参院本会議で29日、「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」の趣旨説明・質疑が行われ、会派を代表して川田龍平議員が質問に立ちました。
本改正案は、中央省庁などの障がい者雇用水増し問題を受けた法改正で、国の行政機関などで雇用する障がい者の人数の不適切な参入の防止のため、法定雇用率に算入できる人の具体的な確認方法を省令に明記、障害者手帳の写しなどの確認に用いた書類の保存を義務付け、厚生労働省に他省庁や自治体への調査権限をもたせるなど厚生労働の行政機関へのチェック機能強化と、短時間労働の障がい者を雇用した企業への給付金の支給や、積極的な中小企業を表彰する制度の新設など、民間企業で障がい者の雇用を促進するための支援策が盛り込まれています。
川田議員は、(1)障がい者選考試験(2)中小企業における障がい者雇用(3)法定雇用率の障がい者の定義(4)障がい者活躍推進計画――等について取り上げ、根岸厚生労働大臣らの見解をただしました。
中小企業における障がい者雇用に関しては、「障がい者雇用は、単純に募集、採用すればおしまいではなく、障がい者の方々が働きやすい環境を整え、その職場に定着していただかなければならない。社員数の少ない中小企業では一人ひとりの業務範囲が広い一方で、障がいのある方を採用しても、物理的にお願いできる仕事が限られることも出てきてしまう」「経営上難しい企業に対する国の助成金の財源に法定雇用率が達成できなかった企業から集めた納付金を充てている。中小企業に法定雇用率を達成しろと言いながら、経営が苦しくて達成できない企業から納付金を取り立ててさらに経営を圧迫させれば、障がい者の採用はますます遠のく。この財源設定自体が非現実的で、本末転倒ではないか」などと問題視。「本来のゴールは、わが国が、障がいを持つ国民に等しく就労の機会がある社会になることで、企業側に身を切らせるのではなく、全ての企業が法定雇用率を達成できるよう、まずは国が安定した財源を別途確保する制度に再構築すべきだ」と主張しました。
法定雇用率を算定する際の障がい者の定義をめぐっては、難病の方や発達障がい、軽度の知的障がいや軽度の難聴などの聴覚障がいの方たちの中には、社会生活と機能上の障がいの関係によって働きづらさや生活のしづらさを抱えていながら、障害者手帳を取得したくても取得できず、社会的配慮の外にいる方がたくさんいると指摘。「障害者権利条約や障害者基本法における障がい者の定義は、身体、精神、知的障がいのみならず、社会生活上の障壁を持つ者としている。しかしながら、現在わが国の障がい者認定制度は医学的な見地や機能障がいの程度を判断基準としているために、同じ状況で苦しんでいるにもかかわらず手帳を持てないために、ハンディを考慮した障がい者枠で求職することができない」と述べ、障害者雇用促進法上の法定雇用率の障がい者の定義の見直しが必要だと訴えました。
今回の法改正に当たっては、障害者権利条約のスローガン「私たちのことを私たち抜きで決めないでほしい」という最も有用な要素が抜け落ちているとも指摘。障がい者活躍推進計画の策定に、当事者を入れるよう、強く求めました。
川田議員は最後に、「障がい者の雇用促進から得られるメリットは、大切な社会の一員としての障がい者のモチベーション向上や経済活性化だけではない。全ての国民を同じいのちとして尊重し、平等に扱い、多様性と共生の中で誰もが生きていてよかったと思える幸福な社会に日本がなること。そういう社会を共に作ろうという国際社会のコンセンサス、障害者権利条約を尊重する国として世界に胸を張ってゆくために、日本が今内側から変わるべき時だ」と主張し、質問を終えました。