特定非営利活動法人・KHJ全国ひきこもり家族会連合会(以下、『KHJ家族会』)主催の「未来の居場所づくりシンポジウムin東京」が21日開かれ、立憲民主党から長妻昭代表代行、党ひきこもり対策ワーキングチーム事務局長の堀越啓仁衆院議員が出席しました。

 伊藤正俊『KHJ家族会』共同代表は開会宣言のなかで、「ひきこもり」という状態から社会に参画する場所として「居場所」の重要性を強調。同日のシンポジウムでは、『KHJ家族会』が実施した調査・研究の結果報告とともに「居場所」の重要性を理解してもらいたいと話し、「さまざまな居場所があって、さまざまな生き方につながっていくことを実感していただきたい」と呼びかけました。

 党を代表して連帯のあいさつに立った堀越議員は、12年間作業療法士としてリハビリテーションの現場で働いていた経験から、「作業療法士は『その人らしさ』を大事にしていくことを支援してく仕事。そうした観点からすると、いまの日本の状況、社会は、その人らしく生きられる社会と言えるのだろうか」と提起。「ひきこもりの問題も、家族の方がおっしゃるように、ひきこもりという行動を取らなければその人らしさ、あるいはその人の命が守られなくなってしまう事象だと認識している。そうした意味で、個人の問題ではなく社会の問題。社会全体でこの問題に取り組むことが何よりも重要だ」と力を込めました。今の制度では、最終的な目標に就労を掲げていることに、「そうするとハードルが高くなってしまう方もいる。まずは居場所づくり、居場所の拡充を前提に命を守っていくことが何より重要だと思っている」と指摘。SDGs(持続可能な開発目標)が掲げるスローガン「誰一人取り残さない」の実現のためにも、その人らしく生きられる居場所は重要だとして、「『誰一人取り残さない』社会を目指して一緒に頑張っていく」と決意を述べました。 

 基調報告では、宮崎大学准教授の境泉洋さん(『KHJ家族会』副理事長)が「当事者本人、家族が求める居場所とその効果について」(2020年2月10日現在の速報値)と題し、行政機関によるひきこもり支援、居場所設置の現状(90%の行政機関がひきこもり支援を行っているが、居場所を設置している機関は18.7%。ひきこもり地域支援センターでは74.5%、自立相談支援窓口では15.5%が居場所を設置)や、「居場所の財源の大半は助成金、補助金という不安定財源であること」「運営者による相談、利用者同士の交流が有効である一方、就労訓練、就労支援の有効性は低いと感じられていること」などを解説。居場所の肝は他の参加者の交流・情報交換であること、居場所において就労をどう扱うかは慎重に検討する必要があることを特に強調しました。

 その後のシンポジウムでは、全国的に居場所開設への裾野を広げるべく、現場の実践者、当事者らがディスカッション。第1部「多様な居場所づくりと地域づくり―地域共生型・家族会協働型の居場所づくり」、第2部「なぜ人が集まるのか?居場所づくりを当事者主体の目線から考える」をテーマに居場所のあり方、その実践方法を考えました。

開会宣言を行う伊藤正俊『KHJ家族会』共同代表
基調報告を行う境泉洋さん(宮崎大学准教授)