参院予算委員会で2日、新年度(令和2年度)予算案の基本的審議が始まり、立憲・国民.新緑風会・社民から福山哲郎、斎藤嘉隆、蓮舫各議員らが質問に立ち、新型コロナウイルス感染症対策を中心に取り上げ、政府の見解をただしました(写真上は、質問する福山議員)。
新年度予算案は2月28日に衆院本会議で採決が行われ、与党などの賛成多数で可決、参院に送られました。
福山議員は、安倍総理が2月27日に全国すべての小学校、中学校、高校、特別支援学校に対し、3月2日から春休みまで臨時休校とするよう要請したことについて、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が2月25日に決定した新型コロナウイルスの感染拡大に備えた対策の基本方針の「学校等における感染対策の方針の提示及び学校等の臨時休業等の適切な実施に関して都道府県等から設置者等に要請する」と矛盾するものであり、この方針に基づき対応策を検討していたさまざまな現場で混乱が生じていると問題視。全国一斉臨時休校の要請に関しては専門家会議のメンバーからは「諮問も受けていない。提言もしてない、科学的根拠も明確ではない」とのコメントが出ていることから、この点の確認と、25日から27日にかけて方針を変える大きな変化、原因があったのかをただしました。
これに対し安倍総理は、「学校への臨時休業の要請については直接専門家の意見を聞いたものではない」と自身の判断であったことを認めましたが、25日の基本方針から一転、27日に一斉休校を要請、また前日の26日に大規模スポーツ、文化イベント等についても中止、延期を求めた明確な根拠は示されませんでした。
PCR検査をめぐっては、29日の記者会見で総理が、「来週中に(3月7日までに)医療保険を適用する。これにより保健所を経由することなく、民間の検査機関に直接検査依頼を行うことが可能になる」「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、全ての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる、十分な検査能力を確保する」などと表明。福山議員は、この発言を受け、今後の検査体制について具体的に尋ねましたが、安倍総理はPCR検査の能力と、アクセスの制限と2つの点で問題があったとした上で、「PCR検査能力としては(民間医療機関などを活用することで)1日4千件まで上がってきた。民間の力を拡大することによって今後医師が必要と認識すれば検査につながっていくと考える」「アクセスをより容易にしていく。保健所を通さずに受けられるようになる」などと答弁、加藤厚労大臣は「これまで医師が必要性を認めても検査してもらえなかった人をどう検査機関につなげていくか。都道府県ごとに医師会を中心にマッチングの場を設ける。全体のなかで上限能力を上げていく」などと答えるにとどまりトーンダウン。福山議員は「何人もの方が相談をしに行ったのに断れられ検査もできず家で不安な思いをしている。危機感がなさすぎる。威勢のいいことや強いことを言うことが命や健康を守るために大事なことではない」と場当たり的な対応を批判しました。
2番手の斎藤議員も全国一斉臨時休校の要請問題を取り上げ、この措置事態には一定の必要性を認めた上で、決定プロセスや、3月2日から春休みいっぱいと定めた期間に問題があり、その結果現場に混乱が生じていると指摘。所管の萩生田文科大臣がこの内容を知ったのはいつかと尋ねると、萩生田大臣は発表当日の午前中であったことを明らかにしました。
斎藤議員は、すべての小中高・特別支援学校への全国一斉休校を要請する一方で、幼稚園や保育所、学童保育を対象から外したことを疑問視。学童保育は学校の教室よりも過密な状況もあるとして、クラスター(集団感染)発生を防止するために休校とする方針と齟齬があるのではないか、クラスター感染するリスクが高くなる恐れはないかとただしました。これに対して加藤厚労大臣は、「施設ごとの事情があり、どちらが高いと直ちに申し上げる状況にない」と答弁。無責任な姿勢に傍聴席からも驚きの声が上がりました。
