共同会派の文部科学部会が28日国会内で開かれ、公立学校に1年単位の変形労働時間制を導入可能とする「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)改正について現職職員の斉藤ひでみさん、「全国過労死を考える家族の会」公務災害担当の工藤祥子さん、署名の呼びかけ賛同人でもある弁護士の島崎量さん、教員志望の現役大学生から話を聞きました。

 斉藤さんと工藤さんは同日、1年単位の変形労働時間制の撤回と給特法の抜本改正を求める署名を文部科学大臣、衆参両院議長宛てに提出。同法案が改正されると現場の多忙を改善しないどころか、むしろ超過勤務を増やし、過労死の危険も高めかねないとして、9月16日からインターネット署名サイトで開始した「変形労働制は撤回してください!」には、約3週間で33,155筆、また2018年2月28日に開始した、給特法の抜本改正を求めるインターネット署名には、38,850筆が集まっています(ともに10月26日集計時点)。 

 斉藤さんは、「現在『超勤4項目』(生徒の実習関連業務・学校行事関連業務・職員会議・災害等での緊急措置など)以外の残業は決して自発的にやっているものではない。そうして発生している残業について残業と認めてください、労働を労働として認めてほしいと訴えてきた。労働には当然対価が発生する。残業を命令した責任者は誰なのかもはっきりしていただくよう求めるものだ」と署名に込めた思いを説明。特に変形労働時間制の導入を問題視し、「見た目の労働時間は減るかもしれないが、実態は何も変わらない。それどころか、授業時間の定時が延長されることによって業務の負担は増え、教育の質は低下し、過労死も増えかねない。教職を目指そうとする人が減り、日本の公教育が崩壊する分岐点になる」「一人の国民としてこの法案は国を誤らせると伝えたい。現場の思いをくんでいただいた上で議論してもらいたい」などと訴えました。

 5年以上の時間をかけて夫(教員)の公務災害の認定を得た工藤さんは、公務災害の申請をしても給特法があるため、校長先生も過重労働は認めても「公務上」だとは認めなかったと振り返り、変形労働制が適用された場合、教員が長時間労働を強いられたときに責任者が不明だと公務災害が認められなくなると懸念を表明。教員の業務過多が問題だとして、まずは労働環境の改善をと求めました。

 島﨑さんは、変更労働時間制を導入する理由を「休日のまとめ取りを推進するため」としていることに、「民間企業でさんざん悪用されている、残業代不払いの手段として使われているものをなぜ導入するのか。変形労働時間制を入れなくても(まとめ取り)できる」と指摘。現行でも残業代を支払われていない教員に対し、制度が導入されれば残業代抑制にすらならず現状追認、合法化になると批判しました。

 教員を目指し都内の教育学部に通う大学生は「教育学部の試験の倍率は下がっていないのに、教員採用試験の倍率は下がっている。教育の質の向上のためには労働環境を変えること。労働環境のマイナスの部分を消してほしい。働き方が変わった未来で働くのは私たち。もっと私たちの声を聞いてもらいたい。先生が死ぬ、苦しんでいる学校現場でいい教育ができるとは思えない、子どもたちがいい大人に育つとは思えない。教育現場の話だけでない、もっと大きな日本の未来の話だ」と悲痛な叫びを上げました。

 質疑応答では、本来業務が増え続けるなか、増えた業務に対価が支払われてこなかった現行制度の問題点を改めるために給特法の抜本的な見直しが必要であること、教員の働き方改革が喫緊の課題であるなか、今回の改正案では残業の上限を「月45時間、年360時間」とするガイドラインを法的な指針に格上げし、自治体に順守を求めることから、まずは「変形労働時間制の撤回を」という現場の思いを受け止めました。