子ども・子育てプロジェクトチーム(座長・阿部知子衆院議員)は26日、国会内で会議を開催。「かわさき子どもの権利フォーラム」代表の山田雅太さん、事務局の圓谷雪絵さんを講師に迎え、「川崎市子どもの権利条例に見る子どもの権利保障のあり方と課題」について話を聞きました。
2000年12月に制定された川崎市子どもの権利に関する条例は、子どもが「ありのままの自分でいられる権利」など、子どもの権利を総合的に保障した国内初の条例です。山田さんと圓谷さんは、教育委員会の人権担当指導主事として、高校2年生の時に子ども委員としてそれぞれ条例策定に携わった関係にあるといい、現在は2017年8月に設立した「かわさき子どもの権利フォーラム」で代表と事務局という立場で、子どもと大人が一緒に権利について学ぶ場や、子ども支援団体とのネットワークを構築し、条例の普及啓発活動を行っています。
山田代表は、(1)「権利」とは何か(2)なぜ、川崎市で「子どもの権利の総合条例」ができたのか(3)川崎市子どもの権利に関する条例の概要(4)今までの課題・これからの課題――について講演。大人に対しても、子どもに対しても「権利」の理解をどうはかるかが一番大きな課題だとして、「子どもに『権利』を与えると、わがままになる」といった声に対し、権利保障がいかに必要かの理解を得るのが難しかったと当時を振り返りました。
川崎市が条例を策定したのは、「子どもの権利条約は批准されたが、【人権・権利】という概念は生活の中でとらえていないので『子どもの権利観』を共有することが必要」「子どもの権利を、子どもが実際に生活している地域社会で、子どもの目線にたって現実生活の中で実現していく作業が自治体に求められている」「市民参加の意義―市民を構成するパートナーとして子どもを位置づける」という3つの理由からだったと説明。条例の前文の「自分の権利が尊重され、守られるためには、同じように他の人の権利が尊重され、守られなければならず、それぞれの権利が相互に尊重されることが大切である」という「権利の相互尊重」の意義を強調しました。
その上で、子どもの権利条例制定によって、子どもの意見表明・子ども参加の促進や、子どもの居場所の設置、子どもの人権救済制度の拡充、子どもの権利学習の実施、子ども施策の検証、子ども施策の調整担当の設置などさまざまな取り組みが進んでいると説明。一方で子どもたちの「権利学習」のあり方や、多様な相談・救済方法、各区での公設民営の居場所・フリーペースづくり、「子ども参加」の促進などは今後の課題だと指摘しました。
山田代表は、日本の子どもの現状から見える課題として自殺数や虐待死が多いこと、さまざまな取り組みを進めている同市においても増加傾向にあり、その背景にはひとり親家庭の貧困率が50.8%と主要国最悪レベルであることなどを挙げ、「こんな国はない」と解決に向けた政治のさらなる取り組みを求めました。
最後に、子どもの権利条例子ども委員会のまとめ(2001年3月)にある「まず、おとなが幸せにいてください。おとなが幸せじゃないのに子どもだけ幸せになりません」からはじまる「こどもからのメッセージ」を紹介。「子どもの権利や子どもの支援を考えたときに、大人も幸せに生きるということを考えないといけないのではないか。日本の社会で大人は幸せに生きているのか。幸せに働いて家に帰っているのか。そういう在り方も見直すべきはないかと感じている」と問題提起、「子どもが幸せにいてほしいと私もいつも思っている」と述べました。
講演後の質疑応答では、子どもの人権救済制度「人権オンブズパーソン」制度に関し川崎市および全国の自治体での実施状況、外国籍の子どもたちに対する権利保障のあり方、権利条例制定時の議員の働きかけ方などについて質問が上がりました。