蓮舫議員は質問の冒頭、北朝鮮の飛翔体2発が日本海に向けて発射されたことについて「日中韓をはじめとする世界各国が新型コロナウイルス感染症対応に全力であたってる最中でもあり、断じて容認はできません」と述べた上で安倍総理に事実関係と政府の認識をただしました。安倍総理は「わが国の領域や排他的経済水域 EEZ への弾道ミサイルの飛来、現時点において付近を航行する航空機や船舶の被害報告は確認されていない」「昨今の北朝鮮による弾道ミサイルの度重なる発射はわが国を含む国際社会全体にとって深刻な課題」と説明しました。
質問では2月29日の安倍総理の会見で、ジャーナリストの江川紹子さんの「まだ質問があります」との求めに応じず会見を打ち切り質問を受け付けなかったことについてただすと、「時間の関係で打ち切らせていただいた」「基本的にいつもそのような形で総理会見は行われていた」と答弁。蓮舫副代表の36分間の会見が終わりすぐに帰宅しているとの指摘には、「ある程度のやり取りについてあらかじめ質問をいただいている」「その中で誰にお答えをさせていただくかについては司会を務める広報官の方で責任を持って対応している」「質問の通告をあらかじめいただいているのは幹事社の方々から。それ以外の方々からはいただいていない」と答弁し、フリーランスの記者などから、あらかじめ質問を受け付けておらず、そうした質問には消極的とも受け取れる答弁をしました。
政府が、中国の感染者が1万人に迫った1月31日に全閣僚出席の対策本部を設置し、世界での感染者が7万人を超え、日本で感染者が確認されてから1カ月後の2月14日に専門家会議を設置したことについて、蓮舫副代表は「危機管理に鈍感だったのでは」と指摘すると、「本部の設置をしたのは委員(蓮舫副代表)の発言された通りだが、その以前に関係閣僚会議を開催し、対策を検討し、協議をし、決定をしている」と説明しました。これに対し、蓮舫副代表は、「関係閣僚会議はたった2回。しかも10分ずつ」だと指摘。緊張感がないことは、小泉進次郎環境大臣、萩生田光一文部科学大臣、森まさこ法務大臣が対策本部を欠席したことにも現れていると追及。さらに政府の専門家会議が立食パーティーや飲み会などを避けるよう求めた翌日、都内で開かれた自民党の杉田水脈衆院議員のパーティーに西村康稔経済再生担当大臣、竹本直一科学技術担当大臣、北村誠吾地方創生担当大臣が出席したこと、さらに秋葉賢也総理補佐官が地元の政治資金パーティーに出席後、記者に対し「物理的に中止との選択肢は難しかった」「宮城県は感染者がまだ出ていない」と答えたことについても指摘しました。
小中高校などには一斉休校を要請したものの、保育所や学童保育などは引き続き開所要請したことについて、蓮舫副代表は感染リスクが保育所は学校より低いのかと質問。加藤厚労大臣は「一概に申し上げることはできない」、国立感染症研究所(感染研)の所長で政府の専門家会議の座長である脇田隆字さんは、疫学的根拠について「そのようなリスクの比較については、専門家会議、あるいは感染研では行っていない」と答弁。さらに安倍総理は疫学的な判断は困難とした上で「家に一人でいることができない年齢の子どもが利用する」ことを理由に判断したと答え、疫学的根拠はないことが浮き彫りになりました。
また、政府の専門家会議での高齢者基礎疾患を有する者の重症化リスクが高いとの指摘を踏まえ、優先すべきは施設にいる高齢者の健康と安全への万全の措置ではないか、イベントは中止・延期を要請、学校は一斉休校を要請したが、高齢者対策はしないのかと質問すると、加藤厚労大臣は、高齢者介護施設では職員の検温や、面会制限、委託業者の立ち入り制限などの周知をしていると答弁しました。
この質疑中、自民党の委員席から松川るい議員が「高齢者は歩かない」とのヤジを発し、蓮舫副代表は、このような認識を与党議員が持っていることに驚いたと語り、加藤大臣も同様の認識なのかとただしました。