枝野幸男代表は5日、定例の記者会見を国会内で開き、冒頭、(1)公文書の管理に関するガイドラインにある「歴史的緊急事態」の適用(2)政府が毎年3月11日に行っている東日本大震災追悼式の中止(3)福島県双葉町で避難指示の一部解除――について発言しました。

 枝野代表は冒頭、昨日の与野党党首会談について、会談後に記者団に説明した以上に付け加えることはないとした上で、直接のテーマではないと断った上で、与野党党首会談を求めるような事態であれば、公文書の管理に関するガイドラインにある「歴史的緊急事態」に該当するとの認識を示し、適用を速やかにするよう求めました。
 「歴史的緊急事態」は、国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項であり、社会的な影響が大きく政府全体として対応し、その教訓が将来に生かされるようなもののうち、国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急事態を指し、政府全体として対応する会議その他の会合について、将来の教訓として極めて重要であり会議等の性格に応じて記録を作成することを規定しています。

 政府主催の東日本大震災追悼式が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、取りやめる方向で最終調整がされていることについて、「大変残念であると同時に、こうした事態でございますのでやむを得ない側面もある」「ただ、人が集まる追悼式典はやらないにしても、何らかの追悼の意を表し、決して風化させないという政府としてのメッセージなり対応なりも必要」と語りました。

 また、東京電力福島第一原発事故の影響で全町避難が続く福島県双葉町で昨日(4日)、JR常磐線双葉駅周辺の一部地域で避難指示が解除されたことについて、「避難地域指定などをする時に、5年10年という単位で(時間が)かかると、断腸の思いだったことを思い出します。帰宅困難区域のごくごく一部であっても解除できる地域が出たことは、その時の断腸の思いを振り返り、それだけの時間が経ったという思いと共に、まだまだ故郷に戻れないどころか入れない皆さんの厳しい辛い思いがある。さらなる除染、あるいは環境整備を進めていき、そうしたご苦労されている皆さんの声に応えていかなければならないと改めて強く感じている」と語りました。

 記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。

Q:政府のこれまでの新型コロナウイルス対策について、マスクの増産やPCR検査の拡充など相次いで公表してきたが、現状についてどう受け止めているか

 皆さん昨日の党首会談ばかりに目が奪われていますが、法律が通るとしても1週間以上先のことです。
 今足元では、PCR検査が結局は増えていかない、増えていないという状況の中で、例えば妊婦さんや、万が一感染をしていた場合にリスクの高い方がなかなか検査を受けられないことで、悲鳴のような声は決してなくなってはおりません。今一番急がれるのはPCR検査であると思ってます。まさにそれは今日明日あさってという単位の中でやらなければならない。
 さらには当事者や地域の皆さんの努力と工夫、無理のもとで、いろいろな対応がされていますが、準備なき一斉休校による、さまざまな問題は、ある意味深刻化をしていると思っております。
 突然、居場所がなくなり、単なる休校だけではなくて、公民館、児童館、図書館のようなところも使えないなど、子ども達の居場所について深刻な状況になっておりますし、子ども食堂などが開始できないということによる影響、そして何よりも給食等の業者の皆さんが場合によっては倒産などの危機にもさらされている。今何よりも、そうしたことについて急がなければならないと思っています。
 指摘を受けたマスクですが、当初の発表では、いかにもすぐにマスク不足は解消されるかのような発信をされていたことが、結果的に大きな間違いだったと指摘をせざるを得ない状況だと思っています。
 増産が進んで月6億枚になったとしても、日本の人口1億人以上いるわけですから、到底足りない枚数です。そうした状況で、特に高齢者施設や、非常に狭い場所に準備なき一斉休校によって押し込められている放課後児童クラブの中のお子さん、もちろん感染症外来などの皆さんは、さらに高度な医療用マスクを使わないといけないと思いますが、一般の開業医の皆さんのところにも熱などで来られた方に対応するのにマスクなど必要だと思いますが、そうした必要度の高いところに的確に、限られたマスクを流通させることがまったく進んでいない。総数が足りないのであれば必要度の高いところにしっかり流していくことが必要。
 マスクについては、ようやく民間事業者の判断も含め、転売で暴利を貪るために大量購入することへの対応が出始めていますが、これは明らかに遅きに失したと思っています。早い段階から大量に買い占めて転売で利益をあげようということには、早い段階で阻止する施策をとらなければならなかったのではないか。

