衆院本会議で15日、「漁業法等の一部を改正する等の法律案」が審議入りし、会派を代表して神谷裕議員が質問に立ち、政府の見解をただしました。

 本法案は、適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、資源管理措置と漁業許可、免許制度等の漁業生産に関する基本制度を一体的に見直すもの。養殖業への新規参入を促進する一方、漁業権を地元の漁協や漁業者に優先的に割り当てる規定の廃止、科学的に適当でない理論、漁獲可能量による水産資源管理の導入など、漁業関係者が経営への影響を危惧する内容が多く含まれています。

 神谷議員は冒頭、「わが国の歴史ある漁業制度全般を抜本的に変えようとするものであり、わが国の水産業、漁村地域、食料供給、国土保全など、国民生活全体に影響を与える大変に重要な法案である」と強調。「この制度は誰のための改正か」と問いかけ、官邸主導で、漁業については全く素人で構成する水産ワーキンググループでの検討スタートからわずか5カ月、「漁業者、漁業現場の声を聞かないまま提出された、官邸の意向だけを忖度した拙速な法案だと言わざるを得ない」「漁業者は、いま現在も漁場で操業し、毎日生業を営み続けている。その土台が大きく変わるような制度改正は拙速に行って良いものとは思われない」と断じました。

 神谷議員はまた、本法案では、戦後漁業法制定の際に明記された「漁業者及び漁業事業者を主体とする漁業調整」「漁業の民主化」という言葉が消え、単に産業としての漁業の位置づけのみが書かれていると問題視。「わが国の漁業の役割は、水産物供給ばかりではなく、わが国国土の重要な一部である漁村地域を維持し、いわば防人としての国境監視や、環境不全といた多面的機能は極めて重要になる。わが国漁業の役割を保持することは、いつの時代にあっても普遍的、かつ中核的な政策理念であると考える」と表明しました。

 その上で、(1)沿岸漁業の役割をどう認識しているのか(2)わが国の水産資源の実情や漁業秩序に合わない資源管理方式はこれ以上拡大すべきではないのではないか(3)特定区画漁業権の漁協への優先的な免許をなぜ廃止しなければならないのか(4)漁業権者以外の者による経営支配が可能となる結果、外国資本が実質支配する企業が漁業を行い、国境監視機能、国土保全機能といったものが根本から失われる事態を想定されたのか(5)「沿岸漁場管理団体」の指定に当たっては慎重な手続きを取る必要があるのではないか――等について質問。「この70年ぶりの漁業法等の改革は、成長産業化・輸出産業化とは何か、海区漁業調整委員会の在り方、養殖漁業の拡大と既存漁業の調整、これからの漁業の果たすべき役割など、極めて多くの明らかにすべき問題がある」と指摘し、「国会では広く多くの漁業関係者や国民の皆さまの意見を聞き、現場の実情を把握し、慎重に審議しなければ立法府としての責任は果たせない。臨時国会の短い会期で決めるべき課題ではない」と訴えました。

2018年11月15日衆院本会議神谷裕議員代表質問原稿(案).pdf