衆院予算委員会で29日、2017年度補正予算案に関する基本的質疑が行われました。立憲民主党・市民クラブからは長妻昭、川内博史、逢坂誠二各議員が質問に立ち、(1)国税庁長官の人事(2)働き方改革(3)生活保護基準の見直し(4)原子力を取り巻く諸情勢(5)北朝鮮対応――等に関する問題ついて取り上げ、安倍総理らの見解をただしました。

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐっては、財務省近畿財務局が今月、内部で作成された交渉の経緯などを記録した文書を開示。財務省は、これまで交渉記録について「記録を破棄した」などと説明しており、野党はこうした答弁を繰り返してきた当時の佐川理財局長(現・国税庁長官)の参考人招致を求めましたが、与党側は拒否し、理事会での協議は継続となっています。

 この問題では会計検査院も昨年11月、約8億円の値引きの根拠となったごみ撤去費について「十分な根拠が確認できない」と指摘しており、長妻議員は「適正な処理だった」と一貫して主張してきた政府に対し、「国会が軽んじられている」と謝罪を求めましたが、安倍総理はこれを拒否。長妻議員は、「総理は財務省の言うことを真に受けて(適正だと)答弁したと話し、その財務省の責任者が国税庁長官に栄転をする。そしてその人事について総理が『適材適所』だというのは前代未聞の無責任体質だ」と批判しました。

 長妻議員は、佐川国税庁長官が就任以来一度も記者会見を開いていないことも問題視。しかしながら麻生財務大臣は、「就任の記者会見については、国税庁の所管の行政以外に関心が集まっていたことから国税庁においては実施しないと決めた。就任に当たって長官の抱負などは文書ですでに公表している。適切な対応が行われていると考えている」と強弁しました。

 川内議員は、生活保護基準の引き下げについて、社会保障審議会(生活保護基準部会)では生活保護の基準額のうち「生活扶助」の水準を5年に1度の全国消費実態調査による低所得世帯の消費支出と比較し見直しを行っていることから、同調査が行われた2014年は消費税率の引き上げにより、消費支出金額の実質指数(二人以上の世帯)は前年比でマイナス5.1%、実質賃金数の推移をみると前年比マイナス3.0%と、消費や賃金が大きく落ち込んでいる状況だったと指摘。このデータのみを分析し保護基準を引き下げるというのは実態にそぐわないとして、あらためて検討するよう求めました。

 逢坂議員は、原子力発電所の再稼働をめぐり、原子力規制委員会の更田豊志委員長と「原子力規制委員会の規制基準への合致は、必ずしも100%の安全であることやリスクがゼロであることを保証するものではない」との認識を一致させたうえで、そうしたなかで国民の安全・安心を守るためには万が一事故が起きた際に万全に避難できる計画ができていることが重要だと主張。万全な避難計画が作れないところについては、原発の稼働はおろか使用済み核燃料を置いておくことすら危ういと指摘しました。