Q:河井克行、案里夫妻の秘書たちが逮捕されたことへの受け止め。また総選挙が近づいていると言われる中で、広島3区について野党第一党としてどのような姿勢で臨むのか、また人選については

 ここにおいでの各紙、一般紙の皆さんの報道を前提にすれば、いつ頃『逮捕許諾請求』(国会議員を国会の会期中に逮捕することについて国会の許諾を求めること)が来るのか待っている状況だと思っています。
 後者については、もし選挙等になったら、野党で候補者を一人に絞り、しっかり議席が取れるように。広島県は地域におけるそういった繋がりが積み重ねられていると思っていますので、地域におけるベースを大切にしながら対応していきたい。

Q:新型インフルエンザ等特措法改正について、政府に協力する代わりに政府側に飲ませた条件について確認したい

 こうした問題で駆け引き、取り引きをするつもりはありません。
 昨日、私からどういう理由で何を申し上げたかは直後のブリーフでほぼ全文、再現したかのようにご説明しています。

Q:午前中の参院予算委員会で石川大我議員が、加計学園の推薦入試で韓国人の方々の面接試験を一律0点にして不合格にしていたという報道について萩生田文科大臣に事実確認をし、大臣は確認中とのことでした。この受け止めと、これが事実であるならば今後野党としてどのようにこの問題について追及をしていくか

 報道は承知しております。ただ事実確認が出来ている話でありません。
 「仮に事実であれば」という仮定の話で答えるには大きすぎる、深刻すぎる問題。
 「仮に」ということで答えた先の事は大変重たいことになるレベルの話なので、事実関係が確認されていない段階で申し上げるのはすこし避けたいと思います。
 もし事実だとすれば相当な問題だという認識だけは申し上げておきます。

Q:野党として引き続き事実関係は追及していくか

 事実関係を明らかにしていただくのは当然のことだと思っています。

Q:昨日、国民民主党の小沢一郎衆院議員と会談されたと思うのですが、可能な範囲でどういったやり取りをされたのか

 安倍政権・自公政権を倒すために、野党を大きな構えで臨んでいきたいという話をさせていただいて、その点については一致をしていると思っています、大きな構えについて。
 それから、小沢先生は昔から本当に全国の小選挙区の状況を頭にインプットされてるんだなと改めて目の当たりにいたしましたが、あの選挙区はどうだっけと野党候補者がいない空白を埋めていかなければないと。結構そこについては具体的な話をさせていただきました。

Q:冒頭の発言で、公文書管理のガイドラインにある「歴史的緊急事態」だというのは当然で指定を求めたとの話がありました。これは東日本大震災を受けガイドラインが修正されたもので、当時、東日本大震災での原発事故等の会合でも確かメモが無いなどもあったかと思うのですが、当時を知る者としてこうした会議録を作る重要性について教えて下さい

 あの時は4月1日が公文書管理法の施行日で、そこから議事録作成義務が生じていたのですが、当時もお詫びを申し上げましたが、発災から1カ月経っていないような状況で、公文書管理法の施行自体まったく意識がない状況で、議事録を作らないまま何回か過ぎておりました。
 ただ私の解釈では、あそこでメモを取っている役人の皆さんのメモなども公文書だと思っています。そして実際にあの時のメモを取っていたすべての役所の皆さんにそのメモの提出を求めて、そのメモをつなぎ合わせることによって、ほぼ議事録と変わりのない、大差のない議事要旨を復元することができました。
 その教訓も踏まえて、初めからこうした宣言をしておけば、緊急事態であっても議事録を残すことについて見落とすことがないという思いが、ガイドラインを作った時は岡田副総理だったかなと思いますが、あったんだと思っています。
 私から言わせれば、あそこ(ガイドライン)に書いてあることは当たり前のことで、万が一事後的に検証する上で足りないことがあった時に、いろいろな打ち合わせ等で使われている役所の皆さんのメモなども含めて歴史的緊急事態ですから、すべて当面は保管をしておくという対応までするべきだと思っています。

