、副議長からは、同日の本会議では東日本大震災の被害者に対する黙祷や、与野党協議を重ね20項目の付帯決議を付したインフルエンザ等対策特別措置法改正案の採決等が行われる予定だったことから、出席を求める提案がありました。その後、安倍総理は森大臣を厳重注意、森大臣が「発言を撤回し、深くお詫びする」と謝罪したことをもって、衆院本会議に出席することになりました。

 本会議開会前の代議士会で安住国対委員長はこうした経緯を説明するとともに、「森法務大臣の発言の真意をめぐって明日(13日)、衆院法務委員会、参院予算委員会でただしていく。引き続き辞任を求めていく」と述べました。