Q:低所得者層だけではなく、大不況のようなことも考えられるわけですが、、どれくらい危機感を持っておられるか

 感染がどうなるかによって、本当に過去にないようなものすごい状況になるリスクもあると心配をしています。
 感染拡大をいかに小さく抑えるか、そのことによって社会の混乱を抑える事にいま全力を挙げている時です。いろいろな事が想定できる今後については、もちろん最悪の場合も頭に入れてシミュレーションしながらですが、今議論することではないと思っています。
 今、現に起きているのは、感染拡大とさまざまな社会活動の自粛によって、消費そのものが落ち込み、収入そのものが落ち込んでいる。そのことによる多大な影響を防がなければならない。感染状況を解消しなければ社会活動は回復しませんし、収入自体が落ち込んでることについては、収入そのものを補わなければ、そうした皆さんの生活は成り立ちません。
 したがって、いかにやむを得ない理由で所得がなくなっている、減っている、特に経済的弱者の皆さんの所得を下支えするのかと、消費そのものが落ち込んでいるなか、この社会的な活動を感染防止のために自粛せざるを得ない状況の中で、どうやって消費を作るのか。このことこそが今求められてる経済対策である。

Q:フリーランスの方の話をされていましたが、具体的にフリーランスの人たちを救済するにはどのような施策が必要であるか

 これは政府も苦慮していると思いますが、大変難しい。
 なぜ難しいかというと、例えば予定されていた公演が政府の自粛要請でなくなってしまい、そのことで仕事がなくなった。先週26日に突然、人がたくさん集まるイベントは止めてくれと自粛要請が出て、その日のPerfumeの東京ドーム公演が中止になっています。これは具体的に生じた損失が計算できる話になります。自粛要請を受けて今まで切符が売れていた分、払い戻しをしたので損失は分かりやすいことになります。
 例えば、まだ切符を売っていない、あるいは当日券が主たる収入というものについて、いくら収入があるのかは予想でしかできません。そうすると先の予定のものほど生じた損失がいくらなのか、なかなか確定出来ないのがフリーランス皆さんの仕事の特徴です。
 したがってやるとすれば、それこそ直接支払制度のような生活支援しかないのではないか。所得収入が今ない方には、どういう事情かに関わらず最低限の生活費について給付するという制度をしっかりと考えていかなければならないのではないか。実は給付付き税額控除という制度はこうした時にも利用ができるいい制度なんだと私は思っています。
 これは具体的な立憲民主党としての政策であるとか、枝野の政策いうことではありません。こうしたことまで視野に入れた議論をしないと、フリーランスの皆さんの生活を支えることはできない。
 あるいは自営業者のかなりの皆さんについても言えると思います。農業者の皆さんについても、給食に供給することを契約していたものは計算できるけれど、例えば万が一学校給食が4月にできなくなった時には、その分は契約できてなかったわけですから、その損失は計算できない。
 そうした場合には、生活そのものの保障のような形を考えていくしかないのではないかということを含めて、急いで議論しなければならない。残念ながらそこの議論が政府側でも進んでいないという危惧をしていますので、ぜひ急いでやっていただきたい。ここはあまり政府側を批判・追及するつもりはありません。難しいというのはよく分かっています。でもそこはしっかりと知恵を出していかなければならないし、われわれもいい知恵があったら出していきたい思っています。